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ツきゆく君との過ごしかた!  作者: はなうた
第二章:ツきまとう。
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第七話:然木式!オバケを引き離す三つの方法(二)



「いいか? まず一つ目は、専門の人間に頼んで除霊してもらうこと、だ。専門の人間というのは寺や神社の住職、僧侶、祈祷きとう師など……あとはいわゆる“霊能者”と称される人間だな」

「ふむふむ、霊能者ってあの“下ノ怪ヨシコ”みたいな人か?」

「そうだな。ただ彼女のように有名どころや、確かな力を備えた霊能者への依頼は高くつく。その費用は数十万から数百万ともいわれている」

「う……、高校生には痛すぎる額だな……」

「かといって、無名な寺や神社だと費用こそ数千円程度だが、形式ばかりでなんの効力もない儀式を見せられるだけだ。それこそ無駄というものだな」


 よくテレビで除霊シーンなどを見かけるが、実際頼むとなると色々考えないといけないようだ。


「じゃあ、あと一つの方法は?」

「うむ。もう一つは単純に、幽霊の未練を晴らしてやることだ。幽霊という存在は多かれ少なかれ、生きているあいだにやり遂げられなかったこと、その未練を抱えている。それゆえに魂がこちら・・・に留まっている場合が多いのだ」

「ああ、なるほど」


 そういえば涼介も何度か、そういった題材を扱った漫画や小説を見たことがある。身近といえばある意味そうなのかもしれない。


「彼女が生前にやり残したこと、やりたかったこと……それらを満たしてやれば自ずと魂はうかばれるはずだ」

「めいりがやり残したこと……か」


 めいりは肉体を失った今でも、こうしてここにいる。それは彼女が未練を抱えている何よりの証拠だ。

 では、彼女のやり残したこととはいったいなんなのだろう。ぼんやり考えながら振り返る。


「ふん、ふふんふん、ふ、ふ、ふ~ん」


 めりいは教室の一番うしろに備え付けの二段ロッカーを漁っていた。楽しそうに鼻歌まで歌っている。『メリーさんの羊』だった。

 涼介は無論呆れかえったが、誰も気づいていないようなのでスルーすることにした。


「柳瀬の話、それとボクが今見た状況から推測するに……どうやら彼女は悪霊ではないようだし、しかも君との仲も良好だ。なのでボクとしても未練解決の方法を推したいところだね」

「やっぱそうだよなぁ……。さすがに無理に除霊するのもちょっと可哀想というか、気が引ける」


 たとえ短い間の付き合いだとしても、一緒に過ごした仲。たしかに早く解決したい思いはあるが、できる限り彼女の思いも果たさせてやりたい。


「ただし……」


 そんな涼介の思考を笑海の声が遮る。


「この方法だと、柳瀬の生活にどれほど影響を与えるかわからない。未練の内容次第では、今日にも解決するかもしれないし、逆に何年もかかるかもしれない。それに、未練を晴らす過程で他の人間にどんな影響を及ぼすか……それも考慮しないといけない。まあ、さすがに人を呪い殺したりはないと思うがな」

「ああ、それは僕もないと思うんだけど……」


 そこでふと思い返す。

 彼女は“メリーさん”の真似をしながら涼介の前に現れた。

 その時もし、目の前にいたのが彼女の言う“本当のターゲット”だったら……。

 めいりはあの後、どういう行動をとったのだろうか。


(いや、でも……アイツが誰かを殺そうとするなんてとても想像できないよな……)


 少し怖い気もするが、その辺は後で本人に聞いてみよう。


「ボクからはこんなもんだな」

「うん、参考になった。後はどうするか、こっちで考えてみるよ」

「そうしてくれ。いやしかし、聞き役に回るのもたまにはいいものだな」

「そうだろ? なら、今日の然木談議はここまでということで――」

「――じゃあ次はボクの仕入れてきた話をさせてもらおうかなっ!」

「ぐっ……」


 一足遅かった。

 だが今回は彼女のおかげで今後の見通しが立った。今日くらいはこっちから進んで聞いてやってもいいかな……そう思う涼介だった。




 ――数時間後。


「でだ、昨日まではたしかに満たされていたはずのアルコールランプの中身が今日になって空になっていたのだ、これはまさにアルコール減少現象という一種の怪奇であって実はなんらかの怪異が絡んでいるのではないかとボクは推測する、また生物室にいる人体模型タツさんのふくらはぎに記された謎の文体も今回の異変とうんぬんかんぬん……」

「うおお……っ、頭が割れるように痛いぃ……!」


 結局、授業中も昼休みもぶっ通しで笑海の話を聞かされることになった。

 彼女に相談した代償はあまりにも大きすぎた。


 ちなみにめいりはそのあいだ、生徒や各教師の叫び声を浴びながら教室のあちこちでポルターガイストを引き起こしていた。



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