[7]終わりは始まりを告げて
オラシオンはリノー砂漠をマーフェスに古城に向かってまっすぐに進んでいた。
「現れませんね。」
「ああ。良いことだ。」
さらに進み、バルクットの廃村へ着くと、
「ここから先には行かせない。」
「ついに来たか。カルヴァトーリめ。」
「理由無き侵攻か?ついに戦う覚悟を決めたか?」
「違うね。」
「我々の研究員のアンナ・リーブスを殺したのは貴様らだろう?」
「知らないね。」
「とぼけるな!何の為だ!」
「落ち着いてください総隊長!!」
「つまりそういうことか。だが知らないね。」
「ちっ。いいからそこをどけ!」
バルクットの廃村は一瞬にして戦場となり、大地の色が変わっていった。
「人間なんてぶっ殺す。」
「その威勢、いつまで続くかな?」
「!?」
「なんだその武器。ふはは。きいてねぇなぁぁぁぁ。」
「新型武器の試験を兼ねる??」
「ああ。研究員たちが一生懸命作ったものだ。実戦に導入してみよう。」
「駄目ではないですが……。」
「これを考慮した作戦をお願いするよ。」
「ちなみにどんな武器なんですか?」
「1台二役のサイレル。変形可能で、銃と剣の機能をもち遠近戦どちらもできる。そしてフィカールエ。従来の二倍の射程がある飛距離重視の弓だ。」
「この2つですか。」
「頼んだよ。」
剣で敵に近づき、至近距離で銃を撃つ。予期せぬ所から飛んでくる矢。新型武器は戦術に革新を与えた。
「成功ですね、ジンさん。」
「ああ。あとは殺人事件の真相を確かめるだけだ。奴らの過去を暴くのだ。」
「はい。」
「でも知らないって言ってますよ。」
「知らないふりか、本当に知らないのか。」
「いずれにせよ、ここにいるやつは全員殺して本拠地に向かうぞ。」
「了解!!」
「バルクットがやばいです。」
「想定以上の人数だ。それほど今回は本気なのか?たかが1人の死ぐらいで。」
「変だよなぁ。あっはっは。」
「どうしますか、マスター。」
「構わんよ。サティトに任せよう。」
「では援軍は送らないということで?」
「ああ。彼らにはすまないことをする……。」
ハルト達4人も必死に戦っていた。
「やっぱ本物ってドキドキするな!」
「えぇ。」
「思っているとおりになかなか体が動きません…。」
「でもそんなに強いとは思わないな。」
「うん。ユーリさんのほうが強そう。」
「!!……来たよ!」
「可愛い子。」
「そうだね。」
「食べちゃおうかっ。」
「くっ強い。」
「ハルト!!」
「負けるかぁぁぁ。」
「ぎゃっ!!」
「ガイア!!」
「任せとけ。おりゃぁぁ。」
背後からの連携が成功する。
「あっあっなんてこと……。」
「まだまだぁ!!」
「なんとか勝てましたね。」
「戦場ってこんなもんか。」
ふと周囲を見渡すと、
「死体が沢山。」
「やっぱりカルヴァトーリは殺すべきだ。」
「そうね。」
「必ずこの手で!」
そこには何か固い意志が感じられた。
「どうしますかサティトさん?」
「面倒だな本当に。でも、ここで止めなければ本拠地に行かれてしまう。新しい武器の導入をみるにかなり本気のようだ。」
「殺人事件がなんだか言っていましたが?」
「知らないことだ。守備軍以外の人間がやったことだろう。」
「今のところはこちらが劣勢です。」
「援軍は?」
「それが……しないそうです。」
「なんだと?」
「できるだけ耐えてくれ、と。」
「くそっ。この人数でオラシオン軍を抑えられるものか!」
「第三戦線が落とされました!!こちらにきます……!!」
「ったくもう!やってやりますよ!」
「もうあとは無いぞ、カルヴァトーリ。」
「嫌だなぁ。これは本気じゃ無いよ。お前たちでは本拠地は落とせない。」
「すぐに黙らせてやる。」
強烈な魔術が降り注ぐ。
「えげつないねぇ。たかが1人の死で。」
「たかが1人だと?」
「そうさ。この世界では今この瞬間も誰かが死んでいる。その一つ一つを嘆いていたらきりがないじゃないか。」
「だまれ!!」
「おもしろい。この私が本気で相手をしよう。」
2人の激戦が始まった。
「とりつくしまもないですね。」
「作戦も何もあったものではないな。」
「あの人を怒らせちゃいけないね……。」
「本気になると周りが見えなくなるのよね、あの人は。」
「セルジアット!」
「他の所は全て墜としたみたい。」
「そうですか。」
「ちょっくら手伝ってあげますか。」
「でも…。」
「ふふっ。私達の付き合いの長さ、なめないでくれる?」
1人歩いて行き、2人から離れた高台へ。
「何してるんです?」
「バカ、あの人は弓術だよ。」
「ああ、そうか。」
2人は目配せをした。
「いくよ。」
「お前を殺す……!!!」
飛び出したところをジンが足止めする。
「ちっ。」
「……止まっているなら外さない。」
ユーリの攻撃が命中する。
「くそがぁぁぁぁ。」
叫びながら、灰になって消えた。
「やりましたね。」
「ああ。この場所を新拠点にして、敵の本拠地に向かうぞ!」
「はい。」
「物資を手配しろ。」
数日とたたないうちに司令部支局を含めた拠点が完成した。
「これからですね。」
「おうよ。」
「真実を知りにいこう。」
「バルクットが奴らの拠点に…!」
「割と近いな。」
「やはりサティトらだけでは無理だったか。」
「どうして援軍を送らなかったんですか?」
「力を温存したかったのだ。すまないとは思っている。サティトは嘘をつくのは苦手だったから事件のことも…。」
「マスター…。」
「まあいい。そう困ることではない。」
「ですが再び攻めてくるようですし……。」
「もう実行しちゃおうぜぇ?」
「ヴォルネジア!!」
「十分すぎるだろぉ??」
「……確かに、そうとも言える。」
「これから本格的になると考えると…。」
「分かった。」
「!!」
「彼女を回収する。」
「ということは……。」
「戦いだぁ!ふぅ。イエーイ!!」
「うるさい。」
「エルトレインを向かわせる。バルクットにいるのだろう?」
「はい。確かに。」
「いいな、エルトレイン?」
「かしこまりました!!」
「他のものは侵攻、そしてその後の戦いに備えよ。」
「はっ。」
「ついに始まるのだな。」
「待ってましたぁ!!」
(時は来たのだ。本当の我々を得るために……!)
静かに、そして早く悲劇の幕は上がっていった。