そうだな、その時は鉛玉をたらふく食わせてやれ
皆で見張りを立てて宿無しを警戒していたが結局現れることはなかった。
夜襲が来なかったことにジャックは息をなで下ろす。
「よし、それじゃあ目的地の廃棄されたコロニーとやらに向かうとしよう。 コロニーへと向かう前に…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
これからの行動について話していた自分の言葉をデニスによって遮られてしまう。
「このまま帰還するんじゃないのか? 危険すぎる! 宿無しに襲われる前に逃げるべきだ!」
デニスの言葉にため息が出る。
周りを見渡すも皆も自分と同じ様に呆れている様子だった。
「はぁ……一応聞くがどこに逃げるといんだ?」
「は? そんなのコロニーに、リーガルに決まっているじゃないか」
「ミッションに失敗したと報告して危険がないとでも?」
ミッションの失敗が続けばコロニー側からペナルティが下される。
程度はどうであれ厳しいものでは処分、殺されることもあるのだ。
そのせいでただでさえ命を落としやすい下級市民の生存率がさらに低くなっていた。
「生き残る目が一番大きいのはミッション達成して拠点に戻ることだ。 命令に従えないなら此方も対処させてもらう」
一人でコロニーに戻ることなぞ許せるわけがない。
もし、自分達がコロニーに侵入中に車を盗まれたら? ほかにも宿無しに捕まり此方を売るかもしれない。
ブレスの銃の件とはリスクとリターンが違いすぎる。
ブレスの銃の一件のリスクは銃声によりこちらの居場所を教えてしまう可能性が一つ。
しかし銃声一つで居場所を特定することなど不可能に近いのでリスクとしては些細なものだ。
そう考えるとそれ以前の段階で目を付けられていたと考える方が自然だろう。
そしてリターンはブレスの銃の腕が確認できるという事、ブレスの銃のスコープの確認ができるという事、鹿の肉が手に入り、物資の節約になるという事といった様にリターンが大量にある。
しかし、この男を逃がしてもリターンなどないに等しい。
寧ろリスクをただ積み上げるだけだ。
それならばやる事は一つだ。
殺意をあからさまに滲み出しながらデニスを睨みつける。
次の返答次第でリーガルへの帰還は右手だけになるだろう。
「ひっ……! な、なんだよ! た、ただの選択肢の一つとして言っただけだろ! 」
「そうかい、貴重な意見どうも。 それでは他に意見がなければイムのソナーの後目的地へと向かう」
直ぐに身支度を整えると車に乗り込み目的地へと向かう。
車は問題なく走り、積んでいた物資が無くなっていなかったので宿無しは来てなかったようだ。
しばらく車を走らせていると開けた場所に巨大な建物が姿を表す。
どうやらここが目的地の廃棄されたコロニーの様だ。
「あれは……なんなんだ?」
口から疑問がこぼれ落ちる。
コロニーの入り口の前に人型のソレが三体、おぼつかない足取りでヨタヨタとうろついている。
腐臭を発しながら歩くそれは死んだ人間だと一目で分かった。
かなり離れていても臭いがここまで届くほどの悪臭だが、その身体はゾンビの様に腐っているというよりはミイラの様にカラカラに乾いている様に見える。
そして一番目を引くのは顔の穴という穴から白い塊が漏れ出る様に出ている物体である。
「あれは……多分キノコじゃねぇか、旦那」
「頭の中にキノコですか……頭を落とせば無力化出来そうでしょうか?」
「知らん、僕だって初めて見るんだ。 ただ何もせずに帰ることが出来ないのだからそれをやってみるしかないだろうな」
「し、死ななかったらどうするんだ!? あんなのと戦うだなんてごめんだぞ!?」
「そうだな、その時は鉛玉をたらふく食わせてやれ。 あんなに痩せこけているんだ。 きっと碌にものを喰えていないのだからさぞ喜ばれるだろうさ」
各々が銃を抜き構える。
ラナの方に目をやると手を震わしながら銃を抜いていた。
ルチアも何も言わずとも銃を構えている。
「ブレス、やってくれるか」
「構わねぇのか? 他に敵がいるかどうかも分かんねぇのに」
「構わん。 イムはブレスの発砲と共にソナーを使用しろ」
「了解しました、ジャック」
ほぼ同時に銃声とソナーの金属音が鳴る。
動く死体の頭部が陶器の様に中身の白いキノコと共に弾けた。
続いて残りの二体に狙いを着けようとしているブレスを静止する。
「待ってくれ、少し様子を見たい」
「へいへい、わかりましたよ旦那」
しばらく残りの二体を観察してみるがこちらの銃声に反応を示すことなく辺りを放浪し続けている。
そのうち歩いている一体が先程倒した死体に脚が当たると勢いよくしゃがみ頭を擦り付け始めた。
「……余り気の良い光景ではありませんな」
「せ、先輩、アレ何してるんっスか?」
ラナが震えながら質問してくる。
「ふむ、見たところ頭部のキノコを擦り付けている様に見える。 多分死体、もしくは生物にああやって擦り付けて仲間を増やそうとしてるんじゃないか?」
しばらくグリグリと擦り付けていたが十分だと判断したのか、それとも無意味だと察したのか分からないが、死体は立ち上がり再度辺りを彷徨き始める。
「戦闘力は無さそうだが近付いての戦闘は避けた方が良さそうだな」
「そんじゃ、旦那、もうやっちまっても良いか?」
「あぁ、頼むよ」
こちらが許可を出すとブレスは簡単に残りの二体の頭も吹き飛ばしてくれる。
そうして目の前に動く死体は居なくなった。
「イム、周りに敵影はあるか?」
「先程のソナーの結果、人型の反応が多数確認できました」
「一筋縄ではいかなさそうだな」
そう言いながら前に出て、先程頭を吹き飛ばした死体の前に行く。
足で死体の腕を体重をかけて踏むと、カラカラに乾いているせいか想定よりも簡単に折れる。
採取キットの一つである専用の容器を取り出す。
採取キットの形状は試験管に蓋が付いており、蓋には使い捨てのピンセットが貼り付けてある。
ピンセットでキノコの一部と身体の一部を採取し終えるとコロニーの入り口に目をやる。
「さぁ、ミッション開始だ。 乗り込むぞ」
そう言って後ろにいる五人を促す様にコロニーへと足を踏み入れた。




