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[1]始まりは風のよう

人はなぜ生まれてきたのだろう?

人は何をするために生まれてきたのだろう。

教えておくれ、世界の人々よ。


大きな世界に生まれた小さな私達は誰?

戦うことしか知らぬ野獣か、

支配を好む独裁者か、

言いなりになるしかない人形か、

世界に抗う勇者か、

異常な心を持つ狂乱者か、

全てを知る神の分身か。

いったい誰なんだ?


世界を自分の立体模型にして

必要な物は血眼で手に入れ

不要な物はすぐに捨てて

さあ、いったい何が正解だ?

 心地よい風が草木を揺らす今日、オラシオンは第36回目の入隊式を迎えた。サーヴノア王国の中心の都リゼラにオラシオンはある。この国の政権・軍事組織である。

「諸君、入隊おめでとう。オラシオンの隊員として戦うとき、苦しいことや辛いことも多くあるだろう。けれど、最後まで誇りを持って戦ってくれ。」

 入隊生の前で朗らかに話したのは第3代総帥ヴァン・リーエンスである。彼は笑顔で去って行った。

「入隊式は以上だ。君たちは既に隊分けの紙を受け取っていると思う。それに従い、それぞれの寮室に速やかに行くように。その後の指示はその場にいる隊員に訊くように。」

 隊員はそれぞれの場所へ向かって行く。

「あー。長かった。もうこれだけで疲れちまったよ。」

「もう、ハルトったら。忍耐力も必要だよ。」

「そうだけどさ。おっここだ。俺らの寮室。失礼しまーす。」

「待っていたよ2人とも。これで全員だね。」

 優しげに笑う女性がいた。

「誰だ?」

「私はユーリティア・セルジアット。一等隊員で、あなたたちの指導者を任されました。ユーリ、と呼んでくださいな。では、自己紹介をそれぞれどうぞ。」

「俺はハルト・スーザンハルク。剣術が得意。好きな食べ物は桃とカレー。よろしく。」

「僕はサディ・グルウマン。マリナス出身。読書が好きかな。」

「俺はガイア・ストラウス。力なら負けねぇ。タリンから来た。」

「私はジェイナ・フロウ。スポーツが好きだよ。ルテットっていう漁業の村からきたんだ。」

「ありがとう。これ以上のことは後でやってね。」

「ユーリさんは自己紹介もっとしてくれないんですか?」

「そうね。」

 少し戸惑った表情を見せた。

「私はオーラット出身。砂漠のオアシスにできた村。好きなことは散歩かしら。」

「そういやなんで一等隊員が指導者なんだ?こーゆのは別の人がやるもんじゃねーの。」

「分からない?期待の新人だからよ。」

「やったね。嬉しいことじゃん。」

「そうね。それでこの部屋だけど左右に2段ベッドがあるわ。あと風呂場は男は2階、女は3階ね。後は各自で見ておいてくれる?室長はハルト、あなたにお願いするわ。」

「はぁ?俺かよ。面倒だな。サディじゃだめ?」

「だめでは無いけど、ジンが決めてるから嫌われるかもね。」

「誰だそいつ?」

「さっき話してた長身の男。ジン・リトール。指揮官よ。あの人は面倒なところあるから、嫌われないほうが良いわよ。」

「わーった。やるよ。」

「それじゃポジション確認するね。ハルトとガイアは剣術(ソルティ)、サディは弓術(リリェ)、ジェイナは銃術(モルト)ね。他にもあるけどチームとしては大丈夫そう。」

「ユーリさんは?」

「ん?私?私は弓術(リリェ)。それで明日からポジションに分かれての練習があって、合同練習は月1回あるわ。」

「でも俺らまだ何にも受け取ってねぇ。」

「これから渡すのよ。」

 ユーリはそれぞれに何かを渡した。

「それは隊員服です。普段はそれを着るように。2着あるのは毎日洗濯しろーということ。戦闘服についでは明日決めることになっているわ。」

「かっこいいな、この服。」

「ハルト、もう着たの?早いよ。」

「ふふっ。いいわねその感じ。どんなことがあっても忘れないでほしいわ、その気持ち。」

「楽しみだね、これから。」

「おう!」

「それじゃ、説明は終わり。昼食のチャイムまでは自由。けど部屋からは出ないでね。」

「はーい。」

「返事は短く元気よく!」

 強めの口調で言った。

「はい!」

 ユーリが部屋から出て行くと4人は仲良くおしゃべりを、始めた。ひととおり話し終えると荷物の整理をした。

 そんなこんなで1日目は終わった。


「おはよう、諸君。よく眠れたかい?」

「ああ。でも起床5時半は早すぎだろ。」

「ユーリさんは元気そうで。」

「まぁ慣れるわ。で、今日の練習場所を伝えるわ。ハルトとガイアは1階運動場A、サディはB、ジェイナは3階銃練室(ルーム・モルト)。ま、案内の人がいるから大丈夫でしょう。」

「何をするんですか?」

「さあ?私は担当じゃないから。あらかた戦闘服の話しか基礎訓練でしょうね。」

「うひょー楽しみ。」

「練習の後は学習。いろいろ学ぶのよ。クラス分けがされていて、ハルトとジェイナはG、ガイアはH、サディはBクラスにいってね。」

「クラス分けはどーなってんだ?」

「学力よ。」

「うぇっ、最悪。」

「ではよい一日を。」

ユーリは去って行った。

「さて、行きますか。」

4人は部屋を出て、練習場所に向かった。


「ここか。すげー。人だらけだ。」

「剣術は花形だからな。素質はこれから分かるさ。」

「頑張ろうな、ガイア。」

「おい、一応ここではライバルだぞ?」

「あ、そっか。でもいいじゃん?」

 1時間の練習の後は学習の時間。

「戦い方にはいくつものフォーメーションがあり、それらは各々の隊のバランスを見て考えます。基本のものとしては………」

「なぁジェイナ?これいつまで続くんだ?」

「知らないわよ。あんまり聞いてないと後で苦労するわよ。」

「面倒ちぃのぉ。」


「君の後輩はどうかね、ユーリ?」

「まぁ今のところは良しかしら。それぞれの実力もそこそこですし伸びしろがあるんじゃないですか。」

「そうか。楽しみだな。でも意外だな、お前が指導員をやるなんて。」

「は?そうですかね?」

「断りそうに思ったのだが。」

「断りたいとは思ったけど、たまには1日中あなたと顔を合わせる以外の仕事をしたかったのよ。やってみると楽しいものよ。今度ジンもやってみたら?」

「言ってくれるね。俺は絶対やだね。なんであんな新人の世話しなきゃいけないんだよ。今の状態で手一杯だ。」

「そう?向いてると思うけど。」

「冗談はやめてくれ。」


「終わったー。」

「そんなんで大丈夫?これから。」

「2人ともお疲れ。」

「サディ。待ってたの?」

「うん。1人じゃ寂しいから。」

「ガイアまで、ありがと。」

「別に。」

「どうだった?」

「退屈。知っているようなことばかり。」

「それに、戦うのに知識をこーんなに知らなくてもいいじゃん。」

「うーん……。そうかなぁ。」

「サディは真面目ね。」

「お願いがある。手伝ってほしいんだ。」

「何?ガイア。」

「宿題の調べ物をだ。1人じゃ時間がかかるが4人なら早い。」

「宿題なんで出たのかよ。いいけどさ。」

「調べ物なら図書室だよね。えっと…」

「図書室ならちょうどこの上あたりかしら。正確には資料室、だけどね。」

「ユーリさん!」

「手伝うわ。私も資料室の借りた本、返そうと思ってたから。」 

「ありがとうございます。」

 5人は資料室へ向かった。

「ところで何の宿題なの?」

「武器についてです。それぞれのポジションの武器の特徴について書かなくちゃいけなくて。」

「そりゃ大変ね。」

 サディが小声でバルトに言った。

「なんでユーリさんは宿題って分かったのかな。」

「さぁ?ま、あらかた資料室ってことは調べ物だろ?そっから宿題って思ったんじゃない?」

「そういうことか。」


「さ、ここよ。」

「わぁ、すげぇ。本が沢山ある。」

「ありがとうございます。」

「いいえ。どういたしまして。」

 5人はそれぞれに行動し始めた。

 しばらくしてハルトが何かを見つけたようでみんなのところへ来た。

「ユーリさん。」

「何?何か見つけたの?」

「オラシオニズムの物語。オラシオンについてみたいなんだけど。」

「面白そう!見せて。なになに……オラシオン設立までの話、だって!」

「そういえばよく知りませんね。」

「あら珍しい。こんな本あったのね。」

「ユーリさん!聞かせてよ。」

「え?誕生物語をってこと?そうね、今は時間がないから、夜、あなた達の部屋に行ってあげる。」

「本当ですか!」

「えぇ。いずれ習うかもしれないけれど、予習もいいんじゃない。」

「楽しみだね。」

 ガイアの宿題の本を借りて、5人は部屋を出て、ハルト達は部屋へ、ユーリは司令室へ向かった。

(面白い子達ね。わざわざ知りたいだなんて。断る理由を考えつかなかったわ。私も他人に優しくなったわ。ま、いいか。)




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