元号決定権
一般公募で元号の決定権を当ててしまった、下町の印刷工場主・高橋久三郎。彼が繰り出すトンデモ元号案と珍騒動を描いた、いたずら心あふれるショートストーリーです。
くだらないアイデアの数々とテンポの良い掛け合い、そして誰も予想できない怒涛の結末をどうぞお楽しみください。
天皇陛下が崩御なされた。まずは法令に則って元号を改元しなければならなかった。
一方政府は、国家の財政難を少しでも解決に向かわせなけれ、美ならないという理由のもと、元号の改称権を有料の抽選で一般国民に売り渡す方針を決定したのだった。
抽選券は1枚 10万円━━。売れ行きは好調で、兆円単位の増収は確定していた。
下町の小さな印刷工場を営む高橋久三郎(54)もまた、なけなしの退職金をはたいてこの一世一代のギャンブルに挑んだ一人であった。そしてあろうことか、当選の知らせを告げる金色の封筒が彼の元へ届いてしまったのである。
「おい久三郎、本当に当たる奴があるか! で、新元号は何にするつもりなんだ?」
幼なじみの善吉が息を切らせて工場に飛び込んできた。久三郎は腕組みをし、神妙な顔つきで唸る。
「善吉、俺は日本の経済を回す画期的な元号を思いついたんだ。ズバリ**『金払』**はどうだ?」
「やめろ! 履歴書に『金払元年卒』って書く学生の身にもなってみろ!」
「そうか……じゃあ、書類手続きを簡略化して国民の作業効率を上げる元号はどうだ? **『一』**だ。一元年、一二年……書くのがめちゃくちゃ楽だぞ」
「味気なさすぎるわ! 習字の授業が1秒で終わるだろ!」
久三郎の妄想は止まらない。次に彼が提示したのは**『令和二』**であった。これならカレンダー業者や印刷所が版を新調する必要がなく、エコかつ経済的だという主張だ。「iPhoneのモデルチェンジじゃないんだぞ」と善吉のツッコミが冴え渡る。
さらに久三郎は、全国の珍名さんを救済するための**『佐藤』、若者の活字離れを防ぐための絵文字元号『初』など、怒涛のトンデモ案を連発した。
発表前夜、内閣府の官僚が青ざめた顔で久三郎の元に駆け込んできた。
「高橋様、お願いです! 国の品格に関わりますので、どうかまともな元号にしてください! 一体何にするおつもりですか!?」
久三郎はニヤリと笑い、提出書類を差し出した。そこに書かれていたのは、彼が考え抜いた究極のアイディアであった。
翌日、テレビの生放送で官房長官が額に汗を浮かべながら、新しい元号の墨書を掲げた。
「新しい元号は、**『広告募集中』**であります」
官僚たちは頭を抱え、ネット上は大炎上した。しかし、新元号の「命名権」を買収しようと、世界中の巨大IT企業や石油王たちから更なる兆単位の出資案が政府へ殺到。期せずして日本の財政難は完全復活の兆しを見せ、久三郎は「経済の天才」として歴史に名を残すことになったのだった。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「もしも元号の命名権が売り出されたら……」というくだらない妄想から生まれたショートストーリーです。ツッコミ役の善吉と、久三郎の怒涛の暴走劇を楽しんでいただけたなら幸いです。
最後はまさかのネーミングライツという力技で解決(?)させましたが、もし皆様ならどんな珍元号を応募してみたいでしょうか?
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