[4]歯車は動き、花は散る
「オラシオンができてから、この国はだいぶ変わったわ。沢山のの隊員が集まるようになった。さっきハルトが言っていたように、侵攻で傷を負った子供たちの志願が多かったわ。」
「やり返すため?」
「そうね。」
「そして君たちが嫌々やっている勉学を取り入れるようになった。」
「知識って必要?」
「元王はこう言われたそうよ。無知より恐ろしいものはないいい、と。知らないが故に、サーヴノア王国は1度滅びかけたのだから。」
「そうですね。」
「でも知っていることばかりだし、俺の知っていることと違うこともあるんだぜ?」
「ハルトに同感です。」
「確かにねぇ。」
(こいつらよっぽど嫌いなんだな。)
「常なるものは無し。」
「へ?」
「世界は変わっていくもの。そしてゆがめられるもの。」
「ゆがむ?」
「ええ。その時、その場所で信じられるものは違うの。だってそうでしょう?侵攻をした側とされた側で同じ歴史を語るかしら?」
「なるほどね。」
「事は多面体。1つでは無い。答えなど無い。自分の知っていることと違ってもそれも事実だと思いなさい。」
「へーい。」
「頑張ってオラシオンは強くなったんだぁ。」
「そういやヴァルトレアは今、何してんだぁ?」
「長い時が過ぎましたね、マスター。」
「ああ。」
「サジットアの状況は?」
「変わらないよ。本当にあの子は出来る子だ。」
「時は近いかぁ??」
「確実に近づいている。」
「楽しみだなぁ。」
「彼らは何もしない我らを何と思うだろうか。」
「つかの間の平和を楽しんでいるんじゃないの?」
「愚かな人間どもよ、平和に酔っていけ。光を強くせよ。闇を強くせよ。」
「その時が楽しみですね。」
「オラシオンは力をつけた。大きくなった。簡単にはいかないな。面白そうだ、ははっ。」
「平和は崩れるものですから。」
「さあね?こちらでも一生懸命調べているようだけど、なかなか情報が手に入らないみたい。」
「戦いはもうない?」
「それは……ないと思うわ。」
「どうして?」
「生きている限り、戦い、喰い食われて、滅び栄えることを止めることはできないでしょう。まだ長い戦争の途中。何としても勝たなくては!」
「俺もまけねーぞー!」
「そのためにも強くならなきゃね。」
「そうね。」
「ヴァルトレアの殲滅に必要なことは、知ること、強くなること。そこには必ず若い者の力が必要になる。」
「そうなんですか?」
「オラシオンにずっと長くいる人のほうが強いじゃないですか?私達まだまだひよっこですよ。」
「強さ=勝ちじゃないのよ、ジェイナ。」
「?」
「いつか分かるときがくるわ。」
「ときどき話を濁される。もやもやすんなぁ。」
「なんでもかんでも人に頼らない!自分の手で得ることに意味がある。実をもって感じることが血となり肉となるのだから。」
「哲学っぽい。」
「深いね、人生って。」
「なんだかややこしいことになったけど、ま、明日からも頑張りなさい、ひよっこさん!」
「おう!誰にも負けないぜ。」
「それじゃあ、もう遅いし今日はここまでにしましょう。せっかくだし、その本もちゃんと読むといいわ。」
「はーい。」
「おやすみなさい。」
ユーリは部屋を去った。4人は速やかに明日に備えベットにむかった。
「おい、サディ。寝ないのか?」
「この本面白くって止まらない。」
「話してもらったのに、それ以上ってそこにあるのか?」
「分かんないけど、隅々まで読んでみたい。」
「そうか…でも、明日も早ぇしもう寝ろ!」
「うん。そうする。」
「あーあ、すっかり話し込んじゃったわ。仕事が溜まってるに違いないわ……。」
窓の外の月がとても綺麗だった。
「欠けていても綺麗。羨ましいわ。」
「あ!見つけましたよ、ユーリさん。」
(やっぱり仕事があったか。)
「分かった、分かった。今行く。」
そうして彼らの夜はふけていく。
「ん?そういえばガイアの宿題はどうなったのかしら?」
翌朝。
「んあーーーー」
「ちょっとぉ。うるさい。なんなの?」
「宿題…終わってない。」
「あ。」
「あ?」
「あ……。」
「……っわたしもじゃん!話に夢中で忘れてた。」
「宿題あったのか?」
「あんたは寝ててきいてなかったでしょうね!」
「うげぇ……。」
「今日の朝もドタバタだね。」
嵐のような訓練も終わり、昼になった。
「宿題のせいで酷い目にあった。」
「自業自得。」
「サディは何でその本を持ってるの?」
「読み終えたから返そうと思って。」
「早いな。」
「さっすが読書バカだぜ。」
「もぉ!バカにしないでよぉ。」
「あ!ユーリさんだ。おーい。」
手を振る影に気付いたようで小さく優しく振り返した。
「こんにちは、ね。」
「おーす。」
「元気そうでなにより。」
「あの!質問、いいでしょうか?」
突然の事に静まる一同。
「なにかしら、サディ?」
「この本を読んで知りたいことができて…。」
「そうなのね。熱心でよろしい。」
優しく微笑んだ。
「内乱について知りたいんです。」
「内乱?そういえば今日の授業でちょっといっていたわ。」
「そうね……悲しいことに国内で戦争が起こったの。」
「どうして?」
(また、どうして、ね。)
「新しくできたばかりのオラシオンには問題がおおかったのよ。」「ふーん。」
「でも内乱がなければ今のオラシオンはないのよ?」
「そうなんですか?」
「ええ。内乱によって貴族の権力が落ち、平民から選ばれた総帥になった。また。政治的な力を持つようになったわ。」
「内乱の勝敗が違っていたら……。」
「もっと違う場所になっていただろうな。」
「争いって悪いイメージが強いけど、結果によっちゃ未来をよくすることもあるんだな。」
「その通り!で、サディの知りたい事ってどんなこと?」
「内乱がおきた詳しい理由とか、戦いの様子とか。」
「そんなん知ってどうするんだよ?」
「歴史は過去を繰り返さないために学ぶんです!」
「お、おう。」
「分かったわ。あとで本を貸すわ。」
「ありがとうございます。」
午後の訓練後、サディは『内部戦争の書』を受け取り、足下をはずませながら部屋へと向かったのだった。