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(50)出来映(できば)え

 どんなものでもそうだが、作るものがあれば、やはり完成したときの出来映(できば)えが気になるものだ。絵、料理、会社の製品etc. 社会で作られるものには公私を含め、様々なものがある。完成度、すなわちその出来映えを甘く捉えるか、辛く捉えるかにより完成されたものの評価が大きく変わってくる。ただ、これには個人的な評価の違いがあり、Aという人は「いや、アレは素晴らしいっ! 私ゃ、今まであんな作品には出会ったことはないっ!」と高く評価したとしても、Bという人は、「いや、アレはひどい。あんな駄作、今まで見たことがないですよっ!」とうそぶくかも知れない。要は、出来映えは、人によって感じ方が違うということになる。^^

 幾度となく登場した猿翁寒山えんおうかんざんの掛け軸が、とある骨董屋こっとうやに掛けられている。

 ふと、通りすがりで店に入った旅人が、その掛け軸に気づいた。

「こ、これはっ!! 寒山先生のっ!!」

「えっ! ああ、これですか。売れませんでねぇ~。もう、他の軸に変えようかと思っとったんですよっ。いやぁ~、このまがい物、ひどい駄作でしょ!?」

 骨董屋の店主は塵払ちりはらいの手帚てぼうきの動きを止めて、そう言った。

「あ、あんたっ! なんという失礼なことをっ! 人間国宝の…」

「ええ、まあねぇ~。似せて書いてはいますが、贋作がんさくですよっ! 贋作っ! 確かに、出来映えはいいんですがな…」

「な、なんということをっ!! か、買いましょう! 幾らですっ!」

「いいんですか? 贋作ですよ?」

 客は、首を縦に幾度となく振った。

「う~ん! そうですか? じゃあ、二千円ばかりももらっときましょうかな」

「ええっ! そ、そんな値でよろしいんですかっ?」

「よろしいもなにも…。お高いですかっ? じゃあ、千円で…」

 客はすでに財布から二千円を出していた。

「い、いいですっ! こ、これ…」

「さいですかっ? …悪いですなぁ~、そいじゃ!」

 店主は二千円を受け取ると、掛け軸を外して梱包こんぽうした。客は満足げにその掛け軸を受け取り、店を去った。

 その三日後である。骨董屋の奥の間でテレビを観ていた店主が腰を抜かした。

『先日、発見された掛け軸は鑑定の結果、間違いなく人間国宝、猿翁寒山の掛け軸と評価されました。今後、国立博物館に寄贈される見込みです』

 画面は、買い求めた客とアナウンサーの姿が映し出されていた。

「…そういや、出来映えは、確かによかったからなぁ~」

 店主はくやしそうに、そうひと言、呟いた。

 出来映えがいいものは、やはり甘い他とは違う辛い何かがあるようである。^^


                  完

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