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[5]移りゆく時の中で

「へえ。これが内乱の資料ですか。」

「うん。さぁて読んでいこうかな。」

「聞かせて聞かせて!」

「はい。内乱はオラシオンができてから8年後に起こります。」



 オラシオンができてから8年、オラシオンは壁にぶつかった。資金不足である。当初は他国からの支援があったが、それだけではたりなかった。また政府との隔たりによって、なかなか予算がまわらなかった。

 あまりの要求に耐えかねた政府はしぶしぶ税金を上げることを決めた。また、オラシオンでは国民に武器を作らせるという案がでた。

「早急にヴァルトレアを倒さなくてはならん。」

「そのために国民の手を借りると?」

「そうだ。自国の危機なのだから、分かってもらおう。」

「だが……。」

「得るために犠牲はつきものだ。しかたあるまい。」

 最終的に国内の有力な技師に武器生産を手伝わさせることになった。しかし、増税の不満は最悪の結果をもたらしてしまう。

「最近オラシオンの人たちは欲張ってない?」

「そうよ!私達のお金を使ってるくせに。」

「国民に武器生産を無理強いしたって聞いたぜ。」

「まぁ酷い。」

「全然私達は得をしていないわ。」

「反乱をおこそうよ!」

「あの人たちに国民の不満をぶつけなければ!」

「力を合わせよう。」

「そうだ。」

「そうね。剣を持ちましょう!」

「腐った政治を止めよう。」

「貴族なんかに負けるものか。」

 こうして国民たちは一致団結して、オラシオンに対抗することを決めた。国の防衛のためとはいえ、国民をないがしろにするようなことをしてはならなかったのだ。

「総帥!!」

「そんなに慌てて何事だ?」

「国民たちから声明文が届きました。」

「声明文だと?」

「はい。『我々はオラシオンの政策に強く反対の意を示す。国民から大量の税金を巻き上げ、我々の生活より未知の生命体討伐を優先するのである。いずれ不満の高まりを止めることができなくなるだろう。』と書いてあります。」

「不満だと?守ってやっているというのに。」

「そうですよ。一刻も早くヴァルトレアを倒さなくてはならないのだ。」

「気にしなくてよい。放っておけ。」

「かしこまりました。」

 国民の声明文は無視され、状況が改善されることはなかった。そのため、状況は悪化していった。



「オラシオンは国民のためにあるべき、という考えね。」

「難しいね。」

「国家の防衛のために国民を犠牲にか。戦争ならよくあることだろ?」

「でも戦争ではないんだよ。国民とオラシオンと政府、それぞれが違う方向を見ていたから内乱は起こったのかもな。」

「そうだね。」


 声明文を無視したオラシオンに国民はさらなる不満を募らせる。

「平民だから馬鹿にしてるのよ。」

 しかし、国民たちには統率者がいなかった。そんなあるとき1人の男が立ち上がった。

「国民たちよ!私はシェトル・ハーヴァンだ。私もこの生活には耐えかねている。言葉で駄目なら力で示すのだ。軍出身の私が皆を勝利に導こう!」

 彼は力強い演説をし続け、国民軍のリーダーとなった。シェトルは国民の意見を幅広く聞き、着々と計画を立てていった。


 そのころヴァルトレアでは強化が進められていた。

「国民が暴動を起こすつもりみたいだぜぇ?」

「暴動?」

「そのようですね。オラシオンの雑政策に嫌気がさしたようですね。内乱の日は近いですよ。」

「攻めるなら今だろ。分裂しているろころに突っ込めば……。」

「いや、いかん。」

「どうしてですか?」

「面白いからだ。この茶番がどうなるか気にならないか?力を合わせるもの同士が分裂。感情とやらはずいぶん迷惑なものだな。ははっ。」

「しかし今攻めるべきという声も多いのです。」

「うーむ。無視してはいかんことは分かっておる。しかし、国民が強くなることは我らにとっても脅威になる。」

「なるほど。それには納得できます。」



「内乱中にヴァルトレアの侵攻は無かったの?」

「その記録はないね。」

「変だな。ユーリさんの話を聞いても、ヴァルトレアは積極的ではないように思えてくる。」

「そうだねぇ……。」

「ここで攻めてきてたら大惨事だったね。」

「うん。」

「ヴァルトレアって結局何がしたいんだろう?」



 そして遂にその日は来てしまった。声明文から11日後、国民軍はオラシオン基地と王城へ同時に2カ所に攻めていった。

「我々の声を届けるのだ、愚かな貴族どもへ!」

 国民はオラシオンの武器を作らず、多くの剣、銃、爆弾を作成していた。結果だけを求め状況を確認していなかったオラシオンにとってこのことは寝耳に水だった。

「国民が暴動を起こしました!」

「遂に来たか。」

「だが我々が負けると思うか?こちらは毎日未知の生命体と戦う訓練をしている。人間には負けんだろう。」

「とりあえず、総動員で戦い、黙らせよう。」

「了解です。」

 戦場は国中の至るとことに広がっていった。初めのうちはオラシオン軍の優勢であった。

「そこら中に武器を持ったやつがいるぜ。」

「ああ。オラシオンの崇高さを知らない愚か者どもめ。」

「本当にこれ、使っていいのか?」

「当たり前だ。総帥からの指示だ。」

 オラシオン軍はカルヴァトーリ用の武器を使っていた。一刻も早く暴動を収束させなければ、ヴァルトレアにつけ込まれると考えていたからだ。しかし国民も屈することなく戦い続けた。

 内乱は長期化した。そうなると不利になるのはオラシオン軍であった。なぜなら彼らには国民の力を得ずに食糧を十分に得る方法が無かったからだ。

「司令官殿!食糧の不足により兵士のやる気が減退しています。」

「何だと?」

「まずいな。このままでは自軍内でも反乱が起きかねない。ここまでか?」

「しかたあるまい。」

「総帥?」

「降伏だ。ただし条件付きのな。」

「お言葉ですが総帥、ここで降伏するのは我々の非を認めることになります。私は納得できません。」

「しかしこのままでは全員の首をもっていかれるぞ?少しでも生き残り我々の意思を伝承させるのだ。彼らの恐ろしさを、戦争の恐ろしさを。」

 話し合いが行われ開始から1ヶ月以上たった後、オラシオン側の降伏で内乱は終結した。

「我々の勝利だ!」

「重税から解放されるぞ!」

 歓喜の声が上がる中、

「これから我々はどうするべきか?」

と悩む男がいた。リン・ストランドである。彼は経営者であり、とても頭の切れる人間だった。

「このままではいけない。組織を改革せねば!!」

 ストランドは国民たちに、

「新しい組織が必要である。」

と訴えかけ、彼のもとに多くの協力者が集まった。協力者とともに元政府官らやオラシオン軍の処罰、新政府の話し合いが行われた。

「降伏軍は"我々の意思を受け継ぐこと”を条件に政権を引き渡すと言っています。」

「意思だと?」

「はい。大まかに言えば、オラシオンを無くしてはならない、改革せよ、というところでしょう。」

「ヴァルトレアは今後も脅威になり続けるだろう。よし。オラシオンの解体はしない。彼らは国外に追放しろ。」

 終結翌日、ストランドはオラシオン第2代総帥になり、オラシオンが政権を担うことを宣言した。貴族を排除し、総帥とは別に(リード)を任命し権力集中をしなかった。



「これが内乱の概要です。」

「なるほどね。だから政権軍事組織なのね。」

「はい。リード副官ターバス、議員が5年に一度選挙で選ばれます。オラシオン軍とは完全に別行動をし、お互いに干渉しすぎないようにしつつもいざとなれば協力し安全を守る仕組みがあります。」

「そういやいつ今の総帥に変わったんだ?」

「ええと確か今から17年前ぐらいに資金横領や職権乱用により、失脚して、軍の指揮官であった現総帥ヴァン・リーエンスに変わったはずです。」

「国民のために立ち上がった人なのにそんなことを……。」

「人の心は移りやすいからな。」

「権力を手にした人間はろくなことをしない、なんて言葉もあるくらいだしね。」

「さて、話はここまでにして食堂にいきましょう。」

「お、もうそんな時間か。」

「今日のご飯はなんだろうね!」

 彼らは食堂にむかい、楽しい食事の時間を過ごしていた。そんな彼らとは違い慌ただしい人がいた。

「急がないと……明日までに間に合わないわ。また怒られちゃう。徹夜で頑張れば……ってうわっ。」

 何もないところで彼女は転んだ。

「大丈夫?お姉さん?」

「ん?ああ大丈夫大丈夫。」

「白衣ってことは研究者さんよね。」

「あはは。まあそうね。慌てすぎたわ。君たち訓練生よね。頑張ってね。」

「何をそんなに急いでるの?」

「いやぁ報告資料を明日までに作らないといけなくてね。大発見があるかもしれないわよ。」

「へぇすごいや。」

「気をつけてくださいね。」

「ありがとう~~~。」

 再び走りながら去って行った。

(未だ確証はないけれど本当なら大変だわ。)

「そんなに急いでどうしたんだい、アンナ?」

「明日には分かりますって。」

「そうか。無理しすぎるなよ。」

「はい。」

 彼女は机に向かい何かを調べ始めたのだった。


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