【第十五話】娘溺愛一家への道
こんにちは、はちみつレモンです。今回は番外編?のような本編です。あんなに険悪な雰囲気だったのでコロッと寝返るという...笑まさにご都合展開ですね笑笑
誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。
追記:8月4日、修正しました。
お茶会を無事(全く無事ではないのだが)終えた私は、王宮からの馬車で帰宅している。お父様は仕事が早く終わったようで、先に帰っているらしい。薄情者め。
(お茶会に来るとは思ってたけど・・・まさか名前呼びされるなんて。玩具にされるなんてごめんなんですが・・・せっかく同い年くらいの女の子たちと楽しくお話してたのに、皆王子の方に意識が行って結局そのまま解散になったし。)
楽しいお茶会を邪魔された挙げ句に玩具認定された鬱憤を何処で晴らせば良いのか。友達がいない私が同年代くらいの子達と話せる機会を奪うなんて・・・というか待って。私の当初の計画では、お茶会で目立ったことはしないはずでは?だいぶ暴れてしまっていた気がする。お父様にも大人しくしているよう言われたのに、全く逆の行動をしてしまった。どうしよう。
言い訳を考えるが、良い案が浮かばない。いっそのことお茶会をしていた記憶だけ失ったということにしたい。
そして言い訳が浮かないまま、公爵邸に着いてしまった。
(はぁ。これは帰ったらお説教かな・・・。)
なんてため息を吐きながら馬車から降りた。すると地面に人影が見えた。
「え、エラちゃんなの・・・?」
顔を上げると、驚いて口をあんぐりと開けているお母様と目があった。普段のお母様は礼儀やマナーを徹底していて、こんな淑女らしからぬ行動はしないはずなんだけど。
「お、お母様、ただいま帰りました。」
「な・・・。」
「な?」
「なんっって可愛いの!?」
あまりの声の大きさに思わず耳を塞ぐ。お母様はキラキラとした目で私を見ている。か。可愛い?
確かに可愛くはなったけど、お母様みたいな美女に言われるとどうしても嫌味にしか聞こえない。きっと純粋に褒めてくれてはいるんだろう。それじゃなきゃこんな風に話しかけてはこないだろうし。でもそれにしても褒められているような気がしない。
(お母様やライラは物凄い美女だし、お父様やお兄様、料理長だって物凄いイケメンだし・・・。国宝級が周りにいたら、私なんて塵程度にしか見えないじゃない。)
お母様は今にも飛んでしまいそうなくらい嬉しそうな顔をしている。
「産まれた時から物凄く可愛いわって思っていたけれど、まさか成長してもっと可愛くなるなんて!お母様、娘を綺麗に着飾るのが夢だったのよ〜。こうなったら早速仕立て屋を呼んでこの天使ちゃんに似合うドレスを作るしかないわね。それからああしてこうして・・・。」
(お母様、キャラが違いすぎない?)
一年前のお母様は凄く儚げな印象で、今にも消えてしまいそうなイメージだった。それが今ではこの元気さ。別に良いんだけど、一応私達、仲が悪かった親子なんですよ?距離を詰めてくれるのは嫌じゃないし、むしろ嬉しいとも思うけど、何というか、距離の詰め方が凄く早いといいますか・・・。
お母様と私、それぞれが自分の世界に入ってしまって中々帰ってこないので、心配して侍女達が駆けつけてくれた。そしてこちらを見て呆れた顔をしていたのは本人たちは知ることはなかった。
エラの自室では。
「お、お母様の距離の詰め方が異常過ぎる、わたくしだって仲良くしたいけどまだ許せてない自分もいるのよ!?一体どうすれば良いの!?」
侍女のライラをぶんぶんと揺さぶる。
「お、お嬢様、死ぬ、死んでしまいます。」
この後ライラにキレられて一時間ほどお説教された。解せぬ。
一方母の自室では。
「ねぇ、あなた。こういう服はどうかしら?あら、これも良いわね。このアクセサリーもすっごく素敵。あらこれも・・・。」
「アア、ウン。ドレモトッテモステキダネ。」
「あなた・・・?今まで目をかけてあげなかった分、これから目一杯可愛がってあげようって、約束したじゃない。急に可愛がられても、エラちゃんは戸惑うだろうし、本当なのか疑うだろうけれど・・・でもそんなこと思わなくなるくらい、たくさんたくさん愛情を注いであげるって。そう決めたわよね?まさか、もう忘れたの?そんなこと、ないわよねぇ?さぁ、どれが良いと思うのかしら?」
「あ、はい。これなんてどうでしょうか。エラの瞳の色と合って良いと思うんですが。」
夫、妻に弱し。
「良いじゃない!素敵、さすが私の旦那様ね!それじゃあ早速仕立て屋に連絡して・・・ああもうこうしている場合じゃない、私行ってくるわ!」
「はぁ・・・。ああ、いってらっしゃい、奥さん。気をつけるんだよ。」
鬼のような形相に怯えたり、妻の可愛さにほだされたりと、忙しい夫である。やはり一家の大黒柱でも、可愛い妻には負けるのだ。
ちなみに最近の夫の悩みは、「妻が可愛すぎる」というものらしい。呼び出されてその話を永遠とされた昔なじみの友人は、「惚気のためにここに呼んだのか?独身の前でよくそんなことができるな。というわけで俺は帰る。」ということだった。ヘンリーは社交界では、生粋の愛妻家だと有名なのである。
兄の自室では。
「い、今までごめんな。俺の態度は妹に取るものじゃなかった。こ、これからは少しずつ仲良くしていこうな・・・いや駄目だ!何が仲良くしていこうな、だよ!キモいぞ俺!クソっ、どう言えば良いんだよ!」
兄は、妹と仲直りがしたいらしく、引きこもって仲直りの練習をずっとしていた。しかし何度やっても腑に落ちないらしくずっとこの状態だ。
「自分の妹なのにあんな態度とってたんだから、そもそもまずは許してもらうところからか?今までごめん。許してくれるか?・・・いや違う。なんか軽いな・・・ああもう、そこの使用人!」
なんだか荒ぶっているなと思いながらなるべく気配を消して掃除をしていた使用人は、何か粗相をしたのかと焦った。
「はいっ、いかがないさいましたか!?」
「お前はもし妹がいて、喧嘩してたらどう仲直りする?ああ、友人の話なんだがな・・・。」
(えっ・・・一部始終聞いてたんですけど僕。間違いなく自分のことですよね?まさか僕の存在自体ないと思われてたんですか?)
内心ショックを受けつつも、丁寧に答える。
「そっ、そうですね..まずは謝って許してもらうところからですね。例えば、自分のどこが悪かったとか、本当に反省してると伝えることが大切だと思います。その後に、仲直りですかね。」
「おお!助かった、ありがとう!っと、じゃあこういうのはどう思う?」
「ええと、この部分はこうした方が・・・」
「なるほど・・・。」
何かと忙しいこの家族。結局この日の晩餐は、個々で食べることになった。
そして次の日の晩餐でも、兄はエラの変貌ぶりを目の当たりにして案の定練習した謝罪の言葉を伝えられないのだった。
それでも何だかんだ兄とエラは仲直りして、両親と兄が彼女を溺愛していくのはもう少し先の話だ。
どうでしたでしょうか?次話もお楽しみに!