008 キャメル・レイノルズとの出逢い
(カネなんてないのに、どうしろと)
この世界に転生してから、ルイは無一文だ。このままだと、腹いせに殺されてしまうかもしれない。
そんな危機的状況で、ある者が立ち上がった。
茶髪の低身長・目はくりくりしている。顔立ちは整っていて、威風堂々としていた。
「ホテルで強盗なんて、随分アマチュアね」
彼女はそう言って、強盗犯を煽る。
「あァ!?」
当然、強盗犯は怒る。されど、彼女は動じない。
「だって、そうじゃない。私なら、宝石店か銀行を襲うもの」
確かに、ホテルを襲うのは少し不思議だ。いくら富裕層向けらしきホテルとはいえ、みんながみんな手元にカネを持っているわけではない。
「そうか。ここで壁のシミになりてェわけだ」
「そうなるのは、貴方たちよ」
売り言葉に買い言葉。彼女も相応の自信をもって立ち上がったのだから、きっとなんとかしてくれるはずだ。
そう思っていると、
彼女は、ルイに目をやった。まさか、闘えと? 自分の魔術もろくに理解していないのに?
それでも、一瞬の判断が命取りになる中、ルイは立ち上がった。先ほどの魔術が使えるのなら、勝てると踏んだからだ。
「おーおー。ふたりがかりでおれらを倒すわけか?」
強盗たちは、ルイと彼女を嘲笑う。なにか秘策でもあるのか。
「分かってないわね」彼女は鼻を鳴らす。「その子の魔力は、貴方たち〝クーアノン〟よりよっぽど強いわ。クーアノンの連中のほとんどは、魔術を使えないんだから」
「あァ!? なら、ライフルの弾も避けられるのか!?」
強盗のひとりは激昂し、ライフルをルイに向けて発砲した。コンマ単位の銃弾が、ルイに向かっていく。
しかし、
「……?」
ルイは、銃弾を喰らわなかった。先ほどと同じだ。そしてやはり同様に、ひどい頭痛に苛まれる。
すると、
近くに設置されていた壺が、ライフルを向けた男の頭に直撃した。
「ぐぉ!?」
弾丸よりも速い速度で、壺は割れた。男は地べたに倒れ込み、ライフルを手放す。
その隙に、低身長の女はライフルを拾う。
「さて、形勢逆転ね」
女はそう笑う。
強盗犯はあと2人。ひとりがやられたことで、ヘルメットをつけた彼らは慌てていた。その狼狽えが、致命打になってしまう。
女は、ライフルを強盗犯たちの足元に放った。
「ぎゃぁッ!?」
「これでも私、大統領のボディガードを務めてるのよね」
足を撃たれ、その場にへたり込む犯人たちは、
「SAsPDだ!!」
駆けつけてきた警察に手錠をはめられた。
「クソッ……。なんであんなガキに、あんな力があるんだよ……」
恨み節を言いながら、男たちは抱えられてパトカーへと乗せられた。
場には、強盗に震えていた者たちとルイが残る。女は事情聴取を受けるために、警察車両に乗った。
そんな中、制圧されていた男がルイに声をかける。
「アンタ、すげェな……。とても10代の子どもとは思えない」
抑圧されていたラウンジの人々は、各々拍手した。ルイは照れながらも、
「いや、あの女のヒトがいなければ無理でしたよ」
と言う。
照れるルイに、先ほどまで伏せていた者が言った。
「あの女は、キャメル・レイノルズだ。大統領のボディガードを務めてる。なんですぐ鎮圧しなかったのか分からんが……多分君の実力を測りたかったんだろうな」
「私の?」
「そう。君からは、強い魔力を感じ取れる。だから期待してたんだろう」
「なるほど……」
3億メニー……300億円は伊達ではない。キャメルはそれを察知し、ルイに解放を任せたのであろう。
「ところで、アイツらはクーアノンってヤツらなんですか?」
「そうだな。魔術を使えず、反連邦テロリストとして事件を起こしまくってる」
「怖いですね」
「ヤツらの狙いは、魔術のない世界を作ること。けど現実問題、魔術がなければアンゲルスは回らない。だからテロリストなのさ」
魔術を使えない者は、この国では最下層、だとミンティが言っていた。だからこそ、魔術のない世界を目指しているのだろう。要するに、革命のようなものだ。




