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ただ自分という作られた虚像を魅せる

「ふむ、こんなものか。 分かっていたがあまりポイントは無かったな」


 あれから3人の男からポイントを取引という名の拷問で奪い取り、一人残らず殺した。

 3人共ミッション歴一年も満たないのでポイントの量は少なかったが問題はなかった。

 何故なら今回は銃が手に入ったこともあるがそれ以上に危険の排除が一番の目的だったからだ。

 此方を害そうとして来た奴らを一人でも取り逃がして後々足元を掬われるなんてブラッドは勿論、自分もお断りだった。


「ブラッド、分前だ。 腕輪を出してくれ」

「あいよ、ほれ、頼むぜ」


 そう言いながらブラッドは腕を差し出す。

 ブラッドの腕輪に右手の義手を近づけポイントの取引を開始する。

 すると義手から光の粒子が飛び散り、それらはブラッドの腕輪に吸い込まれていく。


「ん? おいおい、なんかポイントが多くねぇか?」


 ブラッドは腕輪を確認しながらそう言う。


「あぁ、僕と君、二人で等分だからそんなものだろう?」

「は? おいおい、そこの嬢ちゃんの分はどうしたんだよ?」

「彼女はそもそもポイントを必要としない、というよりポイントが使えないんだよ。 彼女に装備を追加、改修する場合は僕が出さなければいけないから等分でいい」

「だったら尚更ポイントがいるんじゃねぇか? 別に三等分でも文句は言わねぇぞ?」


 ブラッドは首を傾げながらそう言う。

 彼は本心でこう言っているのだろうが自分も譲るわけにはいかなかった。


「いや、そもそも彼女が僕に同行しているのは僕の一存でないとは言え、他の人より優遇されてるのも事実だからね。 だからこう言うのはしっかりしたいのさ。 まぁケジメみたいなものだよ」


 そう言うとブラッドはわかったようでわかってないという感じで渋々そのまま引き下がる。

 先程の言葉は嘘ではないが本音も言ってはいない。

 今回のポイントの分配が公平だろうが公平ではなかろうが正直どうでも良い。

 ただ自分という作られた虚像を魅せるのが目的だ。

 公平性、それを求める姿勢を見せつける。 後々大きな財産になるはずだ。

 そういう人間だと思われるためにはこういう所で見せていかないといけない。

 ジャックはそう考えながら心の仮面を深く被り直す。


「それにしても拷問中のお前……ちょっと引くわ……」

「なっ!? バカ言うな! あれは効果的に相手の心を折るために言ってるだけで本心なわけないだろうが!」

「本当かよ、その割にはノリノリだったじゃねぇかよ?」


 ブラッドは今回の一件で此方をとことん虐めたいらしい。

 何とか話を逸らすために別の話題を振る。


「ブラッドこそ意外じゃないか。 僕はそこまでしなくても良いじゃ無いか、とか言って止めるかと思っていたがね」

「へっ、自分を()ろうとして来た相手に優しくするほど甘かったらここまで生きていねぇよ」

「ま、それもそうか」


 初めてミッションに同行した相手にあれほど感情を露わにするくらいだから甘い男だと思っていたのだがそれだけでは無いらしい。


「それよりもよ〜、さっきの奴なんだっけたなぁ? バーラバラ? に〜?」

「はぁ、わかったよ、僕の負けだよブラッド。 もう勘弁してくれ」


 そう言うとブラッドは満足そうに笑い声を上げながら胸を張る。

 厄介な隣の男を無視してイムの方に向き直る。


「さぁ、イム戻ろうか」

「了解、ジャック」


 そのまま3人でフリースペースの広場に戻りその場で別れる。

 自分の部屋に戻ると疲れが身体にのしかかり、堪らずベッドに身を投げ出す。


「さてと、このポイントじゃ余り大した物は買えなさそうだが何か欲しい物はあるかいイム?」


 寝っ転がりながらイムに何が欲しいかを聞く。


『私の装備は下級市民の平均的な物より高性能ですので必要は無いかと』

「あぁ、そういうのも良いが、ミッションに関係ない物……娯楽品とかで欲しい物は無いのかい?」

『私には必要ありません、ジャック』

「なんだって? それはいけない。 欲しい物がないなら尚更何か買わないとダメだな」

『……理解不能です。 説明を求めます、ジャック』


 イムは不思議そうな顔を浮かべながら此方の顔を覗き込む。


「君は確かに優秀だが、心はまだ産まれたての子供より未熟だ。 まぁ実際に産まれて間もないから仕方ないのかもしれないがね」


 イムは黙って此方の話を聞いている。


「何が言いたいかというと自分の欲しい物を探して購入するという経験は君の成長に繋がる筈だ。 まぁ、まだ納得できないなら僕の命令とでも思えば良い。 僕の命令には従うんだろ?」

『……了解しました、ジャック』

「まぁ、すぐとは言わないからさ、君のポイントはこっちで管理しとくから欲しいのが思いついたら僕に言いなさい」


 何故自分でもこんな提案をしたのか分からない。

 彼女を純粋に思っての言葉なのかもしれないし、更に高性能なAIに育成して自分の役に立たせようとしただけかもしれない。

 もしかしたらその両方なのかもしれない。

 いつのまにかイムは部屋の隅の大きなオンボロのモニターの横に立っており、何か考え事でもしているのか虚空を見つめている。

 普段はじっと此方を見つめているのでそれと比べるとかなりリラックス出来る。

 これだけでもこの提案をして良かったと思う。

 そんなことを考えていると睡魔が頭の先から侵入してきて瞼を重くしながら足先にまで浸透して来る。

 自分はそれに抗わず身を委ねると直ぐに眠りに着いた。

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