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(90)物の使い方
物の使い方が上手い人は、その物を長い間、甘い蜜月のように使い続ける。傷んだとしても、修理などして買い替えたりは極力しないから、より一層、その物の寿命は延びることになる。逆に下手な人は完璧な物を辛く欲するから、その物の寿命は、一端、傷めばそれまでで、廃棄されたりする。まあ、物が使う人を決められる訳もなく、こればっかりは物にとって、宿命という他はない。^^
とある山村の農道である。一人の年老いた農夫が傷んだ鋤を見ながら思案に暮れている。
「これは古かのう~。傷みよるも仕方なかが…。もう一本、持ってこりゃ~よかじゃったかのう…」
そこへ息子と思われる中年の男が、畔に荷車を止め、現れた。
「おとぉ~そこまで使やぁ、よかぞっ! もう40年は使うとろぉ~がっ!」
「おみゃ~はそう言うがのう。まだまだ直しゃぁ~、まだ2、30年は使えるがっ!」
息子は、そんなに生きられるんかいっ! とは一瞬、思えたが、そうとも言えず、「ああ…」とだけ笑顔で返し、頷いた。
人もまた、物と同じで使われているのである。寿命の長い人は、目に見えない存在に使われ、その使われ方がおそらく上手いのだろう…と推察される。^^
完




