秋の夜長と失恋の味
ご訪問ありがとうございます。
秋の夜長、冷めゆく珈琲とともに過ごす静かな時間をイメージして書いたショートストーリーです。
ほんの少し切ない余韻を感じていただければ幸いです。
秋の夜長に冷めきったブラックコーヒーを飲むとき、画面の向こうで更新されない君の SNS が、まさに失恋の味がした。
画面をすワイプする指先だけが虚しく動き、静寂の中に氷の溶ける音すらない。
二度と届かないと分かっているメッセージの下書きだけが、冷めた珈琲の底のように重く沈んでいた。
指先がなぞる液晶の光だけが
奪われた呼吸の痕跡を残している
送信されない文字列は
深夜の部屋に落ちた影の角を折り、
沈黙の温度を静かに下げていく
ぼくらはもう
既読のつかない夜の
余白のなかでしか出会えない。
夜がゆっくりと明けていく青い薄明のなかで、ぼくは冷えきったマグカップを静かに傾け、最後の一滴を喉に流し込んだ。
カーテンの隙間から差し込む光が部屋の影を溶かしていっても、画面の上の君は永遠に昨日のままで止まっている。
ぼくはそっとスマホを伏せ、一度も押せなかった「送信」の文字に、はじめて「さよなら」と打ち重ねた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
秋の夜長、冷めていく珈琲と明けていく夜の青い空気に、胸の中に残る切なさを重ねて書いてみました。
画面の向こうの止まった時間と、少しずつ動いていく自分の時間を感じていただけたら幸いです。
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