[10]消えない痛みを残して
「ねぇママ?」
「何かしら?」
「どうなっちゃうの、わたし?」
「きっと大丈夫。神が我々を救ってくれる。」
「早くでろ!」
「やめてくれぇ。死にたくない!」
「こわいよ…うう。」
「大丈夫よ。1人じゃない。」
「セイラ。」
(何が起こるの??)
「うがぁぁおぉ。」
「順調だ。」
「うっ……ぐぁぁぁ……。」
「……また駄目か。」
「本当に成功するんですか?」
「黙っておれ!次だ、次!」
「お前が考えたのか!」
「ん?面白いのが来たな。」
「今すぐ止めるんだ!」
「嫌だね。」
「連れて行かれたものは誰ひとりとして帰ってこない。」
「ひひっ。魂の融合さ。サゼルのお偉いさん。」
「いいかげんに……うぐっ。」
「こいつは面白そうだ。」
「ぐぁぁ。」
(息が…苦しい。意識が持って行かれる。)
「ははは。面白い。民たちにこの姿を見せてやりたいな。」
(今までの民たちはこんな思いを……。苦しみながら死んでいったのか。私は負けん。民を導くものは、最も強くなければ。)
「耐えられるかなぁ???」
(苦しい……。)
『お前は生きたいか?』
(誰だ?)
『私はこの魂の魔竜。我はあのものに捕らえられてしまった。』
(魔竜??)
『もう一度問う。人間よ。生きたいか?』
(もちろんだ。民を守るためにここで死ぬわけにはいけない。)
『お前の体はとても脆い。力を正しく使うのならば我の力を授けよう。』
(正しく使う?)
『まだ生きられるなら何がしたい?』
(民を、家族を救い、人々へこの痛みを思い知らせよう。)
『面白い。その野望、手伝ってあげよう。強いものよ!』
(ありがとう。)
「んんっ!?」
「…生きている。」
「せ……成功だ!」
「ついにやりましたね!ハーメルン博士!」
「ああ。やはり族長は違うね。」
「何が望みだ、ハーメルン?」
「お前は魂人だ。この国の兵士として戦うのだ!」
「兵士だと?」
「魔の力を持つもの……いひひぃ。最強だなあ、ははっ。」
「何を言っている?」
「あの部屋へ。」
「はっ。」
「次を連れてこい。成功することは分かった。」
「もう止めるんだ!!!」
「まだまだ人間はいるからなぁぁ。何人できるかなぁ。」
「やめろ……。」
「セイラ。」
「何?エルトレイン?」
「殺されちゃうの?」
「……分からない……。」
「次はどうしますか?」
「そうだな……そこの女!」
「私?」
「来い。」
「待って!行かないで!」
「大丈夫。必ず帰るから。」
長い廊下を行くと不気味な部屋に着いた。
「女か。」
「だから何?」
「いや、耐えられるかなと。」
「耐えられる?」
「楽しみだ。」
長い苦しみのあと、目が覚めた。
「おめでとう。合格だ。ふふっ。連れて行け。」
「何をした!!」
「……。」
連れて行かれた部屋には数名がいた。
「長!」
「セイラか。よく苦しみに耐えた。」
「これはいったい?」
「詳しくは私にも分からないが、魔物の魂と私達を融合させているようだ。」
「そんなことって…。」
「だが、悪いことばかりではないようだ。」
「?」
そう言うと、黒い剣のようなものを出した。
「体の中の魔物の力を具現化できるようだ。」
「どうすれば?」
「心の中に聞いてみよ。」
「……。」
「わっ。できた。」
「さて、これからどうするか。」
「まだ、民は残っているようだ。」
「いなくなるまで続くのか……。」
「助けなきゃ!」
「おちつけ。セイラ。」
「でも!」
「ここからは出られない。」
「えっ。」
「結界があるみたいだ。試したが駄目だった。」
「何も……できない……。」
「……ああ。」
「嘘だ!皆……死んじゃ嫌!ううっ。」
「……悲しいのは皆同じだ。」
「もっと人が集まったら作戦を考えましょう。」
「皆……。」
「一人じゃない。力を合わせれば必ず風は起こる。」
「っはい!」
その後も苦しみの叫びは止むことは無く、少しずつ部屋に人が増えていった。
「セイラ。」
「!」
「無事でよかった。」
「うん。」
「エル。あとどれくらい人が残っていたか分かる?」
「えっ?ほとんど残っていなかったよ。」
「ところで何が起こってるの?」
「これが僕の力!」
「光ね。」
「わーなにこれ!」
(何人がここにいる?1、2、3……。)
「静かに。」
「ごめん。」
(20、21、22…。)
「大変なことになっているのよ?分かった?」
「……。」
「こんな酷いことよくできるな。」
「邪魔者だったから?」
「理不尽な!」
(80、81,……90。だいたい90人か。元は200人はいたのに。)
「これが最後の一人だ。」
「そうか。ついに完成したのか。」
「はい。」
「素晴らしい!」
「報告にいきましょう。」
「ああ。」
「完了したか。」
「はい。」
「どうであった?」
「まぁ多くの犠牲がありましたが、半分程度は。」
「ほう。」
「予想以上の結果でした。」
「そうか。」
「どうしますか、彼らは?」
「ふーむ。」
「実力を見てみたいな。」
「他国と戦うか?」
「いや……このことを知られたらどう思われるか。」
「王政軍と訓練をしましょう。」
「荒野地帯でやるのはいかがでしょうか。」
「よいな。実行日は追って連絡しよう。」
「了解です。」
「楽しみにしているぞ。」
「はい。」
「お前たちにはこれから戦ってもらう。」
「だれが従うか!」
「ふんっ。死にたいのか?」
頭に直接銃を当てた。
「くっ。」
「従え。」
「くそ。」
「私達は無理矢理戦わされることになった。」
「あんたらは魔物の力を得た人間ということか。」
「怖いか?」
「だがおかしいな。」
「年のわりに若く見える。」
「年をとらないのか?」
「さあね。」
「お前はいくつだ?」
「うーん。50歳?」
「嘘みたいだな。」
「面白いでしょ?」
「そのあとは?」
「国の思い通りにはならなかった。」
魂人と王政軍はリノーの荒野に集められた。
「敵陣地の旗をとったら勝ちだ。」
「了解だ。」
「殺しは無しだ。訓練だからな。」
「分かったな、お前ら?」
「…。」
実戦訓練は開始されたが、魂人たちは静かに反乱を企てていた。