【第十三話】王子との対面
こんにちは、はちみつレモンです。誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。
追記:8月1日、修正しました。
「そっ、そんな風におっしゃられるとは思いませんでした・・・。」
マチルダ様は心底驚いたような表情でそう言った。確かに、公爵令嬢という身分を持ちながら同じように扱って欲しいというのは少々おかしなことかもしれない。権威を持つ者としての威厳を保つ必要があるのにそれをわざわざ放棄しようとしているのだし。
「割り込んでしまうようで申し訳ありませんが・・・私もエラ様に賛成です。エラ様が言う通り、このお茶会は”王子妃”を選ぶための候補が集められた催しです。たとえ公爵家でも、伯爵家でも、それぞれに平等な権利があるはずです。」
「私もそう思います。」
驚いたことに、スカーレット様や、ナターシャ様も賛成してくれた。
確かゲーム内でのスカーレット様は絶対私が王子妃になるから令嬢で、ナターシャ様は私別に王子妃に興味ありませんから令嬢だった気がするけど。賛成してくれるなんて思わなかった。
「皆様・・・わたくしの我儘に付き合ってくださり、ありがとうございます。」
(我儘だと伝えれば、強制したいわけではないと伝わるかな。)
私は他のご令嬢にも同じように、平等に接してほしいと言わせたいわけではない。ただ、同じ立場の仲間として楽しく過ごせたら良いのにな、なんて私欲で言っただけだ。
綺麗事をつらつらと並べたが、本心ではただ仲良くしたいなんて、本当にただの私の我儘に過ぎない。意図に気づいてくれただろうか・・・スカーレット様は気づいてくれた様子だ。
ただ他の二人は分からない。ナターシャ様は表情が動かなすぎて読み取れないし、マチルダ様は緊張でガチガチになっていて読み取れない。
王妃様に限っては、先程からずっと成り行きを笑顔で見守っているだけ。私の発言は諌められてもおかしくないのに、一言も発さず空気のように周りに溶け込んでいる。
(王妃様は今まで傍観していた訳だけど・・・許してくれるかな。私は子供と言っても公爵家の人間で、周りに侮られるわけにはいけない立場にあるわけだし。)
すると、それに答えるように王妃様が口を開いた。
「・・・黙っていて申し訳なかったわね。頭の良い貴女達なら理解していると思うけれど、私は貴女方のなす事に口出しはしないつもりよ。王子妃ならば、その場で何が最善なのかを自分で判断する力が必要だわ。
これから貴女方には基本的に私の許可がなくても王宮内である程度は自由に出来るように話をつけておきます。但しお金が大きく動くことになったりする場合は許可を取ってちょうだいね。少しでも不安な案件であるなら、私を一度通してくださいな。」
(うわぁ・・・すごい切り抜けだわ。)
王妃様の言い分はもっともで、指摘される部分は1つもない。しかし言っていることと言えば、「基本的に勝手にしてくださって構いませんよ、ただ責任は取りません。大きくお金が動くときなどの特例の場合は把握をしておきたいので教えて下さい。」ということだ。
勝手にしてくれて良いとは言っているものの、きっと王室の影か何かが常に言動や行動を見張り、報告をするのだろう。スカーレット様もそれに気づいたのか、緊張した面持ちになっている。
ナターシャ様とマチルダ様は明らかにほっとした表情をしていて、まだ王妃様の言葉の意味を理解しきれていないように見える。
そして多分、今の反応も王妃様は確認しているんだろう。・・・これは王宮にいる間は、心が休まらなそうだ。
その後のお茶会は貴族令嬢らしい会話だった。王妃様は相変わらず傍観に徹していて、話は聞いているが一切口を出してこない。おまけにずっと笑顔を貼り付けたままなのだから、もっと怖い。
「そういえば、エラ様。」
話に区切りがついた時、スカーレット様が私に問いかけてきた。
「はい、なんでしょうか?」
「エイダン様は、どのようなお方なのですか?」
「ええっと、お兄様・・・ですか?」
「それ、私も気になってました。どんな方なんです?」
賛同してきたのは、まさかのナターシャ様。彼女はずっと無表情でお茶会に参加していたはず。急に飛びつくくらいお兄様の話題が気になるのだろうか。
「お兄様とは、今まであまり関わりがありませんでしたが・・・兄妹ながらお顔は整っているように思います。性格は・・・曲がったことが嫌いだけれど、思い込みが激しくて・・・後は基本的に優しい人だと思います。」
スカーレット様とナターシャ様はうんうん、と頷いている。
「ちなみに、婚約者か恋人なんかは・・・?」
「わたくしが把握している限りでは、いらっしゃらないかと。」
瞬間、二人は花が咲くように笑った。乙女だなぁ。
「本当ですの!?良かったですわ・・・実はの友人がエイダン様の事を好いているそうで、どんな方か気になっていたんです。公共の場でのエイダン様は誰にでも親切で良い方なのですが、本当にそうなのか怪しくて。
でも身内の方がそう評価しているなら悪い方ではなさそうですね。・・・僭越ながらこの話を友人に話してもよろしいでしょうか?」
お兄様、もしかして意外とモテてる?確かに顔は良いけど、中身はオススメできないよ。
「え、ええ。構いませんけれど・・・。」
「エラ様、エラ様!私も、いいでしょうか!?」
「え、ええ。」
スカーレット様とナターシャ様は大はしゃぎだ。やっぱりこのくらいの年頃は恋の話で盛り上がる。私は半分大人だから、どうしても純粋に楽しめない部分がある。若いって良いね。
楽しく恋の話で盛り上がっていると、誰かがこちらに向かって声をかけてきた。
「・・・楽しそうな話をしているね。僕も混ぜてもらってもいいかな、ご令嬢方?」
シン・・・と静まり返ったかと思ったら皆が頬を染めてどうぞどうぞと椅子をすすめ始めた。
ご令嬢方がこぞって婚約を求め、その栄光を掴み取るための争いは常に激化している。本人はそんなこと知りませんとでも言いたげな涼しい風貌で、興味のある雰囲気を出して、一蹴する。何とも罪深い人。
そう、今一番会いたくないその人が現れた・・・第一王子だ。お茶会に来ることだろうとは思っていたけどこのタイミングは予想外だった。乙女が夢中になる恋の話を一瞬で止めてしまうとは、さすが王子。
王子が来てから、それぞれ態度が変わった。スカーレット様は何というか、強火が弱火になった感じがする。ナターシャ様とマチルダ様は惚けた目をしている。
きゃあきゃあと他の3人が騒いでいる間からちらっと王子の顔を盗み見ると、やはり彼はこの歳でも周りの令息とは美の完成度が違う。私こそ脳内でクソ王子だの何だのと陰口を叩いているが、あまりの顔の良さ具合に頬を染めてしまっている自覚はある。
でも忘れてはいけない、甘いマスクの仮面の裏は腹黒だ。騙されているご令嬢たちが不憫だけど、私も命が惜しいので下手にこの人腹黒ですよなんて言うことは出来ない。
なんせ私はゲームの悪役令嬢。どんなきっかけから断罪からの死刑or国外追放に繋がるのか分からない。そのきっかけを作ってしまうのは、流石に嫌だ。
私は好きな人と結ばれたいし、幸せになりたい。そのために何としてもフラグを回避していかなくては。
分かりやすく変わる令嬢たちの態度に、王妃は心なしか冷たい笑みを浮かべている。そして私と目が会い、にっこり笑った・・・なんで?
「皆さん、息子が来て混乱させてしまってごめんなさいね。初の対面と挨拶も終えたところですし今日のところはこれでお開きにしましょう。」
皆残念そうな顔を隠す気がないようで、がっくりしている。まだ残って話したそうにしているが、王妃様はそれをものともせず使用人に3人を馬車まで案内させに行った。私も帰ろうとしたところ、あろうことか王子本人に声をかけられた。
「気をつけて帰ってね、エラ・エヴァンズ令嬢。」
そう言ってひらひら手を振られる。
(い、今、私のこと、名前で呼んだ?)
王子は確実に言った、エラ・エヴァンズ嬢、と。名前を呼ぶ、ただそれだけの行動だけど、この王子がするのでは重さが違う。
王子が名前を呼ぶのは自分が興味を示した者だけ。要するに私は王子の興味の対象になってしまったということ?・・・いや、からかって遊んでいるだけかもしれない。
会って間もないし、面白がられる要素もなかったはず。茶化されただけ、そう思いたい。
「・・・お気にかけてくださり、光栄でございます。ではわたくしはこれで。」
顔が青を通り越して白になった私は、使用人のことなど忘れて駆け足でその場を離れた。
彼女が走り去った後、王子の口角は上がっていた。
「名前を呼ばれたら大抵の令嬢は頬を染めて近づいてくるのに、青白くなって逃げて行くなんて。報告通り、随分変わったようだね。・・・これからの茶会が楽しみだ。」
そう言って王子は機嫌よく自室へ帰っていった。
初めての王子の登場...・ω・
自分で思っていたよりも長くなりそうです。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。
次話もお楽しみに!




