ゴスロリドレスなんてありえない
サブタイにやや偽りありです。
性別の欄がある書類におけるオレの性別は、全て『女』になっていた。
「オレ、男だよね?」
「え?立派な女の子ですよ?」
「かわいいわよ、私に似て美人ね」
くそっ、二人そろってボケをかましてくるなんて……。
「男だったよね?間違いなく男だったよね?なんで全てが解決したような顔してるの!?」
「戸籍とか学校の手続きが解決したので、父さん安心しちゃいました」
「安心しないでよ!いきなり女になったんだよ?もっと色々と疑問を持とうよ!!」
「落ち着きなさい、あとソファーの上で立つのは危ないわよ」
むむ……。確かに自分だけ大騒ぎはみっともないかな。お茶でも飲んで落ち着こう。ズズズ……。ぬるい。
「家族以外で、アキラを知っていた人達に確認してみましょう」
お、流石母さん冷静だな。それは結構いいかも。
「じゃあ父さんに電話して聞いてみますよ」
父さんの父さん、おじいちゃんか。めったに会わないけど可愛がってもらったな。田舎に顔を出すとカブトムシ捕りにつきあってもらったっけ。
「もしもし?オレオレ、オレだけど」
「……切られちゃいました」
父さん死んでくれないかな。あ、母さんがまたグーで殴ってる。いい気味だ。
「すいません楓です。サーセン、ほんとサーセンしたっ」
なんか若者っぽいしゃべり方してるな。会話の内容まで聞こえないけど、今度は真面目にやってるみたいだな。
「ふう、お説教されてしまいました」
「あたりまえだよ、それでおじいちゃんどうだったの?」
「アキラちゃんのラブリーさを説明したら、凄くうらやましがって今度連れて来いと」
「そういうのはいいから」
親指を立てて得意げにしている父さんを、軽くひと睨みする。
「アキラちゃんもお年頃だから、悪い虫がつかないように気を付けろと」
「……それは要するに?」
「男が付きまとってきたら殴れと。もちろん、と答えておきましたよ!」
「答えになってないよ!まあ理解できたからいいや。おじいちゃんの中では、オレは元から女の子って事か……」
まだ断定できないけど家族以外ではオレは元から女の子と認識されてる?自分でも確認したいけど友達いないしなあ……。仮にいても、こんな変な事を説明するのは難しいし。
「私もかけてみるわね」
お、母さんも確認してくれるのか。父さんと違って安心できるな。
「もしもしお母さん?久しぶり。今少し大丈夫かしら?大した事ではないのだけど……」
「うん、うん……。それで私が高校の時に、若気の至りで買ったゴスロリドレス……」
「アキラがどうしても着たいって言うの。着払いで良いから送ってくれないかしら」
全然安心できなかった。
若気の至りってなに!?ゴスロリ!?そんなもの絶対着たくないよ!!それ以前に母さんの高校時代にゴスロリとかあったっけ?
「すぐ送ってくれるそうよ、良かったわねアキラ」
「全然よくないよ!!」
「そんなに照れないでも。可愛い服を着たがるのは女の子として当然よ?」
「なんの話だよ!!あと女の子じゃないよ!!」
こんなに短時間で大声を出しまくるのは久々だよ、小学生以来じゃないかな……。二人そろって微妙にボケたおしてくれるので、非常に精神的に疲れた。
それともあれだろうか。父さんも母さんも実はショックで色々と混乱してるのだろうか?
「それはさておきね」
「他にもお古を色々送ると言ってたから。おばあちゃんもアキラの事は、元から女の子だったと思ってるみたいね」
「送らなくていい、と言っておいて」
「何言ってるの?せっかくだし、着られそうな物は全部送ってもらうわよ」
「なんで女物を着なくちゃいけないのさ!!」
「女だからよ」
身も蓋もないな。しかしおばあちゃんの中でも、オレは元から女の子という認識らしいから、どうやら家族以外は全てそういう事っぽいなあ。
ご都合主義というか、なんというか誰かの都合のよい風になっているというか……。少なくとも自分は女になりたいなんて思った事はない。犯人は父さんか?ありえそうだ!
その後二人で、オレを知っている親戚や知り合いに同じような電話をかけまくった。細かい所は略すが、オレは生まれた時から女の子でFAがでた。なんかどうでもよくなってきたな。あ、涙が……。
「アキラ、ゴスロリドレスは絶対に着てもらうわよ、あと他の服も」
「なんで!?」
「娘を着せ替え人形にして遊ぶのは、母の特権だからよ」
「はい!はい!僕はそれを撮影したいと思います!是非とも撮影させて下さい!」
着せ替え人形にして遊ぶってなに?母さんの顔がマジなだけに怖い……。ちなみに父さんは土下座でお願いしていた。