愛妻弁当なんてありえない
短いですが、少しでも書きたい今日この頃。
今回も誤字脱字が多そうデス。
「お前はそんなに自分の事が嫌いなん? 自分なんか悪い事したん? 確かに自分、いい先生やないけど、ここまで憎まれるなんて……」
なんでお弁当を差し入れしただけで、ここまで悲しまれるのか。
「河北先生いいですな! JKからお弁当ですよ、JKのお弁当!」
うん、これが正しい反応だろう。でもJK言うな、社会科教師その2。
オレは今、社会科教員室に来ている。
名前の通り社会科教師の控え室で、プチ職員室みたいな感じ。現在はカッキー、その2、おじいさんな先生の3人しかいない。
で、この前のお詫びとしてお弁当を作って持ってきたのだが……。
「お前はアレを食べてないから、そんな事言えるんや、アレは憎しみの光や……」
「アレは確かに酷かったですけど、これは大丈夫です」
トドメを刺したのはオレだけど、大元の犯人はマツリちゃん達だし。
「信用でけん! お前はきっと自分に保険をかけたんや、保険金殺人や、事件は現場(教室)でおきてるんやで!」
かけられる訳ないだろ。それ以前に殺人なんかおきてないよ。更に言えばここは職員室だよ。つっこみが多いな。なんか面倒になってきたなー。
「じゃあもういいです、持って帰ります」
「え、じゃあボクがもらっていい? JKの弁当! JKの弁当!」
この社会科教師その2も大概だなあ。だいたい社会科教師なのに何で白衣なのかな? 別にあげてもいいけど。
どうぞ、と差し出すとうれしそうに包み袋を開けて食べ始めた。
「お、おいしいじゃないですか! JKが作ったお弁当なのに、こんなに美味いなんて」
この先生は、本当はJKが嫌いなんだろうか? 非常に失礼な事を言われた気がする。カッキーはその様子をじっと観察してる。ふん、もう無いからな。
「だいじょぶなん?」
「なにがです? このミートボールもおいしいですよ」
「そうか、ありがとさん」
ひょいっと、その2から弁当を取り上げるカッキー。そうか、毒味させてたのか……。
「ちょっと酷いじゃないですか、ボクがもらったJK弁当ですよ!」
「元々は自分がもらった物やし。いいからお茶でも淹れてきてや、わざわざ生徒が来てくれたんやで?」
センパイはずるいとかぶつぶつ呟きながら、律儀にお茶を淹れに行く先生その2。
「美味しいやないか! お前はやれば出来る子なのに、なんであんな毒物を作ったんや!」
怒られた。
「……アレはワタシが作ったんじゃありません」
トドメを刺したのはオレだけど。
「そうなんか? 美里がいじってた鍋やから、食べたんやけど。ところで自分は、卵焼きはもうちょっと甘い方が好みや」
「贅沢言ってますね、はいお茶。JKの子もお茶」
「ありがとうございマス」
「ごくろうさん。あちっ……あちっ……うまっ……」
落ち着かない人だなあ。
「ボクから奪ったJKのお弁当おいしいですか?」
「美味い。ってか元々自分がもらった物やと言っとるやろ、あといつまでここにおるねん」
「お茶菓子もどうかな、と。あとJKと会話したくて」
ドラ焼きだ。某青いタヌキもどきが好きなお菓子だな。もぐもぐ。
「残りのドラ焼きも置いてさっさと去ね、そして午後の準備でもせい。自分は生徒とコミュニケーションとるんやから」
「ボクも混ぜて下さいよー! うちのクラスのJKはいまいち可愛くないんですよー!」
「そんなん知るか! お前の席はあっち! ほれ!」
「えっと、ドラ焼きごちそうさまデス」
白衣なその2、退場。正確には、自分の席に戻っただけだけど。
お弁当の残りを、カカっとかきこむカッキー。
プークスクス。
ごめんなさい。
「ふー、ごちそうさん。とてもこの前のアレを作ったヤツの弁当とは思えん出来やな」
「繰り返しますけど、アレはワタシが作ったんじゃないです」
繰り返すけど、トドメを刺しただけだ。
「じゃあ犯人は誰や?」
「田中くんです」
やべ、脊髄反射で田中って答えちゃった。
「そうか……。田中、内申点マイナス、と」
マツリちゃんって答えなくて良かったな、うん。
「さてと」
がそごそがさ。
「邪神ハンターポータブルでもやるか」
コミュニケーションはどうしたと言いたい。
帰っても良かったけど、興味を引かれて覗き込む。なんか見覚えのあるヒゲが大きな剣を振り回してるな。
「このニャルラトホテプ亜種がえげつなくてなー」
なんか黒い触手っぽい物が画面中を覆っている。ヒゲが危ない!
でも器用に避けて、攻撃を叩き込んでいるな、さすが師匠に似ているヒゲキャラだけある。
「で、ここまで追い込んで倒したと思うやろ?」
「はい、お見事ですね」
「復活するねん」
倒れ伏したモンスターが光り輝いて、さっきの2倍の大きさになって復活した。ご丁寧になんか黒いオーラまでまとってるぞ。
「これ絶対一人じゃ無理やわー。美里PNPもってないん? 一緒にやらん?」
「持ってないけど、やってみたいです」
結構面白そうだ、でもPNP高いんだよな。ちなみにPNPは携帯ゲーム機の名前ね、プレイネットワークなんたらの略だったかな。無線通信で協力プレイが売りだそうな。
「そっかー、んじゃPNP買ったら一緒にやろか」
「そうですね、PNP買って下さい」
「はっはっは、美里は料理だけじゃなく冗談も上手いんやな」
流れで買ってもらおうとしたけど無理でした。
カッキーの目が笑ってないのが少し怖い。
「あそこのじーさんに孫娘っぽくおねだりすれば、いけるんちゃうか?」
半分以上置物になっていた老教師を指差すカッキー。
直前の自分は棚に上げさせてもらうが、お前は本当に教師なのかと。
「それは良くないです。カッキーが買って下さい」
「はっはっは、同じようなボケを繰り返しちゃ芸人失格やで」
じりじりじり……。
なんで二人でファイティングポーズを取りながら睨み合っているんだろう?
「JKと楽しく会話してる、うらやましい……」
これが楽しそうに見えるなんて、白衣の教室は荒れているんだろうか。
キーンコーンカーンコーン。
あ、予鈴が鳴った。とても無駄にお昼休みを過ごしちゃったな。
「じゃ、少し早いけど教室行くか。ちょうど自分の授業やし」
「そうですネ」
「一緒に……教室へ、だと……!? バカな…………」
白衣がなんか愕然とした顔をしている。どうでもいいけどおじいちゃん先生はピクリとも動かなかったな、大丈夫なんだろうか……。
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ガラガラガラっと扉を開けて教室へ。つられて前から入っちゃったよ。無駄に注目を浴びてしまった。
「あー、弁当箱は洗って返すわ。帰りのホームルームでええよな?」
「いつでも結構ですよ」
ピクリ!
む、殺気。オレに対してじゃないけど。
「あと美味しかったで、改めてごちそうさん」
「お粗末様でした」
ペコリと一礼。ぐりぐりと頭を撫でられた。子供じゃないんだから止めて欲しいな。
踵を返し、自分の席へ。むむ? クラスの男子ほぼ全員が、先ほどの白衣みたいな表情になっている。なん…だと……!? って顔に。
あ、田中発見。思い出したけど、ちょっとだけ悪い事しちゃったんだよな。彼にもお詫びでお弁当作るか。
「ごめんなさい、田中君にも今度作ってくるから」
「え、本当ですかやったー」
微妙に田中のキャラが崩れた。
ごめんね、でも田中なら少しの内申点はすぐ取り戻せるだろう。
それにしてもPNPいくらだったかなー。誰かくれないかな。
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「師匠は今夜INしないんですか」
「うん、なにやら暴行事件に巻き込まれたらしい」
なんて事だ、師匠ここ最近ついてないなあ……。
「複数の学生に襲われたとか。でも犯人グループで仲間割れもあったらしくて、良くわからないね」
「うう、命に別状はないんですよね?」
「Kaitoは丈夫だしね、大丈夫だと思うよ」
ふんふん、リアル友達? のSakaponさんが言うからには大丈夫なのかな。
「でもなんで師匠が……」
「わからないね、彼は教師だから色々あるんだろうとは思う」
師匠は先生だったのか。なんとなく師匠っぽいな!
それにしても師匠がこんな酷い目に合うなんて。原因になったヤツが酷い目に合いますように。
「ところでAkiraくんは『風と森の詩』というマンガは知ってるかな?」
「いえ、知らないです」
「そうか、古いマンガだしね。でも名作なんだよ、適正があるかどうか分かる。具体的にはサナトリウムにて二人の美少年が……」
「そこまでニャ、このショタやろぅ!」
あ、Miikoさんこんばんはー。
「失礼なネカマだなキミは。ボクはただマンガの話を……」
「ネカマいうなこのBL! 受け攻め! そのマンガは18禁ニャー!」
なぜか凄い酷い目に合いそうな気がしてきた。
あと、翌日学校に行ったら、カッキーと田中が休んでいた。ちょっと心配。ちょっとだけ。




