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ただ在るが儘受け入れるだけさ

 キャンプに戻る頃には辺りはすっかりと暗くなってしまっていた。

 此処に残っていた四人がビルの入り口に火を焚いて僕らの帰りを待っていたようだ。


「あ、先輩おかえりなさい。 お肉は大丈夫でしたっスか?」

「すまん、話は後だ」


 ラナには申し訳ないが急いで肉を捌いてアルミ箔で包み焚き火の下の地面に埋め、急いで土をかけて火を消す。


「ちょ、ちょっと何をしてるんですか!」

「静かに、この近くに宿無しがいる。 とりあえずは話を聞いてくれ」


 肉を回収した後大人数の宿無しに囲まれた事について皆に話す。

 話を終えてまず最初に反応したのはデニスだった。


「ほ、ほら見たことか! あそこで撃たなければ見つかることは無かった! どう責任を取るつもりなんだ!」

「銃声があろうがなかろうが遅かれ早かれ見つかっていた可能性が高い。 車での移動はかなり目立つからな」

「そ、そんなの言い訳だ! どうするんだ! 殺されるかもしれないんだぞ」

「だから今から死なないようにする」


 狼狽えるデニスに一括して黙らせる。


「しかし、これからどう致しますか? 今からでも移動してキャンプの場所を変えたほうがよろしいでしょうか?」

「いや、場所は変えない。 この暗闇では灯りが無くては移動できない。 先程の焚き火を気にしているのかも知れないが、移動する際に灯りを灯す方が危険だと思う」

「なるほど。 でしたら此処で籠城ですかな?」

「その判断はこれからする……イム、ソナーを頼む」

『了解しました、ジャック』


 レオポルドと話を区切り、イムにソナーを使用するように言う。

 イムから金属音が一回鳴る。

 その音は徐々に暗闇に溶け出すかのようだった。


『ソナー範囲に人影は居ません』

「聞いたな、ソナー範囲に少なくとも人は居ない。 部屋の一角に陣取り籠城する。 車は急ごしらえだが草木でカモフラージュする。 急ぐぞ」


 ビルの一室、廃材で即席のバリケードを作成し、車には落ち葉や木の枝を被せる。

 どれもこれもいい出来とはいえないが何もしないよりはマシだろう。

 作業を終え、皆で話し合った結果二人を見張りとして順番に休憩を取ることにした。

 イムは電力の節約のために見張りには参加せずにスリープモードにして待機してもらう事にする。

 しばらくして自分の見張りの番になり、見張り場所に向かうとレオポルドが待っていた。


「待たせたな、何かおかしいところはあったか?」

「いえ、特に何事も有りません。 静かなものです」


 外に目を向けると辺りは完全な暗闇に包まれてはいなかった。

 顔を上に向けると星が空を埋め尽くしており、その星空の中央は自分だと主張するが如く月が優しく夜を照らしていた。


「此処は冷たいですな」

「は? 冷たい……とは?」


 レオポルドの言葉の意図を汲めずに聞き返す。


「あのコロニーで私のように髪が白くなるまで歳を重ねられるものがおりません。 最初は驚きましたよ」


 レオポルドの話を黙って耳を傾ける。


「5年も生きれば長生きという厳しい環境。 だというのにあのコロニーはどこのコロニーよりも恵まれている。 私が元いた場所とは雲泥の差でしょう」

「ほう、そんなにもかい?」


 レオポルドは無言でうなづく。

 

「そして此処の人たちもそれが当たり前だと何処かで受け入れている。 それが私にはどうしても冷たく思えてしまう。 ……あなたはどう思いますか? ミッションを3年こなしてきた貴方の意見をぜひ聞いてみたいのです」

「僕かい? 君が見てきた奴らと大差無いよ。 ただ在るが儘受け入れるだけさ」


 それを聞いたレオポルドは苦笑する。


「フフッ、どうやらジャック殿は嘘が大変下手なようですね。 勘のいいものなら直ぐに察してしまうでしょう」

「……嘘じゃ無いさ」


 レオポルドの指摘を適当に否定した。


「ジャック殿、此方をどうぞ」


 レオポルドはそう言いながら紙に包まれた肉を差し出す。


「ジャック殿が休んでいる間にいい感じ火が通ったのです。 ささ、もう冷めてしまいましたがそれでも美味しいですよ」


 そう言いながらレオポルドから手渡された肉に齧り付きながら見張りをする。

 久しぶりに食べたブロック以外の食事は美味しかったが、レオポルドに言われた事が気になっていてそれどころではなかった。


 在るが儘に受け入れる。


 それを出来無くなったのはいつ頃だっただろうか。

 いつまでもその問いが頭に残り続けていた。

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