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大先輩が転職してきた!

西暦45億3568万21年7月20日、今日は月曜日、時刻は8時13分。晴れていい天気だ。私、高宮友和はこれから仕事だ。今日は、新しい人が転職してくるらしい、年齢は2,500歳ぐらいとのことだ。私は223歳だから大先輩だ。こういう大先輩からいろいろ人生について教えてもらうのはとっても楽しい。


先月、母方の親戚のおじいさんが4,523歳で天界に旅立ち、お祝いの会が開かれた。西暦1,000年台、2,000年のころはこの旅立ちを’死’と呼んでいたらしい。棺の周りで、家族が泣き崩れたらしい。最近ハマっている、歴史書で読んだのだ。


今の時代からすれば、馬鹿げている、と一笑にふすのは簡単だ。でも、当時の人は、この人が肉体の船を離れて、どこに行くのか全くわかっていなかった。この当時の人の気持ちになると、最愛の人が、ある日、突然、どこかへいってしまうのだ、その悲しい気持ちはよくわかる。私はこのまったく無知蒙昧だった時代の人たちの心情にこころをはせるのが好きだ。自分がこの時代に生まれていたらどんな風だったろうと思ってしまう。


そんな時代から40億年以上の時間が経ってしまっている。今だに西暦をつかっている。西暦25億年ごろにあった第80次世界大戦で人類がほぼ絶滅という状態に陥った。それでもなんとか、キリスト教徒とイスラム教徒、仏教徒が生き残り、今だに西暦を使っている。イスラム暦も使われている。マホメット以来、預言者は現れていない。西暦45億年では、イスラム暦と西暦の違いなど本当にけし粒みたいな問題だ。それでもまだ、西暦なのだ。


西暦1,000年代、2,000年代、さらに前の時代、ローマとかいう帝国があったらしい。私はこの時代の歴史が好きだ。人類は40歳ぐらいまでしか生きられない時代があったらしい。平均寿命がだいたい4,000年という今では全く信じられない若さだ。まあ、4,523歳で旅立ったおじいさんはすごく長生きのほうだが。


今では40歳などといったら、全くなんにも知らない赤ん坊のようだ。だいたい100歳で基礎教育が終わり、就活が始まる。古代には歴史とか科学とかいう科目があったらしいが、45億年の歴史は絶対に覚えられないだろう。信じられないくらいの激しい科学の進歩があったのだ。それがすべてなんらかの媒体に記録されている。遠い遠い昔は無文字時代なんてものがあって、なんの文字記録も残っていない、考古学的な記録しかのこっていない、なんて気楽な時代があったのだ。でも、そんな時代は神話的昔の話。45億年分の記録が残っている。記録装置により、どの年代の記録でもすぐに読み出せる。


私は歴史など勉強したことはないが、昔の話を知るのは好きで、よく歴史、西暦1,000年、2,000年ぐらいの歴史の本を読むのが趣味なのだ。


科学も果てしなく進歩した。現代の科学の基礎を勉強するだけでも何百年もかかってしまう。現代のテクノロジーは目も眩むような進歩の果てに立っているのだ。そういうのを勉強するのは科学者の仕事だ。私のようなたった200年ぐらいしか生きていない若造にはその足元すら理解することは難しいのだ。


だから、基礎教育で学ぶのは、資料を活用する能力、論理的に試行する能力、相手を説得するロジックなどを学ぶのだ。それでも50年以上はかかる。だからだいたいの人が基礎教育を終えるにはどうしても100年ぐらいかかってしまうのだ。


人は4,000年ぐらい生きるから、転職も珍しいことではない。1,000年も同じ会社にいたら、退屈してしまうだろう。まあ、だいたい200年から300年で転職を繰り返す。私の会社に転職してくる2,500歳ぐらいの先輩は、人生で一番脂がのっている時期だ。


私の勤めている会社は創立1億年は超えている。会社の統廃合は珍しいことではないこの時代で、創立1億年以上は老舗中の老舗だろう。それが気に入って、就職しようと思ったのだ。



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