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四話

部活動見学、2日目。


私と犬丸さんはコンスタント部へと向かった。


「えーっと確か東校舎2階の空き教室って言ってたよね」


…そもそも東校舎ってどれだ?


「なんかこの学校構造がややこしくない?」


「ねー、もっと単純にしてくれたら迷わずにすんだだろうに」


結局どれが東校舎か分からない私たちは全校舎の2階を回ることにした。

とは言っても西校舎、東校舎、北校舎の3つしか無いのだが体育館やジムや部室やらで建物は割と多い。


「これは…体育館?」


犬丸さんが首を傾げた。


「体育館はさっきのだよ。多分柔剣道場かな?」


「これは…なんだろ」


「なんだろね」


そんな事をしているうちに30分近くが経った。





「失礼しまー…あ!鮫崎さん!」


「あら、来たのね」


中から鮫崎さんの声がした。


「もー!東校舎なんて分からないよー!私達は何回も違う教室に入って恥ずかしい思いしたんだよー」


やれやれ、と犬丸さんが犬丸さんが椅子に座り私もそれにならう。


「ようこそ、コンスタント部へ」


「「ん?」」


私と犬丸さんは同時に首を傾げた。


「ここがコンスタント部の部室よ」


何を言っているの?と言わんばかりに鮫崎さんがきょとんとした様子でこちらを見る。


「ええと、部員は?」


「私と貴方達」


「えっと…まだ見学にきただけで」


鮫崎さんはすっと立ち上がると私の方へ歩いてきた。

ぐっと手首を捕まれ壁に押し寄せられる。


「ちょ、鮫崎さん?」


これってエッチなやつだろうか?

顔が近い。


「貴方は入るのよ。コンスタント部についでにそこの子も」


耳元でそう囁かれました。ついでとか言われた犬丸さんが少し不憫だった。

というかその、なんだかエッチだ…


「あ、あの…」


しどろもどろになっていると、犬丸さんが鮫崎さんをひっぺがしてくれました。


「しゃめ崎さん、なんと言うかその…強制は良くないと思うよ?」


噛みながらも犬丸さんは私を庇ってくれました。


「そうね無理矢理は良くないわね。反省反省。さあ、改めてようこそコンスタント部へ」




「いきなりなんだけどコンスタント部って何するところなの?」


鮫崎さんが入れてくれた緑茶を飲みながら、1番気になっていたことを聞いてみた。


「そうね…何をしようかしら。何か案はある?」


「「……」」


私はともかく犬丸さんまでもが言葉を失った。


「そもそも学校公式の部活動なの?」


「非公式に決まってるじゃない」


どうして分かりきったことを聞くの?と言うふうに鮫崎さんは首を傾げた。


「何をするか決まってない上に、部員も居ない。それに名前がコンスタント部だもの」


言われてみればそうだけど…


「え、と。じゃあ どうしてコンスタント部って名前にしたの?」


「語呂が良かったから」


「そっか」


なんとも気まずい沈黙。

チラリと犬丸さんの方を見ると目が合ったがサッと逸らされた。なんか裏切られた感…


「とりあえず今日は体験って事でまた来るね」


そう言って部屋から出ようとした。


ガッ!


ドアが引っかかる。


ガッ!ガッ!


ん?


「ど、どうしよう、開かないんだけど」


そもそも狭い教室なのでドアは一個しかない、窓は2つあるが2階から飛べば骨折は免れないだろう。


「大丈夫よ、鍵がかかっているだけだから」


澄ました様子で答える鮫崎さんに、一体どの辺が大丈夫なのか聞いてみたい。


「何故なら鍵は私が持っているから」


ニッコリと笑った鮫崎さんを見て、コイツは相当ヤバい奴だなあと思った。


「開けてもらえると助かるんだけど」


「もちろんそのつもりよ?でもその前に言うことがあるんじゃない?」


クルクルと鍵を回しながら鮫崎さんは笑った。


「お、お…」


犬丸さんが口を開く。

脅しに屈するのか?じゃあ犬丸さんが屈したら私も屈するとしよう。


「お邪魔しました!」


「なんでやねん!!」


はっ!思わずつっこんでしまった…


鮫崎さんはクスクスと笑った。


「ふふっ、冗談よ。強制はしないわ、気が向いたら入って頂戴」


鮫崎さんは私に鍵を投げた。私は見事にそれを受け取り損ない、鍵を拾う。部屋の中からかける鍵って大丈夫なのだろうか?まさか勝手に改造なんてこと…


「ん?どうかした?」


と鮫崎さん。チラリと見たつもりなのに目が合ってしまった。


「ああ、これ?そうよ、勝手にやったわよ。鍵をかけたのは貴方に壁ドンした時ね」


スルリ、流れるような動作で立ち上がった鮫崎さんは艶めかしい程滑らかな足取りで私の前に立った。


「こんな風に…」


壁ドン再び。


鮫崎さんと私の額が触れる。


つうっ、と壁をついた左手で私の耳をなぞった。


ゾワゾワっと全身の毛が逆立つ。


トンと軽く肩をおされ私は2歩後ずさった。

ん??


壁が無くなってる?二、三秒程してようやく後ろにあったドアがいつの間にか開けられた事に気がついた。


「ふふ、閉じ込めてごめんなさいね。2人とも気をつけてね」


その日初めて鮫崎さんは口を開けて笑った。





鮫崎さんの八重歯、結構鋭かったなあ…


くたくたの状態で家に帰り、今日一日の感想がそれだった。

ちゃんとしろよ私、と思う。


自分の右耳に触れてみる。


なんか…色々凄かったな、鮫崎さん。


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