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【第四.五話】1度目の夢

こんにちは、はちみつレモンです。元々この話は入っていませんでしたが、この話を入れることになりました。投稿最新話まで読んでくださった方には、申し訳ない限りです。

誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。

追記:10月10日、修正しました。

「お前、今度は何をやらかした。」


「あらやだお父様、やらかしたなんて!ただちょっとあの方のお飲み物に媚薬を入れただけですわ。」


「び、やく...だと?お前、自分が何をしたのか分かっているのか?」



何よ、やらかしただなんて。わたくしが悪いことをしでかしたみたいじゃない。わたくしはあの方の事が好きで、あの方もわたくしのことが好き。愛し合う二人なんだから、媚薬くらい良いと思うの。最近あの方は平民の女とよくご一緒されているけれど、本意ではないのよ。だってあの方は、わたくしのことを愛しているんだもの!



きっと異世界から来た少女だから、陛下が王命でも下したんじゃないかしら。あの女を守りながら、この国のことを色々教えてあげるように、と。あぁ、あの方はなんて優しいのかしら。わたくしという愛する人がいながら、無理やり面倒を見させられて、側にいなくてはならないなんて。でもね、わたくしは思うの。陛下は、わたくし達の愛を確かめていらっしゃるのよ。本当にお互いを思っているのなら、どんな試練も乗り越えられるはずだものね。ただ、少しやり過ぎだとは思うわ。だってあの方のお顔が、一層とやつれてきていらっしゃるから...あの平民は、迷惑をかけ過ぎなんじゃないかしら。



だからね、わたくしは今、彼女に色々と()()して差し上げているわけ。この前も、あの方に手作りのクッキーを渡したなんて無礼なことをしたものだから、きっちりと指導してあげたわ。そうしたら途中であの方が慌てて部屋に入ってきて、



『何をしているんだ。これは指導にしては度が過ぎているだろう!』なんて言って、彼女をわたくしの目の前で抱き寄せたのよ。



その瞬間にわたくしは察したわ。殿下はわたくしが虐められていると勘違いをして、彼女を守るふりをしながらわたくしを助けようとしてくださっていたのだと。わたくしのことを睨みつけていたのは、自分が彼女を抱きしめているのは不本意だと、伝えたかったからだと。ふふふ、殿下ったら、そんなことをしなくてもわたくしには伝わるのに。



「...聞いているのか!」


「ええ、もちろん聞いていますわ、お父様。」



あらやだ、そんな目を向けないでください。少し考え事をしていただけで、ちゃんと聞いていましたよ?お父様ったら、綺麗なお顔が台無しじゃない。...ってあら?あれは、王宮の馬車じゃないかしら。



窓の外を見ると、皇家の紋章の付いている馬車が家の前に止まっている。



「お父様!王宮の馬車ですわ!きっとあの方が家から出てこないわたくしを心配して来てくださったのだわ!」



わたくしは喜々として、お父様に知らせる。しかしお父様の顔は、途端に真っ青になった。そして膝から崩れ落ち、もう終わりだ...なんて言っている。お父様、一体どうされたのかしら。



「...お父様、」


「使用人も含めて、屋敷にいる者全員を捕えろ!一人も逃がすな!」



突然、屋敷の入口の扉が破壊された。



「ああ、あの方の声だわ!」


「...どうやら、呼ばれているようだ。お前も一緒に来なさい。」


「もちろん、当たり前です!」


「...こんな風に、なってしまうとはな。すまない...約束は、守れなかったようだ。」


「お父様、何か言い...」


「殿下!私はここです!娘も共にいます!」



お父様が何かを呟いていたから、聞こうと思ったのだけど...わたくしと彼が早く会えるようにわざわざ呼んでくださったのね。普段から怒ってばかりだけれど、わたくしのことを愛してくださっているのだわ。立派なお嫁さんになって、絶対にお父様に恩返ししますから。楽しみにしていてくださいね。



そしてすぐに、あの方はわたくし達のいる部屋に入ってきた。



「ああ、屋敷まで来てくださるなんて、寂しい思いをさせて申し訳...」


「捕えろ。」


「ふふ、出会い頭に冗談ですか?...って、きゃっ!」



わたくしとお父様は、後ろから拘束された。



「こ、これはどういうことです!?は、離しなさい!わたくしは、わたくしは彼の婚約者なのよ!」


「うるさい口だ。おい、あれを口に。」


「な、なにをっ...ん!〜〜〜っ、〜〜〜!」



口輪を嵌められた私は、お父様と共に馬車に投げ込まれた。そして何処へ行くかも分からないまま、連れられていった。















着いたのは、華やかなパーティー会場だった。



(どういうこと?わたくしは、招待客ではないけれど。)



皆の視線がわたくし達に集中する。そこに、陛下が颯爽と現れた。



(陛下がパーティーに参加するなんて滅多にないことだわ。何かしら、こんなに大掛かりなことをして...わたくしへのサプライズか何かなの?)



「...皆の者。よく聞いてくれ。この者たちは、大罪を犯した。」



指を指す方向は、わたくしとお父様と...捕縛されて連れてこられたお母様、お兄様だった。



「ねぇ、あなた!一体これはどういうことなの!?」


「お前、俺たち家族に迷惑ばかりかけやがって...!」


「静粛に。」


「でっ、ですが陛下...」


「お前たちには、皇子の毒殺未遂で斬首刑を言い渡す。」



斬首刑、という言葉に、辺りは一層ざわめきを大きくする。



「まぁ、皆落ち着け。言いたいことは分かっている。斬首刑は、実行犯のそこの長女だけだ。他の者達は皇家のために身を削ってくれている。様々な功績を上げてきた者たちを、殺すわけにはいかないからな。...貴殿らは、この国により貢献することを刑罰としよう。」



陛下のお言葉で、お父様たちは安心した表情をして手を取り合っている。陛下もそんな彼らを、温かい目で見守っているではないか。わたくしが斬首刑になるというのに、こちらのことなんて一切気にしていない。毒殺なんてしていないわ。全部デタラメよ。...すよ、誰かが彼に愛されているわたくしを妬んで、嵌めたに違いないわ。お父様たちは違うかもしれないけれど...わたくしが斬首刑で死ぬなんて、誰も喜ばないは、ず...



『あぁ、やっとあの迷惑なご令嬢がいなくなるのね。』


『両親ともに素晴らしい方々なのに、あの悪女のせいで相当心を痛められていたからな...良かったよ。』


『ご子息は今度王族の護衛になるらしいじゃない、本当に良かったわ。』


『あんな悪女、さっさと消えれば良いんだよ。』











...誰もが、わたくしに待ち受ける死を、喜んでいた。あぁ良かったと、心から祝福していた。どうして?わたくしは未来の王に愛されている、妃なのよ。幸せになれるはずじゃないの?誰もが羨む、皇妃になるはずじゃないの?一体、どうして...?



後ろからは、追い打ちをかけるように、あの方と、平民の女が腕を組んで歩いてくる。



『なんてお似合いなの!』


『異世界から来て不安だろうに、あのお方と一緒に励んでいるそうだぞ。』


『あの二人が未来の国を担うのだろうな。この国も安泰だ。』



皆からの祝福を、羨望を、その身に受けているのは、彼女だった。わたくしが受け取るはずのものを、彼女は全て貰っている。愛されているのはわたくしのはずなのに、祝福されるのはわたくしのはずなのに....幸せになるのは、わたくしのはずなのに。



「皆、聞いてほしい。あろうことかこの罪人は、私の愛する人を傷つけた。...話せるか?」



愛する、ひと?



「は、はい。あれは、私がダンスの授業で、公爵令嬢様の足を間違って踏んでしまった日の放課後のことでした。彼女に呼び出された私は、...私はっ...。」



「ああすまない、私のせいで君を苦しめてしまったようだな。どうか許してくれ。」



そう言って、震える彼女を、あの方は抱きしめた。その様子に周りは応援と完成の声をかける。誰もが、彼女たちを祝福する。対するわたくしは...憎悪の視線を浴びせられていた。”悪女””醜い豚女””公爵家の恥曝し”..."誰からも愛されない、不幸な女"。



わたくしはずっと...誰からも、愛されていなかったの?



「...皆様、ありがとうございます。......私は、彼女に...従属魔法を、かけられたのです。」


『じゅ、従属魔法だと?』


『確かあの魔法は禁忌ではなかったのか?』


『肉体を支配し、徐々に精神を蝕むという、あの魔法を...なんて恐ろしい。』


「この女は、皇族の毒殺を図り、あろうことか私の愛する次期皇妃に従属魔法を使用した。...そして一つここで発表がある。彼女はつい昨日、”ステラ”の称号を正式に授かった。つまりこの女は、国の宝である精霊姫にまで危害を加えたのだ。...よって私はあの女の公開斬首刑を求める!皆、異議はあるか!」



会場に拍手が巻き起こった。異議を唱える人は、一人だっていない。



「...父上!」


「うむ、分かっている...皇子と国民の代表である貴族が求めることを、どうして断れよう。よって、この者を公開斬首刑とする!」



わたくしに残ったのは、絶望だけだった。














牢屋に入ってから、数日が経った。食事は腐ったパンと水だけ。着替えも化粧も出来ない。ベッドは固くて、よく眠れない。



(わたくしは...誰からも愛されていなかった。)



あの夜会の日から、何もする気力がなくなって、ただただ死を待つ時間を過ごしている。自分が誰にも必要とされず、愛されていなかった事実がただただ苦しくて、辛かった。



そこに、一人の女がやってきた。



「...元気?」

「...どうして。」



それは、本来ならわたくしがいたはずの場所にいる、女だった。



「やだ、その汚い口で私の名前を呼ばないで?...今日は死ぬ前に一つ、貴女に言っておきたいことがあって来たの。」


「...何でしょう。」


「ねぇ、貴女はまだあの方を愛してる?」


「...。」


「...っふふ、あは、あはははは!」



彼女が突然笑いだした。



「何が面白いの。」


「だって、私が貴女に従属魔法をかけていることにまーったく、気づかないんだもの!」


「...何ですって?」


「あはは、ほんっと、笑える。気づかれないように徐々に徐々にかけていったのよ。それで、彼を心から、誰よりも愛するようにさせたの!私のことを虐めるようにも仕向けたし、皆に嫌われるように動かしたのも私!ふふ、気づかなかったでしょう?」


「そ、んな。」


「良いわ、良いわねその表情!絶望に染まる顔!...良いものを見せてくれたから、特別に魔法も解除してあげる!」



瞬間、とてつもない痛みが、体中を襲った。



「ああっ...くる、し...。」


「目障りだったのよ。何でも持ってるあんたが。...だから、全部私のものにしたかった。って、今更言ってもね?」



掴みかかって、殴り倒したかった。私を陥れて、死に追いやるこの女を殴らなければ気がすまない。...なのに、体は動かないまま。



「っこ、の。」


「あっ、そうだ。まだ言ってなかったわね、私、魅了魔法も使ってたの!貴女を愛していたはずの皇子が私に跪く姿が、貴女の家族が貴女を疎む姿が、滑稽で仕方なかったわ。愛って、こんなにも簡単に壊せて、手に入れられるのね?ああ、貴女は手に入れられなかったんだっけ、ふふふ。」


「愛、してた、ですって?」


「あら、残念、時間みたい。もっと貴女が絶望に染まる姿を見ていたかったけど...仕方ないわね。」


「ちょ、っと待ちなさ、」


「処刑は明日よ。精々、沢山苦しんでね?」



去っていく彼女の背を見つめているわたくしの思考は、彼女の言葉でいっぱいになっていた。



(...わたくしは、彼に、家族に、愛されていたの、かしら。)












悩んでいるまま夜が明け、遂にその時が来た。



小さい子供から老人まで、沢山の人が見物に来ている。歴史に残る大悪女の死を、その目で見るために。



「殺せ!殺せ!」









昔から、わたくしは周りから疎まれていた。操られている時程ではないけれど、確実に。小さい頃は、何をするにも可愛がられて、幸せだったと思う。しかし突然、両親がわたくしに対して冷たくなった。理由は分からなかった。...それでも、昔みたいに戻れるように頑張って、そしてそれが無意味だと知ったのは、いつだったか。辛くて辛くて、わたくしを見てくれる人なんていないのだと、随分暴れたんだっけ。それも重なって、余計にわたくしは周りから疎まれていたんだったわ。



それでも、そんなわたくしの側に侍女がいてくれた。結局その侍女はわたくしを暗殺しようとして連れて行かれそうになったけれど、連れ戻した。わたくしには、彼女しかいなかったから。...そして彼女もそれを分かっていて、側にいてくれた。学園でも案の定嫌われ者だったけれど、やっぱり彼女だけは側にいてくれた。...多分、その辺りからわたくしは従属魔法をかけられ始めたのだと思う。体が思うように動かなくなっていって、物を考えることも出来なくなったから。



侍女は、どうなったのだろう。その後も、側にいてくれた?それとも、離れていった?



『お、じょ...さま...元気で、過ごして...くださ...』



これ、は...何の記憶なの?移動中の馬車が転倒して、暗殺者が来て、それで、



『お嬢様、お逃げください!私がここで引き止めます。早く!』



そうだ、侍女は、わたくしをかばって、....わたくしのせいで、死んだんだわ。










「これより、斬首刑を執行する。処刑人、最後に言い残すことはあるか。」


「...お父様...いいえ、公爵様に申し上げたいことがございます。」


「良いだろう。...公爵、前へ。」



辺りは静まり返って、わたくし達をじっと見ている。



「...今更、何の話だ。」


「一つだけ、お願いがあって...死んだ侍女の墓に、わたくしの遺骨を入れてください。あと、わたくしの残っているすべての財産を、その侍女の家族に渡してください。」


「侍女の?」


「はい。彼女はわたくしのことを心から思ってくれていましたから...何か恩返しをしたかったのです。」


「...何だ、急に人が変わったように振る舞うなんて。」


「いいえ、わたくしは最低な悪女ですから。中身なんて変わりませんよ。」


「まるで...昔のお前に戻ったみたいじゃないか。」


「ねぇ、お父様。わたくし、ずっと謝りたかったんです。お父様は、わたくしが顔も見たくないほど嫌いなんでしょうけど...それでも謝りたかった。お母様とお兄様にも、伝えておいてください。...殿下にも。」


「時間だ、処刑人、前に出ろ。」



わたくしは、前に出ようとする。しかし、お父様がわたくしの腕を取って離そうとしない。...お父様は、わたくしを少しは愛してくれていたのかもしれない。でも、そんなことを知ったって後悔が増えるだけよね。あの女を憎む思い以外の感情は、何も持つべきじゃないわ。



「公爵様を連れて行ってください。...さよなら。」


「っ、離せ。まだ娘と話が終わっていないんだ。離せ!」



後ろは、振り向かない。



「処刑人、位置につけ。」


「離してくれ!お願いだ...エラ!」



涙が、溢れる。



「3」



こんな風に人生が終わるなんて、考えてもみなかった。



「2」



沢山の人に迷惑をかけた。



「1」



...幸せに、なりたかった。



「0」



来世では、幸せになれると良いな。

今後この部分が繋がってくる展開を作りたいと想ってます。

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