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【第十一話】☆大変身☆

こんにちは、はちみつレモンです。やっとお茶会直前までいきました...。ここまでお付き合いしてくださった方々には、感謝でいっぱいです。誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。

追記:7月28日、編集しました。

「おはよう、ライラ。今日は素晴らしい天気ね。ところで、今日は何も予定は入ってないわよね?」


今日は雲ひとつ無い良い天気なのに、気分は憂鬱だ。だって今日は・・・。


「本日はこれから支度をして、王子妃候補の方々とのお茶会に出席されるご予定です。」


「・・・ちょっと聞こえなかったわ。もう一回言ってくれない?」


「今日は、お茶会に出席されるご予定です。」


「耳が急に悪くなったみたい。もう一回言っ・・・」


「お嬢様、現実逃避しないでください。1年間頑張ってきたのは、今日のためではありませんか。」


あれから一年間、私は地獄のような日々を送った。ダイエットのため、筋トレや走り込みをし、空いた時間でマナーの叩き込みと勉強を。


初めは空腹感が凄まじくて倒れそうになったけど、今となっては食事の量がちょうど良く感じるくらいにはなった。


(体重計が、あったらなぁ。)


残念ながら私には機械についての知識が全く無い。定番のものづくりチートは不可能だった。そこで、ドレスを着ることでどれくらい痩せたか確認しようということになった。


半年程経った時に、途中経過ということでドレスを来たらウエストの部分が少し緩くなっていて、騒ぎに騒いで怪我したんだっけ。でもまだ痩せなくてはという段階だった。


そして今日、あの日からどれくらい痩せたのかがわかる。ここでドレスを着こなせなければお茶会で笑いものになること間違いなしだ。


「この1年、本当に大変だったわ・・・。冗談抜きで、死んでしまうかと思ったわよ。」


「本当に頑張っておられました・・・ですが、今日が本番です。」


「・・・じゃあ、ドレスを着てみましょうか。」


侍女の1人がドレスを持ってくる。


「こちらが本日のお召し物です。」


紫を主とした生地が幾枚にも重なり、下に向かってグラデーションが施されている、妖精が着るようなドレス。


胸元や重なっている生地の部分には青と白の薔薇が飾られている。ところどころに使われているのは真珠だろうか。レースも上品に飾り付けされている。


(・・・綺麗。)


一目で心を奪われてしまった。こんなに綺麗なドレスを私なんかが着ても良いのか。顔はそこそこ可愛い方だと思うし、スタイルも・・・まぁまぁマシにはなったと思うけど。どうにもドレスに着られてしまう気がしてならない。


「わたくしがドレスに負けてしまいそうだわ・・・。」


すると、ライラが呆れたような顔をして言った。


「お嬢様、まだ私の言葉を信じていないんですか。何回でも言いますよ。いいですか、今のお嬢様はあの第一王子殿下の隣に並んでも遜色がないくらいには綺麗なんですよ。」


それでもまだ信じていない様子の私を見て、ライラはやれやれという顔をしている。


(・・・だって、この世界の人たちは、皆顔が整っているし。)


王妃、王、王子、王女、お父様、お母様、お兄様、侍女たち・・・皆顔が整いすぎている。おかげで痩せたことで少し自身を持てた私の顔も、そんなに整ってないと思うようになってしまった。


ライラは褒めてくれるけど、身内贔屓ならぬ侍女贔屓のようなもので、私からしたらライラの方がよっぽど可愛いし綺麗。


それに、使えている相手に『そこまで可愛くですね。』なんて言える侍女は、世界中どこを探してもいないだろうし。


まぁでも、可愛いドレスのおかげで私も雰囲気美少女くらいにはなれたかな。


こんなドレスは、本来美女・・・例えばヒロインとか。そんな人が着るものだけど、今回は頑張りのご褒美として、私が着るのを許して欲しい。一度だけ着るくらいなら、バチは当たらない・・・と信じたい。どうが、美女好きの神様じゃありませんように。


「で、では着てみましょうか。」


やっと意味が着るのね、と緊張して構えていると、部屋の中にぞろぞろと侍女たちが入ってきた。


「え、え?何?どういうこと?」


「お嬢様、まだドレスは着ませんよ。」


一人の侍女が言った。


「え?」


「当たり前でございます。今日は王子殿下が来られるかもしれないんです。最っ高の飾り立てをしなくては。ドレスだけではなく、頭から爪先まで完璧にしてご覧に入れましょう。」


「お嬢様、いってらっしゃいませ〜。私はドレスの確認をしておきますので。」


「ちょ、ちょ、ちょっと!?」


私は侍女たちの迫力に飲まれたまま、半強制的に浴室に連れて行かれた。








「私達、前から思っていたんです。お嬢様の美貌を磨きたいと。」


「お嬢様はそういうことに対して興味が無さそうだったので今まで出来なかったんですけど、今日というチャンスが巡ってきたんですよ。こんなチャンス、逃すわけ無いですよね。」


「そうですそうです、お嬢様ってば、元が秀でていらっしゃるというのに、全くご自分を磨こうとしないのでやきもきしていたんですよ!」


「あなた達、王子殿下のお目通りをするからなんて言ってなかったかしら?」


「聞き間違いじゃないですか?」


それから侍女たちは私の容姿についてそれはもう熱心に語ってくれた。そんなに褒められたことがなかったので素直に嬉しいけど、ごめんね侍女様方。あいにく私は自由に使えるお金がないから、あげられないんだよ。


侍女たちの洗い方はまさにプロで、あまりの気持ちよさに半分意識を失いかけた。トドメはお風呂を上がってからのマッサージで、うっかり。本当にうっかり寝てしまった。


「お嬢様、起きてください!ドレスに着替えますよ!」


「・・・?あ、あぁ、ごめんなさい。いつの間にか寝てしまったみたい。」


侍女たちは『私達の腕を褒められているようで嬉しいですけど、今日は時短が必要なので寝ないでください!』なんて言いながらぷんぷん怒っている。・・・可愛いなぁ。


自室まで移動している途中で、執事のウォルトとすれ違った。また嫌なお知らせかと身構えていたら、あろうことか執事は口を半開きにしてこちらを見て固まってしまった。ついでに持っていた手紙を容器ごと足に落としていた・・・凄く痛そうだった。


良心は痛むけど、痛みに悶絶している彼を助けてあげられるほど今私に時間はない。私達は彼を無視して再び歩き始め、自室に着いた。


「・・・お嬢様!お待ちしていました。時間がありません。さぁ、そこに立ってください!」


ライラの掛け声と共に侍女が一斉に動き出す。


コルセットを付け、上からドレスを被せていく。侍女たちはああでもないこうでもないと喋っていて、私はされるがまま。・・・すると1人の侍女が、言った。


「お、お嬢様・・・腰回りが入りましたよ!」


・・・ウエストが、入った!?


「ほ、本当に?1年の努力は無駄じゃなかったのね・・・。」


この1年のことを思い出して感動している合間に、侍女たちが手早くドレスを着せていく。みるみる完成していく自分の姿にまた感動していると、ついにドレスのセットが終わった。


「出来ましたよ。」


「お嬢様、回ってみてください!」


侍女に言われるがまま、くるりと一回転してみる。ふわりとたなびくドレスは本当に綺麗で、今日このドレスを着れて本当に良かったなと思う。


「お嬢様・・・本当にお綺麗です・・・。」


「天使が降りてこられたんでしょうか・・・?」


「ちょっと目眩がしてきました・・・。」


「ありがとう・・・でもわたくしは何も持っていないのよ・・・。」


生憎、私はお金を持っていない無一文みたいなものなので、お給料のことは侍女長様に相談していただきたい。ごめんね。


侍女たちは残念そうな目を私に向けてきた。今どこに憐れみの視線を送られる要素があったの?


パンッとライラが手を叩く。


「では、最後にお化粧と髪のセットですね。」


「私達にお任せください!お嬢様をもっともっと美しくしますので!」


「お化粧なんだけど、派手めでお願い!」


ただでさえこの素晴らしいドレスで目立つのに、派手なお化粧なんてしたらもう悪役令嬢そのままなんじゃ・・・。なんて考えていたけど、よくよく考えてみると、派手なお化粧の方が都合がいいことに気づいた。


悪役顔なら人が寄り付かないだろうし、お菓子とお茶を楽しむだけで良い。


「は、派手めですか?」


「そう、派手めよ。・・・だめ?」


「うっ、その顔は、ずるいです。」


ふっふっふ、この顔はそこそこ良いからね!ぶりっ子作戦、効いてる効いてる。







ここからの作業が侍女たちにとって1番大変だったと思う。化粧は少しでもずれたら終わりだ。髪型はそこまで時間はかからなかったが、化粧はその何倍もの時間がかかった。


「で、出来ました・・・!」


「お嬢様の事を見た殿下、他のご令嬢が道端の石ころにしか見えなくなるんじゃない?」


「私今、自分の生きている意味を見失いかけたわ。」


そう何度も褒められると、流石に照れる。・・・そんなに私の盛れ具合は素晴らしいのか。ちょっと気になってきた。


「鏡を持ってきてもらえる?」


「はい、ただいま。」


侍女が二人がかりで全身を映せる鏡を持ってきてくれた。覗き込むと、そこには知らない令嬢が映っていた。


「え、どなたです?」


「お嬢様ですよ。」


(え、この悪役顔美少女が?)


綺麗なツリ目に小ぶりな鼻、小さな唇、白い肌、細い輪部。そして美しい銀髪。乙女ゲームの頃のエラとの違いが大きすぎていまいち納得できなかったけど、どうやら鏡に映る少女は私のようだ。


しかし、どうもおかしい。もう少し悪役令嬢味が強かったと思うんだけど。まぁ痩せたから多少の誤差はあるの、かな?それにしても・・・。


「みんなの腕、良すぎない・・・?」


あのエラからここまで変われたなんて、私の努力もそうだけど、侍女の腕も相当良い。素晴らしすぎる活躍に、今から全員にハグを所望したかったが、セットが崩れそうなのでやめておく。


「お嬢様、もう一回言わせてもらいますが。お嬢様はどんなお姿でも、世界一綺麗です。私達なんかの手を加えなくてもほとんど変わりませんから。


こんなに綺麗だと、もしかしたら今日お嬢様に手を出してくる変態がいるかもしれません。そんな時は、猪の如く戦闘態勢に入り、綺麗な所作で裾を持ち上げ、股間を蹴り上げてください。良いですね?」


ライラが私に念を込めて言ってきた。


侍女たちはうんうんと頷いている。


「そんなことがあるわけないでしょう・・・だって王宮よ?」


「あり得ます。本当に、気をつけてください。男は獣ですから。まぁそんなことになる前に私が駆けつけてぶっ潰しますけどね。」


侍女たちはまたうんうんと頷いている。・・・仲良いね。


コンコン。

「お嬢様、出発のお時間です。入り口の門に待機させている馬車で旦那様がお待ちになっているので準備ができ次第向かってください。」


ウォルトの声だ。さっきの出来事なんて無かったかのような対応。これは、恥ずかしがってますね。確かに、執事という仕事に就いていながら、動揺でものを落とし、口を半開きにしてしまったのだから、隠したいのは当たり前か。


いつも嫌な案件しか持って来ないからちょっぴり恨んでいたけど、ここは見逃してあげようじゃない。これからお世話になるかもしれないし。


「わかりました、わざわざありがとうございます。」







1年間、この日のお茶会のために準備してきた。正確にはこの日のお茶会で悪役令嬢フラグを折るために、と言ったほうが良いだろうか。


ここで免れればゲームは始まらないし、私が殺されることもなく、王子とヒロインがくっつくことができる。みんなにとって良いことしかない。皆が幸せになれる・・・素敵な世界になる。だからこそ私は、今日1日を無事に乗り切らなくては。


ざまあはメインじゃない。あくまでサブだ。メインは道を間違えないこと。決して出しゃばらないように。


「そろそろ行きましょうか。」


重いドレスを纏った私はライラを連れて、正面玄関へと辿り着いた。


「お嬢様、私はここまでです。今日は目一杯楽しんできてくださいね。ざまぁ、でしたっけ?成功するといいですね。」


「ええ、きっと皆驚くでしょうね、楽しみだわ。」


完全令嬢モードに入った私はこれから一切気を抜けない。腹黒王子に闘志に燃えているご令嬢方を相手にするんだから。


「じゃあライラ、留守番はよろしく頼むわね。」


「いってらっしゃいませ、お嬢様。」


完璧なお辞儀をしたライラを背に、私は馬車の中へと入った。





「おお、来たか・・・ってどなたですかな?馬車を間違えていらっしゃるようだが。」


1年ぶりの娘にどなたとは。確かに劇的な変化を遂げたが、所々に面影は残っている。いくら1年ぶりとはいえ、娘を他人と間違えるなんて。


「酷いです、お父様・・・実の娘に向かってどなた、なんて・・・。」


まぁ、驚くのも無理はないか。あんなにぽっちゃりしてマナーのなっていなかったエラがここまで変わるなんて思いもしなかったのだろう。


「・・・本当に私の娘なのか?まさか影武者を雇ったり?」


「していません、そんなこと。」


「・・・生まれ変わったり?」


「生まれ変わりもしてません。」


「私が夢を見ている、なんてことは?」


「どれだけ信じられないんですか。」


お父さんはまだ私だと信じられないようだ。でもこの反応が欲しかった。これで一人ざまあ完了だ。


「・・・1年間で随分変わったな。」


「死ぬ気で勉強も、減量もしたので。」


「頑張ったんだな。」


褒められて、素直に嬉しかった。・・・マナーの講師には、常に笑顔は貼り付けておきなさいなんて言われていたけど、家族の中では思いっきり笑っても、許されるよね。


「はい、ありがとうございます。」






「・・・エラ。」


険しい顔をなさっているけど。私、何かしたかな。


「なんでしょうか?」


「茶会でその笑顔は禁止だ。良いか、絶対だ。」


「常に感情を悟られてはいけないからですよね。分かってます。」


お父様の様子がおかしい。一人でぶつぶつと喋っているので、もしかしたら忙しくて疲れているのかもしれない。疲れているのに、申し訳ない。私は今日食べれる美味しいお菓子のことでも考えておこう。


「何てことだ、こんなに娘が可愛いなんて。今回のお茶会はあの王子が来るんだぞ。・・・あの腹黒が。いくら女に興味が無いと言っても、こんなエラの姿を見たら嫌でも興味を持つに決まっている。


・・・誰が喜々としてあんな野郎に娘をやるか。今すぐにでも帰ろう。すぐ帰ろう。いやしかし国の命令に背くわけには・・・。」


そんな父の思いとは裏腹に、馬車は戦場へと向かっていくのだった。


無自覚な女の子ってとても表現するのが難しく...イラッとこない程度に収めるのが非常に大変です。もし気になる箇所があれば是非アドバイスいただきたいです。

次話もお楽しみに。

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