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ナマコなんてありえない

またもや短いですが。

 昼休み。

 なんとなく携帯をいじっていたら、アドレス帳が改竄されていたのを発見した。



『婚約者(父)』

『クレオパトラ』


 部屋にカギを付けよう。断固として付けさせてもらう。あ、携帯にもなんかロックっぽいのがかけられるんだっけ。


 とりあえず。

 カコカコカコ……。



『こんにゃくしゃ(父)』

『クレオパトラ(笑)』


 多少ベタだけど、これで良しと。


 あの二人はPCには全然無頓着なのに、何で携帯には興味津々なのかな? 謎だ。

 実はPCの方には、見られると気まずいサイトが結構な数でブックマークしてあるんだけどな。

 セクシーワンニャン写真館とか、モフモフの全てとか。


 一仕事を終え、ふと隣を見やると、珍しくマツリちゃんがいた。

 なんか携帯でゲームらしきものをやっている。あ、何気にスマホだな。じー。



「ん、お姉様も興味を引かれたのですよ?」


「うん、ゲームは好き」


 机ごと寄せて画面を見せてくれる。

 えっと……。

 なにこれなにこのキモイ物体の群れ。



「ナマコ牧場というゲームなのですよ」


 ごめん、こういう時なんて言ったらいいかわからない。

 牧場らしき画面に赤青緑紫黄と色とりどりのナマコがウネウネと這っている。

 だいたいなんでナマコが地上にいて、しかも牧場で飼われているんだ。



「あと一種類、突然変異で生まれるピロシさえゲットできれば、図鑑が全部埋まるのですよ!」


「……ピロシ?」


「こんなんですよ」


 攻略WEBのページに画面を切り替えたらしい。そこにはクリーチャーが。

 人の体をベースに、頭部分はナマコ。しかもレインボーカラー。

 なにこれ邪神ハンターポータブルに出てくる旧神より怖いんだけど。

 せめてデフォルメしろと強く言いたい。なんでこんなにリアルなの。



「キモ可愛いのですよ」


「えっと、キモイだけだと思う」


 キモ可愛いなんて言葉、オレは絶対認めないぞ。

 というか近づけないで欲しい。怖い。目を逸らし、自分の肩を抱きながら身をよじる。画面からイヤな粘液が出てきそう。

 そんなオレの様子を見て、マツリちゃんが不満そうにプクっと頬を膨らませた。



「……お姉様はセンスが少しだけ足りないのですよ」


「マツリちゃん、その画面消してくれないかな?」


 夢に出てきそうでイヤだ。



「怯えるお姉様も可愛いのですよ!」


 ぐいぐいスマホを押し付けてくる。やーめーてー。そうだ目をつぶろう、それしかない。



「ごめんなさい、調子に乗ったですよ」


「……………………」


「お詫びにピロシぬいぐるみを作って、差し上げるですよ」


「結構です、作らないで下サイ」


 丁寧語になった。

 少しずつ開き始めたオレの心は、ナマコによって再び閉ざされた。

 もう誰も信じないぞ、うん。



「ところで、お姉様もケータイ持っていたのですよ?」


「うん、ついこの前買ってもらいました」


「メアドの交換をして欲しいのですよ!」


 スマホを片手にブンブンと腕を振り回すマツリちゃん。期待に溢れた目でこちらを見ている。

 うーん、メアドの交換か……。


 こういうのは友達同士でするんだよね?

 友達、か。



 電話番号なんて知らなくても、学校で、公園で、家の前で。

 会おうと思えば何時でも会えて、話そうと思えば何時でも隣に居て。


 未だに引きずるのもどうかとは思うけど。

 友達同士の始めてのメアド交換は。

 アイツとしたいなあ。


 今更会える訳ないし、たかがメアドなんだけど。

 なんとなく初めてはとっておきたいと言うか、操を守りたいと言うか。

 何か違う気がする! 無駄に乙女だなオレ!


 マツリちゃんは良い子なんだけどなー。うーん……。



「えっと、実はメール機能が無い携帯なのです」


「さっきアドレス帳見てたですよ?」


 うん、流石にこの言い訳は無理があるか。



「やり方がわかりません!」


「教えるですよ?」


 オレはもしかしてアホの子なのか。

 うーん、うーん……。


 唸りながら悩む事2~3分。そんなオレを見て、マツリちゃんがポンっと手を叩いた。



「子犬様が見てる、というゲームがあるのですよ」


 なにこれ子犬様が見てる。超見てる。小首をかしげたりしてる。



「お姉様の携帯でも遊べるですよ? 簡単ダウンロードですよ? urlを送りたいのですよ?」


「マツリちゃん、赤外線通信ってどうやるのかな?」


 オレの操はあっさり散った。

 ごめん、初めてはマツリちゃんだったよ。

 ところで早くダウンロード終わらないかな。



 そわそわしながら携帯を眺めていたが、変な気配を感じて振り向いた。


 なにこの行列。

 皆して片手に携帯を持って。

 いや、なんとなくわかってはいるけど。


 見なかった事にして、再び携帯に目を戻すがプレッシャーが凄い。ううっ……。

 あ、ダウンロード終わった。

 もっかい後ろを見る。

 超並んでる。

 ええー……。



「ごめんなさい」


 ペコリと頭を下げる。半分ほど諦めてくれた。いや、交換しても良い気はするんだけど何となく。

 携帯に目を戻す。えっと使用許諾と……。


 カコカコカコ、と登録。お、起動画面キター。しかし見えない圧力が引き続き後ろから……。



「ご、ごめんなさい」


 ちょっと涙目になって断る。

 残り半分も、肩を落としながら離れて行った。

 悪い事しちゃったかなあ。


 と思ったら二人ほど残っていた。



「私はこのシベリアンハスキーストラップを、是非とも美里さんにプレゼントしたいわ!」


 ピピッ。

 あれオレなにやってるんだろう。

 林田さんのメアドゲット。



「……子猫様も見てる、というゲームがあってですね」


 ピピッ。

 わーい子猫だ。

 何故か田中のメアドをゲットした。


 あれ?

 あれれ?



「お姉様それはちょっと、ですよ」


 マツリちゃんがナマコを見るような目でオレを見た。去ったはずのクラスメートも戻ってきている。ううっ……。


 結局クラスメート全員とメアド交換をする事になった。

 なんか流されてるなあ、自業自得なんだけど。




 ーーーーーーーーーーーー




「アキラちゃん、友達が増えたようでボクもうれしいです」


 だからなんでロックしたはずの携帯見られるの。



「でも男は狼ですからね、気を付けて下さいね」


 一番気を付けないといけない男は、父さんだと思う。



「まあヤツラの連絡先は控えましたから、問題は無いんですけどね。ふふふ……ふふふふふ…………」


 目が笑ってなくてとても怖いです。



「アキラ、『かっこ笑』ってどういう意味なのかしら?」


 だからなんでロックしたはずの、携帯の情報が筒抜けなの!

 クレオパトラが怒ってるけど、怒りたいのはこっちだと。

 でも怖いので言い訳しておこう。



「女子高生の間で、語尾に(笑)って付けるのが今大流行なのデス」


「そうだったわね、思い出したわ。私18歳だからそういうの詳しいのよ」


 やばいな、母さんがアホの子になりつつある。人の事は言えないけど。


 とにかくだ、次の日曜日にはカギを買いに行こう。絶対にだ。

 そんな事を考えていたら、携帯が鳴った。

 お、マツリちゃんからメールだ。なんだろう?




 Title

『ついにピロシゲットなのですよ!!』


 Text

『画像も送るのですよ』




 ……ナマコ大嫌い。

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