005 破壊活動団体〝クーアノン〟
巨漢は、烈火のごとく怒り出した。
「転生者はアンゲルスを堕落させた罪人だ!」
「貴様のような者がいるから、我が国は衰退したのだ!」
触れたらなにかの病気になりそうなツバを顔にかけられ、ルイは怪訝な顔になる。
この国には少なからず転生者がいるというが、そんなのにいちいち怒っていたら、疲れてしまうだろうに。
そんなことを思っていると、ミンティが巨漢に人差し指を向けた。
すると、男は悲鳴を上げながらその場にへたり込んだ。
「うるせぇよ、腐れ〝クーアノン〟」
ミンティは冷めた口調で、悲鳴を張り上げる男を尻目に立ち去っていった。
ルイとリリスも、不思議に思いながら彼に続く。
ルイが尋ねる。
「何したんだ?」
「内蔵を焼き払った。おれは発火系統の魔術を使えるのさ」
雑な説明だが、現に男はこの世のものとは思えない悲鳴を上げているので、ウソとも思えない。
「うー、寒い……。アンゲルスは寒い国なのですね……」
リリスは相変わらずマイペースだった。
確かに、ルイはダウンジャケットにデニムと防寒してあるが、彼女は痴女にしか見えない短いスカートを履いている。
上着こそジャケットを着ているものの、あまり意味をなしていないようだった。
「このご時世、転生者の肩身は狭い」
「国から手厚い支援を得られるし、魔力・魔術ともに優れたやつが多いからな」
「〝持たざる者〟のクーアノンが、嫉妬するのもおかしくない」
「だからさっき、役所前でデモしていたのか」
「転生者へのサポートをやめろ、って意味で」
「貧すれば鈍するのさ」
「あいつらは魔術も使えないからな」
「このアンゲルスにおいて、最下層にいるやつらだ」
「俺も魔術は使えないぞ?」
「魔力はあるだろ?」
「良いか? 魔術を覚える手段はふたつある」
「ひとつは〝魔導書〟を手に入れること」
「そしてもうひとつは……危機的状況で覚醒することだよ」
表情があまり揺るがないミンティは、ニヤッと笑った。
彼は続ける。
「ま、アンゲルスは基本的に平和な国だから、危険な状況になるのはそうそうないけど──」
──そんなフラグとしか思えない言葉を言い放ったとき。
道路で、アサルトライフルを乱射する男がいた。
四方八方に銃弾を撒き散らし、おおよそ正気ではない。
ミンティは手を広げた。
「おいおい、やべェな」
「随分軽い感想だね」
「あいつ、おそらく〝スパイス〟って麻薬の所為で正気を失ってるみたいだな」
ルイとミンティは、物陰に隠れた。
「スパイスは、この世の薬物の中でも別格なんだよ」
「使ったら、強い酩酊感を味わえる」
「でも、使いすぎると被害妄想に苛まれる」
「それで銃を乱射してるんだろうな」
「なるほど。ミンティ、なんとかできない?」
「あいにくだけど、魔力が切れかけてる」
「レクス・マギアはかなり魔力を消耗しちまうからな」
そう言った頃、ミンティはしゃがんでいたルイを道路へ押し出した。
「ちょ、マジか」
ルイは、銃乱射が行われている現場に、ひとり立つ羽目になった。
もはや言葉にもなっていない雄叫びを張り上げ、男はルイを眼中に捉える。
銃が向けられ、第二の人生が始まったばかりなのに、死の危険がやってきた。
そして──
銃弾が乱打された。
「……?」
しかし、弾丸を喰らったはずのルイは、五体満足だった。
それどころか、痛みを一切感じない。
意識がしっかりしているから、死んでいるわけではなさそうだが……
一体何が?
「あ、頭が……ッ」
そんな最中、ルイの脳が割れるような感覚が起こった。
脳みそが二分割されるような、そういう感覚だった。
すると──
ルイは、さながら超能力のように、近くにあった銃痕だらけの車を触れることなく乱射犯にぶつけた。
鈍い音が響き、男は車の下敷きになった。
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