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元おじさん獣娘の異世界無双録-規格外の魔力で好き勝手生きる-  作者: 東山スバル
第一章

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18/24

018 平和な一幕

『死にたい目』


 ルイは鼻の頭をかいた。図星だったからだ。

 コートはじっとルイを見つめていた。嘘をつく気配もないし、からかっている様子でもない。ただただ真剣に、銀髪の獣娘を見ている。


「......私は今、死にたくはないけどな」

「でも、前は死にたかったでしょ」

「まぁ、そうだな」


 ルイは適当にごまかす気が起きなかった。なぜなら、コートの目が、かつての自分に似ていたからだ。覇気がなく、ただ底だけが深くて、なにを見てもなにも映らない目。


「オマエは、死にたかったのか?」

「そうです。いっそ値札をつけて売られていく方が、ずっとマシだと思ってた」


 とんでもない言葉を、少年は平然と言った。


「なんで?」

「売られた先でも、僕はどうせ〝使い捨て〟だから。だったら値段がついているほうが、まだ価値があるじゃないですか」


 ルイは返答に詰まった。


(なるほど。価値がない、か)


 34歳だったルイが考えていたことと、本質的には同じだった。代わりはいくらでもいる。自分の死に誰も気づかない。だったら、いっそ。


「なんで、そんなふうになった?」


「捨てられたからです」コートは膝を抱える。「親に。理由なんて知りません。生まれたときから、施設にいた。施設の職員は優しかったけど、ある日施設ごとなくなりました。それからはずっと、この街でひとりで生きてきた」

「年齢は?」

「14歳です」


 14年間、ほとんどひとりで生きてきたことになる。ルイは天井を仰いだ。


「そうか。なら、まぁ......しばらく一緒にいてやる」

「え?」

「頼る人間がいないのは知ってるし、魔術も使えるようだしな。ちょうど人手が欲しかった」


 嘘だった。

 本当は、コートの目が気になったからだ。放っておけなかった。

 コートは目を丸くして、それからふにゃっと眉尻を下げた。


「......ありがとうございます」

「礼はいらない。腹減ったんだろ? ルームサービスを頼んでやるから」

「あの、ルイさん」

「なんだ」

「好きって言ったの、まだ答えてもらってないです」

「......オマエ、けっこう鬱陶しいな」

「よく言われます」


 ルイは軽く頭を抱えた。


 *


 翌朝10時。約束通り、ミンティがホテル前に現れた。


「よう。スマホ、契約しに行くぞ──」


 ミンティは言いかけて、ルイの隣に立つコートを見て眉をひそめた。


「そのガキは誰だ?」

「コートだ。しばらく一緒にいる」

「拾ったのか」

「まぁ、そんなところ」


 コートはミンティを見て、小さく頭を下げた。ミンティはしばらく彼を観察してから、「ふぅん」と鼻を鳴らした。


「魔術、使えるのか?」

「音を破裂させる術式なら」

「〝音爆〟か。なかなかだな」


 ミンティは興味深そうに言った。コートは表情を変えなかったが、耳が少しだけ赤くなっていた。


「ルイ、コイツも連れていくのか?」

「あぁ」

「なら仕方ない。行くぞ」


 ミンティは歩き出した。ルイとコートはそれに続く。


 後ろから、ドタドタと足音が追いかけてきた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! なんで誰も起こしてくれないんですか!?」


 リリスだった。寝癖のついた髪のまま、翼を広げてルイたちに追いつこうとしている。ミンティはその姿を見て、「相変わらず間抜けな天使だな」と呟いた。


「うるさいですよ、ミンティさん!」

「おれはただ事実を言っただけだが」

「......、」


 リリスは口をへの字に曲げて黙った。コートは、そのやりとりを不思議そうに眺めていた。


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