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秋の移ろい

作者: AIAMAAI

【となりのトトロ】

1988年:邦画

監督&脚本:宮崎 駿


 映画を見終わって急に思い立ち、すっくと立ち上がって部屋を飛び出し廊下を駆けていき、スニーカーに両足を突っ込んで玄関から出て、路地を歩いて行った。


『さんぽ』

作詞:中川季枝子

作曲:久石 譲

あるこうあるこうわたしはげんき

あるくのだいすきどんどんいこう

さかみちトンネルくさっぱら

いっぽんばしにでこぼこしゃりみち

くものすくぐってくだりみち


 地面は赤や黄に色付いた落ち葉の絨毯に覆い尽くされ、

「啄木鳥や 落葉をいそぐ 牧の木々」俳句:水原秋櫻子

 木々の枝には秋の味覚がたわわに実り、

「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」俳句:正岡子規

 立ち止まって徐に高い空を見上げれば、

「秋の雲 ちぎれちぎれて なくなりぬ」俳句:内藤鳴雪

 空気が乾燥した青く澄んだ雲一つない秋晴れ。

「草山に 馬放ちけり 秋の空」俳句:夏目漱石


『アルプス一万尺』

アメリカ民謡:ヤンキードゥードゥルが原曲

作詞&作曲:不明

おはなばたけで

ひるねをすれば

ちょうちょがとんできて

キスをする。


ではなくて、

じゅんぎ君の飼猫がやって来て

猫パンチ!

 予想だにしなかった登場に吃驚仰天して、目をぱちくりとさせ

「何で?何で?いつも?いつも?」

と言いながら顔を寄せた途端、

猫シャー!

「なん?なん?なにすんねん」

ワンワンワン!

 けたたましく吠える声が近付いてきて、じゅんぎ君の飼犬が駆けてきた。

「じゅんぎ君」

「どないしたんや?」

 じゅんぎ君に問われ、咄嗟に、じゅんぎ君の飼猫を両手で掴み上げて、じゅんぎ君の顔の前に差し出した。瞬間、

猫パンチ!

「何をすんねん!」

と怒鳴ったじゅんぎ君に、感心したように返して言った。

「飼主にもかまわずに」

「やるんや」

 じゅんぎ君が察して差し伸べた腕には、引っ搔き傷の痕が残っていた。

「自由奔放で気紛れ。変わりやすい秋の空と同じや」

と言って、じゅんぎ君は爽やかに晴れ渡った秋の空を見上げた。矢庭に、じゅんぎ君にも予測不能な事態が沸き起こった。

 突如、じゅんぎ君の飼犬が急発進したのだ。

「あれ~~~~ッ!!!」

 リードを握っていたじゅんぎ君は、悲痛な叫び声を上げながらじゅんぎ君の飼犬に引き摺られて行った。

「追うでぇ!走るんや!」

と叫んだが、じゅんぎ君の飼猫は地面に寝そべったまま大欠伸をした。

 じゅんぎ君の悲痛な叫び声は、徐々に遠ざかって行った。

 仕方なく、じゅんぎ君の飼猫をむんずと掴み上げて小脇に抱えて全力で疾走した。

「待ってや~~~~ッ!」

 叫びながら息急き切って追い駆け続けていくと、じゅんぎ君とじゅんぎ君の飼犬が立ち止まって喘ぎ、息を整えるように何度も何度も大きく大きく深呼吸をしていた。

 やっとのことで息も気持ちも落ち着いたのか、それとも二度の急発進を許すまじとでも思ったのか、

「ほな、行こか」

と言い放って、じゅんぎ君はリードを力強く握って力一杯に引っ張った。

「へ?」

 素っ頓狂な声を上げたじゅんぎ君の目の先に視線を向けると、じゅんぎ君の飼犬が四本の足を地面に張り付けて、一歩たりとも動いてなるものかとばかりに頑固に踏ん張っていた。

 飼猫だけでなく飼犬もまた、自由奔放で気紛れ。まさしく、移ろいやすい秋の空そのものだった。

「飼主に似るって言われるさかいに、もしやもしやじゅんぎ君も、だったりして?」

「なんでやねん!」

「ワンワンワン!」

「ニャニャニャ!」


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