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富士山への挑戦

作者: 雲・弧・麺

 大学生のヤマオは退屈な夏休みを送っていた。課題も手につかず、だからと言ってやりたい事があるわけでもなく、無意味な時間を過ごす毎日。ただ食ってウンコをするだけの生活となっていた。何かをしなければ。だが、特にしたい事なんてない。この長い休みを利用して、何か思い切った事をやりたいものだ。旅行は金がかかるし、何かを造るにしても期間が少ない。そうだ、登山だ。登山をすればいい。富士山に登るんだ。ヤマオは早速荷物をまとめ、車で富士山へと向かう。


 暗い夜道を進む車。ヤマオは様々な思考をめぐらす。富士山に登り切ったら、その体験談を本として売り出そう。俺は人気エッセイストになる。そして若くて可愛い女性のファンとお友達になるんだ。2人は恋人になり、やがて結婚をする。完璧だ。妄想を捗らせていくうちに、ついに車は富士山へと到着した。


 荷物を背負い、車から降り立つヤマオ。富士山にはオブツドクヘビという危険な蛇が生息しているそうだから、長靴は必須だ。手袋をし、帽子を被り、歩き出したヤマオ。

 ヤマオが歩いているコンクリート舗装の道は、すぐに土と雑草の山道へと変わる。急な勾配の道を歩いていく。その道はただロープが引っ張ってあるだけで、デコボコした歩きにくい断崖絶壁の道であった。すぐに息を切らすヤマオ。運動をする習慣がない彼にとって、この道だけでも心臓破りの道だろう。しだいに涙・鼻水・よだれがダラダラと垂れてくる。こんな姿を人に見られるわけにはいかない。ヨタヨタ歩いていくその姿は、まるで壊れたカラクリ人形の様だった。


 道なき道に座り込み、一休みをするヤマオ。既に足はパンパンで、大量の汗がベタベタと体に染みついていた。まずい。腹が痛くなってきた。だがトイレはどこにもない。こうなったらするところは決まっている。ヤマオは草の茂みにしゃがみこみ、尻を突き出した。


 ブボオオオオオオオオ!!!!!!ブリブリブリュブリュブリュブリュブリュブリュブリュブリュ!!!!!!!!!!!!!!

 一気に糞を放出するヤマオ。ああ、いい気持ちだ。その後ろで登山客の集団がケータイを片手に、うんこをするヤマオの写真をパシャパシャと撮っていた。


 再び山道を登っていくヤマオ。体力はほとんど残っていなかった。一歩進むたびに膝が悲鳴を上げる。寒さで奥歯がガチガチと音を立てる。何度も引き返そうと思った。だが、その度に自分の未来のファンであり、未来の妻が、頑張って!と声を掛けるのだ。精神力で体を支えるヤマオ。目線が定まらぬ。頭がグルグルまわりはじめた。すさまじい吐き気。


 オゲエエエエエエエエエオオオオオオオオオオオ!!!!!!!ビチビチビチビチャビチャビチャビチャビチャ!!!!!!!!!!

 盛大にゲロを吐くヤマオ。血も混じっている。平衡感覚を失ったヤマオは山道をゴロゴロ転がり落ちた。


 もうだめだ。ヤマオの体はガタガタになっていた。こんな山奥で死ぬとは情けない。全てを諦めようとした時、朝日がヤマオに向けて射し込んでいた。光を感じる。ここで諦めてはいけない。ヤマオは立ち上がり、再び山道を登っていく。限界を超えた体からは小便がジャバジャバと流れ出し、ウンコがブリブリ漏れていく。それでも前に進み続けたヤマオ。そしてついに迎えた頂上!!


 素晴らしい眺めだった。朝日に包まれた木々たちの葉が輝いている。ヤマオは心から思った。生きていて良かった。生きていて・・・。


 何かをやり遂げた時の感動は言葉に言い表せない。それが大きければ大きいほど尚更である。

 我々も何かに感動する心を忘れずに生きていきたいものである。




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