004 300億円の獣娘・ルイ
「転生者申請ですね。3階までどうぞ」
こなれている態度を見る限り、この国では〝転生者〟は特段珍しいものではない。
ミンティの言っていたことの裏付けができた。
ルイは3階まで向かう。寂れた雰囲気の場所だった。
珍しいものではないにしろ、そこまで数が多いわけでもないのだろう。
ひとまず、受付に尋ねる。
「転生者なんですが」
「はい、ここに前世での名前と国を記入してください」
愛想のない受付は、ルイに紙とペンを渡してきた。
埋める欄は、前世名と国名、アンゲルスでどんなことをしたいか、といったシンプルなものだ。
(立山ルイ。日本国……やりたいこと、ねェ)
別に何かをしたいわけではない。
見た目は13歳くらいの獣娘だが、今更学校に入りたいとも思えない。
仕方ないので、『今のところ無し』とだけ記入する。
その紙を受付に渡すと、
「では、精神鑑定を行います」
と、やはり愛想なく言った。
「精神鑑定?」
「転生者は、ほとんどすべての場合で強力な力を持っています。それらを正しいことに使うか、あるいは間違ったことに使うかを判定するのですよ」
「なるほど」
そういえば、リリスという天使が『貴方には膨大な魔力を入れました』とか言っていたので、
もしもルイが悪人だったらアンゲルスとしても困るのだろう。
*
精神鑑定は、形式的としか思えないくらいすぐ終わった。
結果は異常なし。
精神内科医から、次は魔力の測定を行うと言われたので、
ルイは3階の奥深くへと進んだ。
「ここで、魔力を測定します」
「はい」
静かな部屋には、カラスみたいなロボットが置かれている。
それに目をあわせるよう指示されたので、ルイはじっとカラスの目を見た。
結果、
「……ほう」
職員は目をやや見開いた。
「魔力だけなら、現時点で〝評定金額〟3億メニーですな」
「評定金額?」
「アンゲルスが市民全員に発行している、その者の価値ですよ。貴方のいた日本とメニーのレートは、およそ1メニー=100円です。もちろん、魔力や魔術の腕前がすべてとも限りませんが」
「じゃあ、300億円の価値があると見込まれているわけですね」
「そうです。では、これにて転生者認定を行います。6ヶ月の間は衣食住を保証するので、その間にやりたいことを見つけるように」
猶予は半年間らしい。
ルイは世知辛い、と思いつつも、
「分かりました」
と返事するのだった。
*
役所の前では、ミンティとリリスが待っていた。
アンゲルスは寒い国のようで、ミンティはチェスターコートを羽織っている。
対してリリスは、寒さを鑑みれば痴女としか思えない胸が強調されたシャツに膝が隠れるスカートという格好だ。
「待たせたね」
ミンティが言う。「待つのも一興だよ。んで? ホテルは指定された?」
「まあ」
「そりゃ良かった。転生者用の住民カードは?」
「これかな」
「あぁ、しっかり転生者用だな」
会話に全く参加してこないリリスは、寒さのあまりガタガタ震えていた。
なんとなくだが、ろくなことを言うようなやつには見えないので、こちらのほうがやりやすい。
「さて、やることいっぱいだな。ルイ」
「他にすることあるの?」
「まず、スマホを契約しなきゃならない。21世紀で、スマホもないんじゃ話にならない」
「なるほど。でも、一文無しだぞ」
「評定金額、出ているだろ? それを担保にスマホくらい契約できる」
「そういう使い方もできるんだ」
そう話し込んでいると、
「貴様ァ! 転生者だな!?」
いきなり巨漢に絡まれた。
ルイの身長が縮んでいるのもあって、見上げないと顔すら見えない。
一瞬おやじ狩りだと思ったが、今のルイは銀髪の獣娘。
余計に手出しされるとは思ってもなかった。
しかし落ち着いた声色で、ルイは返す。
「そうですが、何か問題でも?」




