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元おじさん獣娘の異世界無双録-規格外の魔力で好き勝手生きる-  作者: 東山スバル
第一章

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19/24

019 〝生き続けてほしい〟

 それから一行は携帯ショップへと向かう。


「以上になります」


 スマホの契約は、意外とあっさり終わった。


 評定金額を担保にすれば良いらしく、転生者証明カードを見せると窓口の担当者も手慣れた様子ですぐ手続きを進めた。ルイはシンプルな黒いスマートフォンを手に入れ、コートにも安価なものをひとつ買い与えた。


「ありがとうございます」

「礼はいらない、と言っただろ」

「でも言いたいんです」


 ルイはため息をついた。


 街は今日も賑わっている。ウェストAs市の大通りは、前世の銀座や新宿に見劣りしない活気があった。が、そこかしこに防犯カメラと武装した警察官がいるのは、やはり物騒な国らしい。


「ミンティ、ひとつ聞いて良いか」


 ルイは並んで歩きながら尋ねた。


「なんだ」

「MIH学園は、入学するのに試験があるのか?」


 ミンティはちらりとルイを見た。


「ある。ただし、魔術師としての実力試験だから、一般入試とはかなり違う。それに、一応叔母のキャメルが推薦を出すなら、試験免除になるケースもある」

「そうか」

「入ることにしたのか?」

「......検討中」

「珍しくはっきりしないな」

 ルイは正直に言った。「学校というものが、あまり好きではないんだよ。前世でもさんざん嫌な思いをした」


 ミンティは少し間を置いて、「そうか」と返した。


「おれも最初は嫌だったよ。MIHは学校というより、修羅場の詰め合わせだからな。一日に何度も、学内で血が流れる」

「それは穏やかじゃないな」

「けど、ひとつだけ言える」ミンティはタバコに火をつけ、紫煙を吐き出した。「あそこには、おれみたいなヤツが大勢いる。行き場のないヤツ、捨て鉢なヤツ、くたびれたヤツ。だから、変に馴染めないとも思わない」


 ルイはそれを聞いて、黙って前を向いた。


(くたびれたヤツ、か)


 34年間、ずっとくたびれていた。疲弊した身体で、気力のない顔で、タバコだけを友達に生きてきた。そのくたびれたおじさんが、今は銀髪の獣娘になっている。

 不思議な話だ。


「考えてみる」

「そうしろ。期限は、まぁキャメルが決める」


 ミンティはそれだけ言って、歩みを速めた。


 そのとき、ルイのスマホが鳴った。ルーシからだった。


『よう。スマホ、ちゃんと手に入れたんだな』

「さっき契約した。なんだ?」

『急ぎでもないんだがな。昨夜の仕事のこと、警察に掴まれた可能性がある。一応、気をつけておけ』

「SAsPD、買収されてるんじゃないのか?」

『全部が全部そうじゃない。何割かは、まともな警官だよ』

「なるほど」

『ただ、クーアノンの犯罪自体は周知だから、正当防衛として処理される可能性も高い。まぁ、念のため、な』

「分かった」


 電話を切ると、コートが隣から覗き込んできた。


「ルーシさんですか?」

「そうだ。知ってるのか?」

「名前だけ。この街では有名です。大統領のフィクサー的存在で、しかも転生者。怖いヒトだと思っていましたが」

「怖いっちゃ怖いけど、付き合いやすいヤツだよ」


 コートは小さく「そうですか」と言って、また前を向いた。


 その横顔を、ルイはちらりと見た。


 感情が分からなかった。自分のことを好きだと言うコートに対して、どう返せば良いのか。前世でも、人間関係は不器用なほうだった。


 ただ、ひとつだけ分かることがある。


(この子には、生き続けてほしい)


 それだけは、はっきりと思った。


 *


 昼過ぎ、ルイたちは適当な定食屋に入り、各々好きなものを頼んだ。ルイは白身魚のフライとライス、コートはシチュー、ミンティはパスタ、リリスはデザートのケーキだけ注文しようとして、ミンティに「ちゃんとした飯を頼め」と怒られてオムライスになった。


「なんで、きちんとした飯を頼まないといけないんですか」

「天使とはいえ、栄養は大事だろ」


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