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[14]私はあなたはどこから来たの

「ただいまより第19回入隊式を始めます。」

(ついに来てしまったわ。本当に大丈夫なのかしら?)

 いつも通りの春であったが、落ち着かなかった。

(弱気になっては駄目!私はユーリティア。ここのトップを目指すのよ。)

 入隊式後、食堂では新入隊員の交流会が開かれていた。

(誰かの信用を獲得できるといいんだけど……。)

「おい!」

「?」

「よろしくな!」

「私に言ってる?」

「そうだが?俺はジン・リトール。同じ隊だ。」

「私はユーリティア・セルジアット。よろしく。」

「俺たち3人の隊らしいんだけどもう1人知らないか?」

「さぁ?」

「僕だよ。よろしく。」

「うわぁ脅かすなよ。」

「2人の自己紹介が聞こえてね。アルシャ・オリヴィスだ。よろしく。」

「おう!よろしく。少し話そうぜ。」

 3人は近くのテーブルに座った。

「みんな誕生日はいつ?僕はお祝いが好きなんだ。」

「7月7日。」

「俺は9月9日。」

「そうなの?すごいね。」

「何が?」

「僕が8月8日だからみんなぞろ目で一月違いなんだね。」

「運命を感じちゃうわね。」

「俺は剣術ソルティだが2人は?」

「私は弓術リリェ。」

「僕は槍術コルトーラ。」

「じゃあ俺とアルシャが前衛、ユーリティアが援護だな。」

「ユーリでいいわ。」

「僕も!アルって呼んで!」

「しっかし隊員も増えたもんだな。」

「ああ。それほど憎きあいつらを倒したいやつが増えたってことさ。」

「憎いの?」

「もちろんだ。俺は砂漠付近の海の街エネス出身だが、昔あいつらの侵攻で家族を殺された。絶対に許さない。」

「ふーん。そういう理由の人もいるよね。僕はヒーローってのに憧れてさ。」

「ヒーロー?」

「そ。悪を倒すって格好いいじゃん?」

「変なやつ。おまえは、ユーリ?」

「えっと…。」

(なんて答えればいいのかしら?)

「理由がないのか?」

「強いて言えば、地元を離れたくて。」

「は?」

「わたしはオーラット出身だ。厳しい環境だから労働も辛くてね。貴重な労働力は逃がさないって感じなんだけど、オラシオンに入ると言ったら誰も止めなかったわ。」

「こっちに来てみてどう?」

「豊かな場所だと思ったわ。」

「2人は憎くはないか?」

「どちらかと言えばYESかも。僕は南端に住んでたから脅威を肌で感じることはなかったからね。」

「ユーリは?」

(どうって言われましても……。)

「悩むことか?」

(答えにくいなぁ。)

「そうでもないってことかよ。そんなんで大丈夫か?」

「平気よ。やる気はあるもの。でも憎んではいない。」

「なんで?」

「私の街の周りにもヴァルトレアの拠点があったけど1度たりとも襲ってこなかった。こちらが刺激しなければ何も……。」

「もういい。部屋に戻ろう。」

 立ち上がり、早足で歩いて行く。

「まってよ~。」

「……。」


 部屋の中でも黙っていた。

「何なの本当に。気にくわないから無視なんて幼稚ねぇ。」

「ちょっと僕にも分かんないよ。」

 2人は顔を見合わせて笑った。

「あなたとは少なくとも仲良くできそう。」

「そうだね。でもチームだから……。」

「あの頑固さんを何とかしないと。でも嘘ついたってしょうがないし。」

「うーん。」


 距離が縮まらないまま時間は過ぎていった。

「本当にどうしましょうね。」

「うーん……。」

(上手くいかないと困るのよ。)

「これから連携をするならなおさらね。」

「とりあえず話し合おう?」

「え?あの頭の固い人と?」

「僕らお互いを知らなすぎるんだよ。」

「?」

「とりあえず今日の夜!」

「……分かったわ。」

 その日の夜久々に話した。

「ねぇ教えて、いったいどうしてそんなに怒っているの?」

「……。」

「言ってくれなきゃ……。」

「俺は!」

 言葉を遮って言った。

「生半可なやつが大嫌いだ。」

「生半可?」

「ヒーローになりたいとか、地元を離れたいとか、ふざけやがって!」

「……。」

「あいつらは死ぬべき存在だ。この国に必要ない。人を殺して言い理由なんてどこにもない。」

「それは私達も同じじゃないかしら?」

「ユーリ!?」

「何だと?」

「やられたらやり返す、そんなの馬鹿の考えること。」

「ちょっとちょっと。」

「だれも何かを殺していいとは許されていない。生きるための喰う食われてを除いてね。」

「あいつらは俺の家族を!仲間を!殺される理由なんて……。」

「つまりは私情でしょ?それを他人ぶつけないでくれる?」

「ユーリ、言い方って言うのが……。」

「てめぇ。」

「その怒りはどうぞカルヴァトーリに。」

「だいたいたいなぁ!」

「まぁ私も悪かったわ。」

「!?」

「アルに言われてはっとなったわ。”互いを知らなさすぎる”て。私達全然違うところから来たんだもの。」

「うん。僕らも意地を張りすぎた。ジンにとってふざけているように見えても気持ちは負けないつもり。」

「お前ら……。」

「無理に、とは言わないけれどもう少し歩み寄らない?」

「……。」

 黙ったまま立ち去ってしまった。

「失敗?」

「さぁね。」

「でも焦ったよ。あまりにけんか腰だから。」

「あいつはお子ちゃまなのよ。」

「え?」

「気に入らないとすぐ怒る。」

「でも……。」

「実力はあるよね。」

「うん。」

(今時の若者らしい。)


「本当にあいつら何なんだ!」

「どうしたの?」

「うわっ。」

「怒っているみたいだけど?」

「部屋の奴らが!」

「上手くいっていないの?」

「まっまぁ……はい。」

「いつまで一緒かなんて分からないのよ?」

「えっ?」

「明日にはいないかも。」

「……。」

「戦場の仲間なんだから一瞬一瞬を大事にしなきゃ。」

「今を大事に?」

「友達をよく見てごらん?一時の感情で視野が狭くなってない?いいところが見えてくるはずだわ。」

「良い……ところ……」



(2人のいいところ。)

「アル、今のはね……。」

「ああ!そうだね。そうしよう。どう思うジン?」

「……アルはいつも優しい。」

「えええ!?何?」

「周りをよく見ることができる。ユーリははっきりとしている。」

「悪い?」

「でも他人の意見をきちんと聞ける。」

「何なの?」

「……おれも悪かった。」

「えっっ?」

「自分の意見を押しつけすぎた。」

「ふんっ。分かればいいのよ。」

「ユーリ……(汗)。」

「なぁ。」

「ん?」

「本当に憎くないのか?」

「?」

「戦場で臆病になったりしないか?」

「平気よ。」

「逃げるなんて……。」

「ははっ冗談でしょう?」

(でもなんかが引っかかる感じがするんだよなぁ。)



 その日の夜中。

「あいつ以外と鋭い。気をつけよう。……繋がった。」

『順調かい?』

「ええまぁ。」

『情報はとても役に立つよ。ありがとう。』

「それはよかった。」

『困っていることはないかい?』

「そうね……ばれないかはまだ心配。」

『そうか。』

「ときどき返答に困っちゃって。」

『分かった。何か対策をしよう。』

「ありがとう。」

『ではまた。』

「ええ。」

 部屋に戻ろうと歩いていると、

「おまえさ、」

「ユーリよ。」

「ときどき夜中に消えるよなぁ。何してんだ?」

「あんまり人の事情に首を突っ込まないでくれる?ジンだって嫌でしょう?」

「何をしてるんだ?」

「話を聞いちゃいないわね。はぁ。親よ。親に連絡してるの。」

「親から?いいのか?怒られるぞ?」

「だから夜中にやってるんじゃない。真面目にやってるか?だって。まだ連れ戻す気でいるのかしら?」

「……そんなに怖い親なのか?」

「ええ。早く寝ましょう。」

「……ああ。」

(まだ得体の知れない感じが抜けない……。)

 2人はベッドに入った。 

(まずいなこの人。正体がばれる……!) 


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