まぁ良いさ、さぁ取引拷問の時間だ
男二人を気絶させて無力化した後、ブラッドと合流して適当な建物に入る。
入った建物は民家でリビングには使えそうな椅子があったので気絶している男を3人を縛り付けて並べる。
「そっちは大丈夫だったか、ブラッド?」
「へっ! 馬鹿言うんじゃねぇ、こんなガキにヤられるほどマヌケじゃねぇよ」
普段だったら皮肉混じりに返す所なのだが状況が状況なので自重する。
「さてと……僕がやろうか? それともブラッドがするかい?」
「お前が俺よりうまくやる自信がねぇなら俺がやるぜ?」
「ハハハ、冗談だろ。 まぁ僕がやるから見張りを頼むよ」
3人のうち一番怪我をしていないのが自分が後ろから気絶させた男だった。
とりあえずその男に平手打ちをして目を覚まさせる。
平手が男に命中すると男は驚いたように声を上げ目を覚ますがお構いなしにさらに数発平手を浴びせかけた。
「なっ!? 何が……! クソが! 放しやがれ、テメェ!」
男はガタガタと椅子を揺らしながら拘束を解こうとするが解けず、しばらくすると暴れても意味がないことを察すると大人しくなる。
「さてと、これがなんだかわかるかな?」
そう言いながら拳銃を男に向けた。
この拳銃は自分のものではなく、目の前の男から奪ったものだった。
コロニーでは下級市民は武器の携帯を禁止されている。
ただしそれはほとんど形だけのものだった。
身体検査等はされずミッション中に申請を出した武器はミッション中に損失したと言って、ペナルティを払えばコロニーに持ち込むこともできる。
他にもフリースペースで下級市民から武器を購入したりと入手方法は様々だ。
「て、テメェ……それは俺たちの物だぞ! 返しやがれ!」
「ご丁寧に3人とも拳銃を持っていてくれて助かったよ。 お陰で戦利品の分配が楽で助かる」
そう言いながら笑顔で答えると男は自分の顔を見て顔を歪めた。
「ふむ、大方ミッション歴一年も満たない仲良し3人組が武器を手に入れて舞い上がっての行動だろうなぁ。 それで新しい武器を手に入れた所で、物珍しい物買えるくらいポイントを持っている奴がいるからポイントを奪おうと……そんな所だろう」
義手を男に見せつけながら話す。
男は何も言わずに此方を睨みつけているが明らかに自分の言葉に動揺している。
「お、おいおい図星かよ! てかスゲェなジャック! なんでわかったんだ?」
少し離れた場所で外を警戒しながら此方に聞き耳を立てていたブラッドが話しかけてくる。
「銃が真新しすぎる。 購入品なら多少傷はあるし、基本的に装備はコロニーに預けても他の者と使い回しにはならず自分の物が次のミッションでも渡される」
銃をブラッドに見せながらさらに理由を語る。
「ひとつだけ真新しいならともかく3人とも真新しいのを持ってるのはそう言うことだろう」
「なるほどなぁ、でももっと簡単にそいつらのミッション歴の浅さがわかる理由があるぜ」
「ハハハ、それは是非共ご教授願いたいね」
ブラッドはニカッと笑いながら一言答える。
「そもそも新人以外俺らを的にする奴はいねぇ」
「ク、クク、ハハハ! あぁそうだな、そうだとも」
まさしくその通りだ。ブラッドは5年、自分は3年このコロニーで生き残っている。
長く生き残れば生き残るほど此方の練度の高さは浮き彫りになる。
つまり襲って手に入るリターンよりもしっぺ返しを喰らうリスクの方が大きくなる相手を狙う馬鹿はいない。
もし狙うとしたらそれがわからない相手、ミッション歴の浅い相手ということだ。
「おっと、すまない。 ほったらかしにしてしまったね」
そう言いながら男に向き直る。
「さてと、もう無駄かもしれないが教えておいてやろう。 ポイントを奪うのにコイツほど使えない道具は無い」
そう言いながら拳銃を見せつける。
男は何か言おうとするが今度は拳を握り男の鼻柱目がけて殴りつける。
男はドボドボと鼻血をその場に垂れ流した。
「おいおい、いいから黙って聞け。 そもそもポイントを奪うという言い方で勘違いしそうになるがそれは不可能だ。 ポイントは本人の意思でのみ譲渡が可能なんだ」
「グっ……何が言いたいんだよ」
「ポイントが欲しいなら気持ちよく譲ってもらうように場を整えなければならない、今のようにね。 だからこそうっかり取引相手を殺してしまうような道具は使えないんだよ」
両手を広げ周りを見ろと男に促すかのように話す。
「これが取引だと! ふざけんじゃねぇ!」
男は狼狽えながら言葉を口にする。
「まぁ良いさ、さぁ取引の時間だ」
そう言いながら義手からキリキリと音を立ててワイヤーを取り出す。
「そ、そんなことして大人しくポイントを出すと思っているのか?」
「あぁ……実のところその辺は別にどうでも良いんだ」
ジャックの言葉を聞いた男は間抜けな声を上げる。
「お前のような奴を何度も見てきた。 そいつらは決まって自分は死なないとそう思い込んでいる。 信じてしまっている。 そういう哀れでどうしようもない馬鹿を、ゴミ箱に塵紙を放るように、軽々しく殺すのが堪らない」
男とワイヤーの距離を縮める。
「なっ!? ふざけるな! 俺を殺したらポイントは手に入らないんだぞ! そう言ったのはお前じゃ無いか!」
「おいおい、僕はこうも言ったぞ? どうでも良いと。 もう既に銃が手に入っただけで取り分は十分なのさ。 後は……そうだな僕の数少ない趣味でただの娯楽だ。 ただただ僕が気持ちよくなるだけのね、さぁ楽しい時間にしようじゃ無いか」
男とワイヤーの距離がさらに縮まる。
「お、おい! コイツイカれてる! 何とかしてくれよ!」
男はそう言いながらブラッドに助けを求める。
しかしブラッドは微動だにしない。
「少なくとも殺そうとしてきた相手に救いを求める奴よりかはジャックの方が幾分かマシだろうよ」
ブラッドは唾を吐き捨てながらそう答える。
どうやらブラッドも自分を標的にされて腹を立ててるようだった。
そうして男とワイヤーが目先にまで近づく。
「お前が死んでも僕は困らない。 だから抵抗してくれ。 僕にやめる理由を与えないでくれ、頼むから…………グチャグチャにして地面にばら撒きたいから……!」
男に凶相の笑顔とワイヤーが迫る。
その後に響くのは男の命乞いと絶叫だけだった。
その数は少し時間が経つと二つに増え、またしばらくすると三つに増えた。
さらに時間が経つと声は何も聞こえなくなっていた。
後に残るのは血に濡れた機械仕掛けの腕だけだった。




