100話、日本最大の海賊
日本最大の海賊。そう、あの海賊です。
ーーーーーー天文二十四年九月初旬・白井家旗船・村上武吉ーーーーー
助五郎殿が大内様の御使者殿を伴って、白井家の関船に戻ってきた。御使者殿をお迎えするけ、奈佐家当主・日本之助殿、そしてこのワシ村上三島頭領・村上少輔太郎が集められた。
「親父!兵部卿様の使者を連れてきたぞ!」
一番前は、冷泉左衛門尉様じゃな。何度か会うたことがある。冷泉様に控える2人は確か、御舎弟達じゃ。
その後ろの男はでかい!小袖の紋は平四つ目結。尼子の流れを組むものか。お供におもろい男がおる。何やら猿の面をつけとる。
尼子某様の横におわす優男が、陶出雲介様じゃな。姿格好を見るにワシとは歳が一回り違うようじゃ。
出雲介様の側に控える方の小袖にも大内菱じゃ。兵部卿様の縁者かの?出雲介様に控えるかたちで入ってこられたから陶家のどなたかかもしれぬな。小袖の下に素晴らしい体躯をされておる。上背はないの。その後ろには陶家の小姓や護衛か。
出雲介の横の貴人はどなたか?じい様が語っておられた公卿のような出立ちじゃが。
上座には貴人じゃ。
「二条一位におじゃる。大内警固衆よ、出迎え大義じゃ。」
なるほど、二条家の御仁か。一位となると前当主・前関白様じゃな。
「冷泉左衛門尉じゃ。白井越中守(白井房胤)殿、村上少輔次郎殿ひさしいの。」
やはり、冷泉様は荒々しい。
「厚東行左衛門尉にございます。道中お頼み申す。」
な!この御仁陶様ではなかったか。となると陶様は、、、
「奈佐殿、村上殿、そして白井殿。お初めお目に通る。陶出雲介にございます。大内三大水軍当主自らの出迎え感謝いたす。」
この方が、陶様か!?なかなかお若きようじゃが。いや、ワシとさほど歳は変わらぬか。十五で家督を受け継いだワシとそう変わらぬとは十数歳かな。
「最後に尼子左衛門大夫じゃ。日本!大内の飯はどうじゃ!?」
「ありがたく食らっておるわ!四職様の元ではヒエ飯も食えぬよ。宗見様にも礼を頼むぞ!」
「二条公を初め御使者御一行、ようお越しなすった、警固奉行人・白井越中守にござる。そちらは、陶様の御当主とか。我ら白井家は代々陶様と一蓮托生じゃ。越中守の諱、房胤も道麒様※1からの偏諱にござる。」
白井家は大内家中の中でも特に陶家との結びつきが強かったな。そういえば助五郎殿の諱はなんと言ったかな。
「奈佐日本之助じゃ。山陰の水軍を束ねとる。そこの尼子左衛門大夫に郎党共々命を預けておる。」
奈佐家率いる隠岐水軍は、警固衆となって日が浅い。されども瀬戸の内海※2と違って隠岐の近海は波が荒い。そこを拠点とする水軍は当然練度が高い。
次はワシか。
「村上三島を率いておりまする、村上少輔太郎にざいます。此度は右方より皆々様を護衛致しまする。」
「ご紹介が終わったところでございまするが、出雲介様にお願いがございまする!!」
「如何なさったか?」
どうなされたのか?越中殿。
「後ろに控える、助五郎に一字拝領願いたい。」
そうか、白井家は陶家の偏諱を受けてきたと言っておったな。本来ならば助五郎殿は、前御当主から一字授かるはずじゃが、討ち死になさっては出雲介様からの偏諱を受けるのじゃな。
「偏諱か。よかろう。白井越中守嫡子、白井助五郎。その方に俺諱より"護"の一字を与える。これよりその方は助五郎護胤だ。」
「ありがたく!!この白井助五郎護胤、兵部卿様そして、出雲介様のためしかと働きまする!」
※1道麒:陶隆房父、陶興房の法号。昨今の研究では隆房とは養父子の関係であり、隆房は門田氏からの養子とされる説が種類だが、本小説では隆房は興房の実の次男とする。つまり、本主人公は興房と血のつながった孫である。
※2瀬戸の内海:瀬戸内海の当時の名称
助五郎は史実では、助五郎賢胤と名乗っています。そう、陶晴賢から一字貰ってますね。しかしこの小説では、そんな人物いなーい。西日本史を大きく動かした晴賢はおらず、大内の忠臣陶隆房しかいないのです。しかーし、その隆房が故人である今、その子の隆護から偏諱を受けたのでした。
ちなみに今日徹マン後の講義だったので頭が痛いです。
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