022 襲撃者
こうして、ルイとコートはMIH学園へ進むことになった。
『時期的に、もう入学締め切りになっちゃうから、ひとつだけ決めて』
「なんですか?」
『ピースランド分校か、本校へ通うか。ピースランドのほうが入りやすいけれど、本校のほうが設備等が充実してるわ。まぁ途中で届けを出せば、異動できるけれどね』
「なら、とりあえず本校にしておきます。ノースAs市にあるんですよね?」
『そうね。サウスからはそれなりに離れてるから、引っ越したほうが良いかも』
「分かりました。ありがとうございます」
『あと、貴方は値札──評定金額が3億メニーついてるから試験無しだけれど、その、もうひとり入りたいって子がいるっていうじゃない。あしたまでに試験を受けないと、9月からの編入になっちゃうわよ』
「そうなんですか。んじゃ、急がせますね」
コートといっしょに入らないとチグハグになってしまうので、ここはあしたまでに、彼に入学試験を受けさせたほうが良いだろう。ルイは電話を切り、コートへその旨を伝える。
「あしたまでに入学試験受けないと、後期入学になるってさ。ひとまず、電車でも使ってMIH学園へ行くぞ」
コートは頷く。「分かりました。ルイさんと同じ学校にいけるの、すごい楽しみです」
「まだ合格と決まったわけじゃないからな?」
そんな会話を聞いていたミンティは、眉を潜めながらふたりへ言う。
「アンタら、電車でMIH学園なんて数時間かかるぞ。車のほうが早い」
「そうなの? でも、車ないでしょ」
「おれは、父さんのボディーガードのひとりと仲が良い。そのヒトの車で行こう」
「ボディーガードが大統領の息子のために車を出すのか」:
「おれだって一応公人扱いだからな。アンゲルス連邦の大統領はいわば、4年に1回〝国王〟を選出するもんだ。国王の息子は王太子だから、それくらい許されるんだよ」
「へェー。まぁ良いや。ミンティ、そのヒトを呼び出してくれ」
「もう呼んであるよ。ホテル前で待機してる」
「手際良いな」
そんなわけで、ルイとコート、ミンティはさも当然のように天使リリスを無視し、ホテルから出ていこうとした。
ところが、リリスは3人が外用の格好になっているのを見ていたらしく、
「私をおいていくつもりですか!?」
と文句をつけてくる。
ミンティは冷たい。「別にお留守番くらいできるだろ」
「天使は、転生した人間に憑いていなければならないのですよ!? それを破ったら罰則が──」
「そんなルール、律儀に守ってる天使いねェよ。天界の法は、案外適当だからな」
「で、でも──」
「行くぞ」
「あぁ」
「はい」
やっぱりリリスを無視し、一行はミンティが用意した車に乗る。
「ミンティ、人使いが荒いな」
「そりゃどうも。けど、父さんは死んでも死ななそうなヒトだから暇なんでしょ? リヒトさん」
「そりゃあ、大統領はおれより断然強ェからな。もうボディーガードいるのか? ってレベルに」
赤い髪をホスト風にしているアジア系の青年リヒトは、後部座席にルイとコートが座ったのを見て開口一番、
「おぉ、可愛い子だな。銀髪の獣娘ちゃん。同年代だったら好きになってたかも」
と言う。
「そ、そうですか」
男である中身を捨てきれていないため、なんとも不思議な気分になる。とはいえ、顔を赤らめてしまえば、もうおっさんとしての尊厳はないに等しい。
とか思っていると、
「──おい! 全員伏せろ!!」
リヒトの大声が車内に響いた。全員かがむと、その瞬間にはワンボックスカーの上部分が斬られていた。まるでオープンカーのようになってしまった車から、一行は降りる。
「クーアノンか? それとも……」
日本刀を持った老人が、こちらを睨んでいた。




