(86)なんとかしよう!
(72)で、どうにもならない…という話を書いたが、ならば、なんとかしよう! という気分になるというものである。^^ まあ、そうならない甘めの発想をする人は、それはそれでいい訳だが、出来ればアグレッシブ[積極的]に、なんとかしよう! と意気込んで欲しいものだ。^^
新型コロナウイルスが終息した、とある連休中の高速サービスエリアである。今までの鬱屈した気分を晴らそうと、連休中の観光地を目指して賑わいを見せる。そして、多くの旅行者がサービスエリアの駐車場に車を止めている。春先の爽快な風が心地よく流れる中、一人の男が自分の車の前で思案げに腕組みをしている。そこへ、別の旅行者らしき男が車から降りて声をかけた。
「どうされました?」
「いや…実は、うっかりと、車の内鍵をしてしまいまして、弱っとるんです…」
「ははは…渡りに舟、とは、まさに、こういうことを言うんですな。実は私、鍵専門の修理屋なんですよっ!」
「えっ! まさか、そんな偶然がっ!」
「あるんですよ、不思議とっ! それじゃ、なんとかしましょう!」
「有難いっ! なんとかしてくださいっ!」
車の内鍵をしてしまった男は懇願するような眼差しで修理屋の男の顔を窺った。修理屋の男は馴れた手つきで持っていた鞄から幾つかの道具を取り出し、吟味した。
「これだなっ!」
道具が決まったのか、修理屋の男は車のドアの鍵穴にその道具を挿し込み、何やらコチョコチョ・・とした。するとものの見事に、たちまち車の鍵は開いたのである。ドアを開け、修理屋の男は自慢するでなく言った。
「よかったですな…開きました」
「お代はっ!?」
「ははは…そんなもの、結構です。ここでこうしてお会いしたのも何かのご縁でしょう…」
「そうですか? それじゃ、お言葉に甘えて…。あっ! これは、つまらないものですが…」
車の内鍵をした男が手渡したのは新聞に包んだ干し柿だった。
「ああ、どうも…」
鍵の修理屋は有難く新聞包みの干し柿を頂戴した。こんなものっ!…と内心で思わなかったのは流石である。なんとかしよう! は、干し柿etc.に変化するのである。^^
完




