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 初めは誰もが驚異的な能力に歓喜していた。

「すごいぞ!」

「どんな武器より強く扱いやすい。」

 訓練は順調に見えた。しかし、

「うっ……ぐぁ。やめろ。」

「うるさいなぁ。」

「おい!訓練だぞ!」

「誰がお前らの言うことを聞くかよ!」

「暴れてやる。」

「おい!撃て!」

「はっ。」

 

「なんだ。大丈夫じゃないか。」

「ちょっと痛いな。」

 魂人は魔物の力で強くなっていたのだ。

「気にせずすすめ!」

「ま、待て!」

「嫌だね。」

「仲間の恨み、ここで晴らす!」

 訓練は王政軍側に多大な犠牲を出した。

「どういうことだ!」

「すみません……従わないとは思っておらず。」

「やはり汚れた種族では駄目だったか。」

「はい……。」

「今はどうしている?」

「マーフェスの結界内に閉じ込めている。」

「殺せ!」

「はい?」

「野放しにしていたら国が滅びる。」

「しかし、銃で撃っても死なないとなると……。」

「魔術を使えばいいだろう。」

「はぁ……。」

「期待外れであったよ。」


「殺す?そんなことできるか。せっかく……。」

「しかしどうすれば……。」

「逆をすればいい。簡単だ。」

「逆?」

「元は普通の人間だからな。」

「何をすればいいでしょうか?」

「そうだな……。」


「殺される?」

「あぁ。」

「それはまたどうして。」

「扱えなかったからだ。」

「死なないこと?」

「それもあるだろうが、兵器として思い通りにならなかったから捨てるのだろう。」

「なんて身勝手な。」

「なりたくてなったんじゃない。」

「始めからただの実験だったのだ。融合させる人がいなかった。だから国の発展を妨げる我々を利用した。」

「酷い!」

「捨てる前提だったのか?」

「いや、期待はしていただろう。兵器として使えることを。」

「思い通りになる我々ではない。」

「皆、よく聞け。」

「はい!」

「このままでは殺されてしまう。……だから戦おう。」

「戦う?」

「力を合わせれば必ず勝てる。」

「戦いかぁ。楽しそうだなぁ。」

「幼い者や、年老いた者もいるが、若者を中心に反乱を起こす。」

「どうやって殺すかが問題だ。」

「僕が眠らせるよ。」

「どういうことだ?」

「僕の光でできる。」

「でかした、エル!」

「よし、それを基軸に作戦を練る。」

「ここにいる皆で必ず自由を手に入れる!!」


「準備が整いました。」

「……よし。執り行おう。」

「非常に残念だ。」

「抜いた魂はどうします?」

「……今度は機械に入れてみるか……。」

「おまえがハーメルンか。」

「そうだが?」

「なんてことをしてくれた!」

「黙れ!国の厄介者が!お前らがいなくなったら国の発展は……。」

「それはない。」

「何を言う?」

「命を駒のように扱う者がまともな国が作れるとは思えない。」

「お前……。」

「言わせておけ。もうじき死ぬのだから。」

「……。」

「焼け死ね!」

 魔術の炎を入れるため結界に隙間ができた。

「エルトレイン、行け!」

「分かった。」

「何をする。」

「なんだ…?急に…眠気が…。」

「よし!行くぞ!」

 あっという間に研究者たちは捕らえられた。

「どうしますか?」

「やっやめろ。悪かったって。」

「悪かった?」

「そんな言葉で済むことではない。」

「どれだけの家族が死んだと思っている。」

「命の重みを知れ!」

「私が死ねばこの国の発展が……。」

「構わん。」

「お前たちは素晴らしい力を持っている。正しく使えば世界征服もできるぞ!思い直してくれ!」

「いらんな。」

「へ?」

「ただ毎日の平和があれば、それだけで人は生きられる。」

「……。」

「罪なき者を殺した、その行為は許されない。」

「嫌だぁ死にたくない…………。」

「これでもう犠牲は出ない。」

「自らの信念を持つことは悪では無い。しかし他人を犠牲にしてはいけない。傷つけてはならない。」

「そうだな……。」

「他の研究員も殺したぜぇ。」

「ありがとう、ヴォルネジア。」

「仲間の恨みをどうにかしてこの国に……。」

「私達は本当は何なんだろうな?」

「あいつらは”魂人みたまびと”って言っていたな。」

「センスねぇなぁ。」

「うーん。」

「カルヴァトーリ。」

「何だって?」

「それはどういう?」

「サゼル民族に伝わる言葉を知っているか?」

「なんとなく?」

「その言葉で、”盲目の戦士”という意味だ。」

「盲目?」

「格好いい!」

「自然とは、」

「?」

「世界とはもっと美しいはずだ。」

「……。」

「我々はもう世界を美しいとは思えない。目に映るのは人間の醜い欲望、死への恐怖……。我々の世界を美しいと思う心を返しておくれ。」

「世界の美しさ……。」

「そんな気持ち、忘れていた。」

「あまりの苦痛に人間の体とともに心も捨ててしまったのだろうか。」

「だから盲目、なのね。」

「こんな世界、滅びればいい。」


「研究者たちが……!」

「何事だ!」

「あれを殺すのに失敗したようです。」

「何だと?」

「見に行ったら誰もいなかったんです。」

「それほどの力があったいうことか。」

「いかがいたしましょう?」

「うーむ。王政軍では歯が立たないことは、この前の訓練で分かっている。」

「では……。」

「打つ手無しかもしれん。」

「!」

「国を滅ぼそうとしてくるでしょうか?」

「分からん。」

「何としてでも止めなくては。」

「他国に行かれては……どうしてくれよう。」

 一人の人間の愚かな野望は平和に影を落としていった。



「困るくらいなら始めからやらなければいいのに。」

「お前たちに、そんな過去が……!」

「無責任よね、本当に。」

「でも……。」

「でももだってもないわ。仕方ない選択よ。」

「お前らがしていることも同じじゃないか!」

「……。」

「罪のない人を殺して、挙げ句の果てに国を滅ぼそうとするの?」

「そうかもね。ふふっ。」

「間違っている!」

「何が?」

「やられたら、同じようにやり返すなんて。」

「どうして?」

「……何も生まないじゃないか!同じシナリオを繰り返すだけだ。」

「……言うとおりかもしれない。」

「えっ……?」

「でもね、動き出した針はもう止められない。」

「針?」

「私達が、カルヴァトーリに、人間を辞めたときからこうなることは決まっていた。」

「ずっとこの日を待っていた!」

「じゃあ、ヴァルトレアってなんなのさ?」

「?」

「そのとき滅ぼしてもよかったじゃないか。」

「ハルト!なんてことを言い出すの!」

「……。」

 戸惑いながらもどこか覚悟を決めたようだった。

「更なる苦痛を与えるために、我々は”待つ”ことを決めた。」

「どういうことだ?」

 優しくも不気味な風があたりには吹いていた。

「教えましょう。我々の目的を!」


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