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二話

「初めまして。一年三組の担任、仏田(ほとけだ)です。担当科目は社会、何か困ったことがあれば相談して下さいね」


仏田先生は貼り付けたような笑みを浮かべ、そんな事を言った。どうでもいい話を聞きながら、この人のあだ名は【ブッダ】だなと思った。


「という訳で初のHR(ホームルーム)はクラス委員を決めたいと思いますけれども…」


「はい!仏田先生!自分、入間(いるま) 間人(あいと)は僭越ながら学級委員長を志願します!」


ブッダの言葉にえらく食い気味に手を上げる人がいた。

メガネ、綺麗な七三分け…真面目かよ


「ほー!威勢がいいね、先生気に入っちゃったよ。学級委員長は彼が立候補するそうだが他に志願者はいるかな?」


いたとしてもこの空気あげられないだろうなあ。

ま、私としては1番嫌な役が埋まってくれたから良かったけれど…


にははは、と心の中で笑う。


「はい。じゃあ学級委員長は入間くんに…」


「はい」


またしても食い気味で誰かが言った。

クラス全員が声のした方をみる。


それにしてもこの状況で手を挙げるとはかなりの猛者だな

……って鮫崎さんっ!?


「おっ!?えーと、そ、それじゃあ立候補者2人は前に来て軽くスピーチをしてもらおうか」


少し慌てた風にブッダが言う。


入間くんと鮫崎さんは立ち上がり2人して教卓の前に立った。


「改めまして、入間 間人です。僕はクラス皆さんの助けになりたく志願しました。助けてもらうことも多くあると思いますが皆さんで協力して良いクラスにしていきたいです」


と入間くん。

なんか、委員長のテンプレのような発言。

今日会って数分の私達の助けになりたいとは…入間くんはマゾヒストなのかもしれない。


「鮫崎です。私は今日会ったばかりの皆さんの役に立ちたいとは思えません。ですが私は内申点が欲しいのでバリバリ仕事をします。どれくらい仕事をするつもりかと言うと残りの委員を全て私が引き受けようと考えています」


と鮫崎さん。

当然のようにザワつくクラス。

鮫崎さんはドマゾなのだろうか?


「あー、鮫崎さん?委員は一人一役やってもらわないとダメだから全部引き受けるってのは出来ないんだ」


頭を掻きながらブッダが口を挟む。


「文面上はどうとでも誤魔化せます。名前を書けば良いだけなので、仕事内容は私が引き受けます」


「やりたい委員があるかも知れんぞ?」


「でしたらやりたくない方の仕事を引き受ける事にします」


「まあ、俺から強制は出来んが…現実的に……うーん」


ブッダは腕を組み、しばらく唸ったが面倒になったのか


「取り敢えず多数決とるぞ皆机に頭伏せて。はい、入間くんに任せたいと思う人ー。はい、鮫崎さんに任せたいと思う人ー」


私は一応鮫崎さんに投票した。

鮫崎さんと仕事を分担してもいいかも知れない。そうすれば近づく口実になる。


「えー、結果はだな…学級委員長は鮫崎さんだ」


ぱちぱちと拍手の音。

すました顔の鮫崎さんとガックリと肩を落とした入間くん。

何故入間くんは肩を落とすほど学級委員長になりたかったのか結構疑問だ。やっぱ内申点とかなのかなあ。


「しかしだ、鮫崎さんは引き受けると言ってくれて居るが各自自分の役は責任を持って自分でやる事。そして俺は進行を鮫崎さんに任せる。入間くん、今回は残念だったが俺はとても嬉しかった。ありがとう」



「ではやりたい委員がある方はいますか?」


鮫崎さんはブッダの代わりに教卓に立ち話し始めた。


「ふむ、皆さん特に意思は無いですね。でしたら私がランダムに選びますので嫌でしたら仰って下さい」


「出席番号1番2番、保健委員。出席番号3番4番、図書委員。出席番号5番6番、体育委員……」


そんな具合に淡々と決めていく鮫崎さん。

いいのかなあ、これ。


「出席番号21番」


とうとう私の番だ。ふと顔をあげると鮫崎と目が合った。


「21番は私の補佐。出席番号22番33番は生活委員……」


えっ?

私は鮫崎の補佐?

犬丸さんも少し驚いた様子で私の方を見てきた。多分私も同じような顔をしているのだろうな、一方鮫崎さんは顔色一つ変えずに淡々と役割を分担している。


まあ、たまたま目があったから補佐にしただけで他意なんて無いのだろうけれど。そもそも私の出席番号なんてしらないか…


「以上で役割分担を終了します。仏田先生、あとはお願いします」


「あ、ああ。分かった、他にこの委員がやりたいと思う人は居るか?」


委員長補佐って事は副委員長ってことだよな…



ちょっとやだな。


「はい」


手を挙げたのはまたしても鮫崎さんだった。


「私やっぱり委員長は辞退します。ですから入間くんにお任せしようと思います」


誰も決して口には出さなかったけれど、多分誰もが心の中でこう叫んだ。



ええええええええ!

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