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【番外編】 美里楓は二度寝する

四天王の話を書こうと思っていたら何故かこうなりました。

ちょっとだけ普段と書き方を変えてみました。

 ある夜の出来事。

 美里桜花と美里晶がなにやら言い争いをしています。



「なんで全部食べちゃうのよ、私もこれ好きだってわかってるでしょ?」


「しあわせパウダーが200%だったのでつい……」


 しあわせターンというスナック菓子ですね、甘しょっぱい味付けが好評の。最近発売された味付けを濃くした200%バージョンを、娘の晶が全部食べてしまったらしいです。



「私も食べたかったのに、家事で疲れた私の唯一の楽しみだったのに」


「やわらかサラダが残ってるじゃない、それに今日の家事はほとんどオレがやったし」


 やわらかサラダは薄塩味のおせんべいです。ちなみに桜花は本日ほとんどゴロゴロして過ごしていました。



「しあわせターンが食べたかったのよ。ふん、アキラなんてぶくぶく太ればいいんだわ」


「別に太っても気にしないー」


 腰に手を当てて、胸を反らす晶。上パジャマがパツンパツンになってボタンが弾けそうです、本当にありがとうございます。

 その姿を見て、悔しそうに腰に手を当てる桜花。十分なスタイルだと思うけど、娘に負けるのが許せないらしいです。



「母さんこそ太ったんじゃない? その……太腿とか」


「なんですって!?」


 慌てて太腿を見る桜花。ちなみに、いい歳なのにミニスカート……

 すいません17歳でした、地の文の人に攻撃を加えるのは止めて下さい。



「大丈夫よ、大丈夫なはずだわ……カモシカのような私の脚に変わりはないわ……」


 カモシカの蹴りの威力は軽く1トンを超えるらしいですね。

 その間に晶はやわらかサラダを食べています、いい根性をしてますね。



「アキラ、なに全部食べてるの……?」


 なんという事でしょう、太腿をむにむにしていたらやわらかサラダも無くなりました。


「しあわせパウダーが200%だったのでつい……」


「それ関係ないでしょ!?」


 お菓子入れには、柿の種しか残っていません、しかもピーナツ無し。

 ガクンガクンと晶の肩を掴んで揺する桜花。あわわわわ、と目を回す晶。おっぱいが揺れています、ありがとうございます。



「なんでそういう事するの!」


「……母さんが昨夜オレのアイスまで食べちゃったから」


「アキラ甘い物苦手なはずでしょ!」


「アイスは別だよ!」


 どうやら食べ物の恨みで晶は今回の犯行に及んだようです。



「返しなさい! 私のしあわせターンを!」


「無理、もうお腹の中だし」


 見つめ合う、もとい睨みあう二人。



「……あんたのお小遣いを減らすわ」


「なにそれひどい、横暴! 横暴!」


 ちなみに晶は甘やかされているので結構な額をもらっています。



「話は聞かせてもらいました!」


 ガラガラッと扉を開けて、颯爽と入ってきたのは美里楓。何故かハンディカムを持っています。なんでも撮影するな、こいつ……。



「愛する二人が、たかが米の加工品で争うなんて僕には耐えられません、今すぐ買ってくるので落ち着いて下さい」


 パシリを買ってでました。



「んー、そういう事なら我慢してもいいわ」


「アイスも買ってきてくれる?」


「わかりました、アイスとしあわせターンですね」


 さらりとアイスもねだりました。晶は意外としつこく根に持つタイプです。



「アキラが全部食べちゃうから普通のしあわせターンでお願いね」


「しあわせパウダー200%の買ってきて」


 またもや見つめ合う、もとい睨みあう二人。

 先手を取ったのは晶。タタタッと駆け寄り、上目遣いでおねだりします。



「200%の方がいいな。ね、父さん」


 吊り目がちの瞳をやや伏せ気味にして、眉をハの字に寄せてのおねだりは破壊力抜群です。胸の前で手まで合わせてのおねだりです。狙ってやっている訳じゃないのが性質が悪いですね。



「わかりました! 200%ですね!」


「わーい」


 うれしそうです。しかし子供っぽいのか女っぽいのかわからない子ですね、元男の子ですが。

 そして遅れをとってしまった桜花。その場を動かず、何故かおもむろに腕まくりをしました。



「普通のしあわせターンの方がおいしいわよ? 塩分も控えめだし。みんなの健康の為にも、ね?」


 女性らしくたおやかな腕を曲げ、見せ付けるように握り拳を作りました。青白いオーラのような物も見えます、破壊力抜群そうですね。もちろん狙ってやってます。



「わ、わかりました! 普通のやつですね!」


「わーい」


 棒読みです。しかし一般人にも見えるオーラを出せるって、どういう人なんでしょうね? 強化人間でしょうか。

「桜花さんの二つ名には強化人間(ブーステッドマン)というのもありましたよ?」ってお前も地の文の人に干渉するんじゃねえよ!



「えー……」


 しょげかえる晶。後ろで手を組んで、つま先をいじいじ動かしてます。どう見てもお子様ですが破壊力は抜群です。



「あ、やっぱり200%ので……」


「えー……」


 闘気を出す桜花。前で手を組んで、つま先立ちになって構えてます。どう見ても格闘家ですね破壊力も抜群です。



「……両方買ってくるという事でどうでしょう?」


「「どっちか片方で」」


 いがみ合っていたのに、こういう時だけ息がぴったりです。



「と、とりあえず行ってきます!」


 楓は逃げました。

 残された二人はしばし顔を見合わせると、フンッ! と荒く息を吐いて、少し離れてソファーに座りました。

 テレビを見ながら待つようですね。晶は柿の種を食べ始めました。……食べ過ぎでは?



「食べすぎよアキラ、太ってもいいの?」


「やせてるし」


 ポフポフとお腹と脇腹を叩いた後、腰に手を当てて細さを誇示する晶。すごく悔しそうに桜花が見ています。



「あ、でも少し太ったかも」


「ほら見なさい、まったくアキラは……」


「食べこぼした柿の種が胸に乗ってた、おっぱいがまた太ったなー」


「……………………」


 ひょいっと胸の上から柿の種を摘んで口に運ぶ晶。ドヤ顔をしてます。ウシチチと言われて半泣きになっていた子の言動とは思えません。

 桜花は親の仇でも見るかのように晶のバストとウェストを凝視しています。貴女の子ですからね?

 しばらく見つめた後、おもむろに立ち上がりました。

 そして美容体操らしきものを始めました。

 事実を認め、努力する方向に切り替えたようです。偉いですね。

 桜花の頭の中で「戦わなきゃ、現実と」と青いタヌキもどきが囁いたようです。



「……太極拳?」


「ストレッチよ!」


 確かに演武に見えますね。

 と、そんなこんなで時間は経ち、楓が帰ってきたようです。



「ただいま帰りました!」


「おかえりー、200%?」


「おかえりなさい、普通の?」


 女の意地とプライドが交錯するしあわせパウダー。さて、勝者は?



「傾き者揚げを買ってきました!」


 傾き者揚げは50年以上も愛されている、甘辛くて美味しいおせんべいです。



「「………………」」


「二人ともケンカなんかやめて、お茶でも飲みながら食べましょう」


 にっこりと笑って袋を差し出す楓。一家の長らしい包容力のある笑顔です。



「はー……そうね、私も大人げなかったわ」


「……わかった、お茶いれてくる」


「ありがとうアキラちゃん、あとアイスもちゃんと買ってきましたよ」


「わーい」


 現金なもので晶はニコニコしながら台所に行きました。ちなみにアイスのフタに名前を書いています。小学生か、この子は。


 お茶もはいり、なごやかな団欒タイム。

 左に愛する妻、右に愛する娘で今回は酷い目に合いませんでしたね、美里楓。



(くくく……、ここまでは計画通りですよ!)


 はい? 計画?


(この後、こっそりと二人別々に200%しあわせターンと、ノーマルしあわせターンを渡して好感度だだ上がり作戦なのです!)


 はあ。


(ありがとうお父さん大好き! 今度一緒にお風呂入ろう? と抱きついてくるアキラちゃんが……で、僕のしあわせは200%増しなのです!)


 ないない。


(ありがとう楓さん、愛してる。今夜はノーマルじゃなくアブノーマルでもいいのよ……とか。どうしましょう、子供の名前考えた方がいいですかね?)


 知らないよバカ。



「ふはははははははははははははは!」


「……どうしたの楓さん」


「父さんキモい」


 邪な事を考えてますよ。



 翌朝。

 朝食の支度も終え制服に着替えた晶が、桜花の顔を見て思い出したかのように2階に上がっていきました。

 戻ってきた晶の手には『しあわせターン しあわせパウダー200%増量!』が。



「はい、母さんこれ」


「……どうしたの? これ」


「あの後、父さんがくれた。……昨日はごめんなさい」


「そうなの……。私こそごめんなさいね、アキラのアイス食べちゃって」


 美しい母子の和解です、これは全米が泣きますね。ってスナック菓子で全米は無理です。



「ところで楓さんがくれた、で間違いないのね?」


「ん、オレだけにあげるって。酷いよね、母さんの分も買ってくればいいのに」


「いいのよ、私も実はこっそりもらったの」


「そっかー、でもそれはあげるね」


 何故あの男はちゃんと口止めをしないのでしょう? もしかしたらハードMなのかもしれません。



「ところで父さんまだ起きてこないの? 起こしてこようか?」


「……私が起こしてくるわ」


「はーい」


「でもすぐ寝てしまうかも……もしかしたら永遠に……」


「?」


 桜花がハイライトの消えた瞳でぶつぶつ呟いています。



「アキラ、少し早いけどそろそろ出たら?」


 子供に残虐シーンを見せない配慮ですね、わかります。



 10分後。


「ノーマルに死ぬのとアブノーマルに死ぬの、どちらが良いかしら?」


「え、なんですかその絶対選びたくない二択?」

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