(18)史実(しじつ)
歴史大河など、歴史時代劇は中高年をしてワクワクさせる放送番組の一つだが、私も、そのワクワクする部類の一人である。^^ さて、その歴史時代劇にとって何が重要なのか? と問えば、それは史実に近く描かれているか否か? という一点に他ならない。むろん、過去の誰も知り得ない時代を描く訳だから、全ての事実を正しく描けようはずもない。古文書を駆使し、どれだけ史実に近く描き切れるか・・ということになる。史実と史実を繋ぎ合わせ、その間の史実を想像を駆使しながら描くのが監督や演出をする人々の手腕であり、冥利に尽きる。ただ、受け手の視聴者が、作品の出来、不出来をどう思うかは、別問題となるが…。^^
とある家庭の居間である。戦国時代劇の映画がテレビ画面を賑わしている。ご主人は小鉢の酒の肴で一杯やりながら真剣に観ていたが、やがて酔いが回ったのかウトウトし出した。そこへ、台所の洗い物を済ませた奥さんが顔を出した。
「またぁ~! …」
点けっぱなしで寝るのがご主人の悪い癖らしく、奥さんは、お冠である。
「… ムニャ、ムニャ … グゥグゥ~ …」
やがてご主人はいい気分で甘く深い眠りへと落ちていった。奥さんはテレビを消そうと一端はリモコンを手にしたが、映画が佳境に入るクライマックスを映し出していたので躊躇い、ソファーに座るとそのまま観始めた。その映画は超有名監督のメガホンによるもので、史実が克明に映し出され、演出の妙も加わっていたからである。奥さんは、バリバリと煎餅を齧りながらお茶を飲み、とうとう最後まで見終えてしまった。そのとき、ご主人が目覚めた。
「… なんだ 終わったか…」
この台詞はご主人の口癖になっていた。奥さんは、『これが史実ね…』と、ふと、思うでなく辛く思った。
史実は、あるときは甘く、またあるときは辛いのである。^^
完




