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序章
彼の“それ“を初めて見つけたのは両親だった。まだ彼が幼稚園生の頃である。“それ“は現在の彼の“それ“よりもまだ小さく、彼の人生の大部分に影響を及ぼすことを彼も、彼の両親も気付いてはいなかった。
その時の事を僕はしっかりとは覚えていない。両親が僕の頭をまさぐりながら何かを探していて、“それ”を見つけたときの両親の不安そうな表情でその記憶は途切れている。“それ”が見つかってすぐ、両親は僕を病院に連れていった。そこから先のことは僕は覚えていない。しかし確かなことが一つある。医師は僕と両親にこう告げたはずだ。
「円形脱毛症です。」