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【第二十一話】謁見...だったのだが

こんにちは、はちみつレモンです。誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。

追記:8月11日、編集しました

「ハワード王宮に到着いたしました。謁見の間までは案内人がつきますので、私はここで。」


「そうか、ここまでご苦労だった。」


「ありがとう。」


(つ、ついに謁見・・・胃が痛い・・・。)






遡ること2時間前・・・


「いい?習ったことは意識せず!体に染み付いているはずだから、多少緊張しても優雅な動作で!私の娘なのだから、絶対に上手くいくに決まっているわ!頑張ってきなさい!」


「いいか、あの糞王子に出会っても無視だぞ。いいな、無視だ。変なことを言われたりしたら帰ってから私に報告しなさい。ぶっ潰・・・あとで話しておくから。いいな?」


「もう、お母様もお兄様も心配しすぎですよ・・・戦場に行くのでもあるまいし。謁見ということで、多少緊張はしていますが。お母様の言う通り、習ったことを意識せずに自然に振る舞うようにしますね。あと、ウィリアム王子に会う予定はないので大丈夫ですよ。」


私が王宮に行くということで、何故かお母様とお兄様も心配しているらしい。二人とも10分くらい同じことを言い続けている。あまりの心配ように、緊張していたはずがいつの間にか緊張がなくなっていた。


「もう私は心配で心配で・・・こんなに可愛い私達の娘が世に解き放たれてしまったら、きっと虫がうじゃうじゃ湧いてくるに違いないもの。あなた、虫は近づいてくる前に潰してください。」


可愛い娘、なんて言われてしまった。確かに今日は侍女たちが朝から一生懸命に磨き上げてくれたので、いつもより美の磨きはかかっていると思う。お母様にお墨付きをもらえたと思って今日を乗り切ろう。


(・・・にしても、虫って何?)


「任せておけ。クソ虫共は私が蹴散らすと約束しよう。」


お母様とお父様は手をしっかりと握りしめ合っている。朝からラブラブなのは良いけど、程々にして欲しい。


「父上、頼みましたよ。万が一虫がついたら私もあとで蹴散らしに行きますから。」


「うむ、任された。」


お父様とお兄様まで熱い握手をしている。私の知らない間に、何やら一体感が生まれたようだ。ライラもうんうん、と頷いている。


(ライラ、私絶対にあなたのことを助けるから。)


戦いを前に、私は胸に誓う。


「では行こうか、エラ。」


「はい、では行ってきます。」


「虫がいたらお母様に報告するのよ!」


「父さん、頼みましたからね!」


にしても、一体さっきから言っている虫とは何なのか。


「わたくし、そんなに虫が好むような匂いは付けていませんけど・・・。」


「「「そういう意味ではない(わ)」」」


お母様たちは言葉を濁して説明してくれようとしたのだが、途中で諦めたらしい。エラちゃんは綺麗なままでいてね、とだけ言われた。


「では改めて、行ってきます!」


「行ってらっしゃい、頑張るのよ。」


「虫が湧いたら踏み潰すんだぞ!」


(お兄様しつこい。)






そうして私とお父様は馬車に乗り込み、王宮に着いた。そして今。


「こちらが謁見の間です。私達使用人は入ることができませんので、ここからはエラ様のみで進む道になります。公爵様は宰相様がお呼びですので、こちらへ。」


案内人の言葉で、お父様の機嫌が急降下した。


「あの野郎、仕組んだな・・・エラ、万が一粗相をしたとしても、私が責任を取る。だから、安心して行ってきなさい。」


「はい、お父様。粗相は流石にしませんよ?」


私はお父様のちょっとした冗談で気が和み、自然と笑みが浮かんだ。


「それでは、お進みください。」


緊張を和らげるために、ふうっと息を吐く。


(今まで家族と和解して、ダイエットも頑張って、王子とのお茶会も乗り切ってきた。大丈夫、私なら頑張れる。それに私にはお父様もお母様も、分からないけどお兄様も・・・そしてライラもいる。今度は私が彼女に恩を返す番だ。)


震える手足を動かし、ノックをする。


「入りなさい。」


扉を開けた目の前には、アーサー王本人が玉座に座っていた。広い空間なのに、陛下と私しかいない。でも彼の王としてのオーラが部屋中に行き渡っていて、不思議と寂しさを感じなかった。


「帝国が太陽に挨拶を申し上げます。エヴァンズ公爵家が長女、エラ・エヴァンズでございます。本日は多忙な中、このような形で謁見の許可をいただけたこと、誠にありがとうございます。」


「はっはっは。そんなに堅苦しくなくても良いぞ。それよりそなたのカーテシーにしても、挨拶にしても、見事なものだ。とても13歳のご令嬢とは思えないよ。」


「そのように仰っていただけるとは、私極光栄の極みでございます。」


陛下は優しい言葉とは裏腹に、私を見透かすような、射るような瞳でこちらを見つめてくる。きっとこの王を前にして、ほとんどの人が嘘はつけないだろう。


「さて、形式的な挨拶はここまでにして・・・13歳のご令嬢が私に申したいことがあるとは、はてどんな内容なのか。話してもらおうか。」


緊張で、ドレスの下の足は震えている。きっと表情にも出てしまっているだろう。でも、ここで弱気でいては、守りたいものを、ライラを、守ることなんてできない。


「・・・では単刀直入に申し上げさせていただきます。陛下、貴族の膿を出したいとは思いませんか。」


「・・・。」


一見ほとんど変化が見られないように思えるが、王の目の色が明らかに変わった。多分この発言をするまで彼は、私のことをくだらない話をしにきた令嬢とでも思っていたと思う。息子と同じで、王は面白いことが好きだ。だから興味本位でこの謁見を許可したのだと私は考えた。


そして私は、家族会議で話し合った内容を王に何ひとつの偽りを入れず、話した。


「以上が、わたくしを含めたエヴァンズ公爵家の申し出にございます。」


「そうか、スタインフェルド伯爵家が・・・怪しいとは思っていたが、やはりか。それで、一つ聞きたいのだが。スタインフェルド家の助けになりたいと、そう言ったな。」


「その通りでございます。」


「このような話はよくないのかもしれない。だが、どうにも理解ができなくてな。なぜ、公爵家にとって不利益になるようなことをしようと思ったのだ?」


来たか。いくらか質問はされるだろうと思って個人的に何個か案を自分の中で練っていた。そのうちの一つがドンピシャで当たるなんて、なんと運の良いことか。


「利益がないと仰いましたが。確かにスタインフェルド家を支持すれば、罪人たちを守護する者たちとして批判を受けると思います。ですが、同時に関わっている貴族たちの膿を出すことができます。きちんと罪を償わせ、かつ罪人たちを告発するよう示唆した我が公爵家は批判よりも大きな名誉を得られると考えました。」


利益がないなんて、嘘だ。王は利益があることを分かって私に質問しているのだ。これはいわゆるテストだ。公爵家に任せきりの頭が悪い令嬢ならば、この質問に答えることはできない。その時点で、提案を断られていただろう。この令嬢に、王族が助けるほどの価値があるのか。見定めるための質問だろう。


「・・・っははは!面白い、そなたは実に面白いぞ、エヴァンズ令嬢よ。いいだろう、その提案受けることにしようではないか。あの嫁馬鹿も、よくこのような素晴らしい娘に育て上げたものだ。」


「あっ、えと、お褒めいただきありがとうございます・・・。」


この王は基本的にお世辞を言うタイプではないので、純粋に褒めてくれているのだと分かる。少し嬉しい。


「おお、これはこれは・・・なるほど、あやつが気にかける程のことはある。」


「あやつ・・・ですか?」


「いやいや、こちらの話だ・・・それにしてもよく一人でここへ来たな。そなたと同じ年の令嬢を同じような環境に置いたとしたら、きっと皆倒れていただろう。」


陛下の態度が、さっきからガラッと変化した。多分、私を対等に話す者として認めてくださったということだと思う。やっぱりラフな陛下は、イケオジだ。


「先程は利益についてお話しましたが。わたくしは利益以前に、側にいてくれたライラを助けたいという個人的な私情があってここに立たせて頂いております。」


「当たり前のことだ。大事な者を失いたいと思う輩など世界に一人もいないだろう・・・ただ一つ忠告しておくとすれば、それがそなた自身を苦しめることがないよう気をつけることだ。」


「陛下はお優しいのですね。まるでわたくしの父のようです。」


「くそう、あの嫁馬鹿がこのような良い娘を持っているとは。私の娘もこれくらい素直でいてくれれば嬉しいものだ。」


(陛下の娘と言えば・・・。)


「シーア皇女殿下ですか?」


「そうだ。我が娘ながら、とても強烈な性格でな。根は悪い子ではないのだがそのせいか友達も出来なくて、困っているのだよ。」


皇女殿下は、ゲームで王子を選択した時に現れるライバル令嬢二人目だ。だがエラと違って根が悪いわけではないので最終的には二人を応援する形に収まる。・・・今更だけど、エラの扱いが酷すぎでは?


「そうだそなた、我が娘と友人になるつもりはないか?確か同い年であったな。どうだ?」


王に直接持ちかけられて、断る馬鹿は多分本当の馬鹿だけだろう。ああ、第一王子に加えて皇女殿下まで関わりを持つなんて、これから生きていけるのか不安すぎる。


「喜んでお受けいたします。」


「そうかそうか!ならばお茶会にでも招待しよう。日程はいつがいいだろ・・・」


バンッッッッッッ!!!!


「話が長いんだ!そろそろうちの娘を返せ!」


謁見の間の扉がいきなり開き、烈火の如くキレているお父様がずかずかと入場してきた。


「おいヘンリー・・・いくら友とはいえ、謁見の間に飛び込んでくるのはさすがにまずいだろう。」


陛下は呆れ顔をしている。


「全く貴様は!アカデミーの時から変わらんな!」


「お前もな・・・。」


アカデミーからって、お父様と陛下はアカデミー時代から交流があるってこと?そんな設定、初めて知ったのだが。


「と・に・か・く。どうせ話はもうすんでいるのだろう?私が入ってくることも想定内のくせして、白を切るな!娘は返してもらうぞ。」


「ははっ、お見通しというわけか。幼馴染の悪戯だろう、許せ。」


「いいや許さん。さあエラ、帰るぞ。」


「えっ、でもお父様、今謁見中で・・・。」


ちらちらと陛下の方を見れば、彼は私に笑顔を向けてくれた。


「エヴァンズ嬢、私はこうなることがわかっていたから気にしなくても大丈夫だ。」


「えっ?」


「また会おう。」


私は半ば引きずられるようにして謁見の間を後にした。緊張したし、お父様と陛下が幼馴染だったとか皇女殿下とお友達になるとかいう新しい情報も入ってきたしで、疲れた。でもとりあえず謁見は終わったので、一安心・・・というわけにはいかない。


ライラのことは、まだ確定していない。それでも、まだきっと私に出来ることはあるはず。


私は真剣な気持ちで、屋敷へ帰った。

次話もお楽しみに。

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