016 人身売買解放事件
電話は切られた。ルイは天井を見上げ、ボーッと考える。
(死んだところで、誰も悲しまないヤツら、か……)
児童売買をするようなヤツらだ。確かに、大した値打ちがあるヤツらには思えない。人殺しが犯罪だってことくらい分かっているが、殺されて当然の人間がいるのも事実。そんなヤツらを消したところで、痛む良心なんてものは端からない。
ただ、こうも思う。
「それって、おれのことでもあるんだよな」
34歳で死んだとき、ルイには友だちがいなかった。当然、恋人・妻も。死んだところで、あしたには忘れ去られていたであろう。価値のない命が、価値のない命を壊す。変な話だ。
そう物思いしていると、
ホテル・ルームの呼び出し音が鳴った。もう来たらしい。爆睡するリリスを尻目に、ルイは仕事へと向かっていく。
「よう」
銀髪碧眼の少女・ルーシは、口笛を吹きながらルイにスマホと拳銃を渡す。
「撃ち方、分からないぞ」
「大丈夫。5歳児でも扱えるようになっているから」
なにがどう大丈夫なのか問いただしたくなるが、聞いたところで良い答えが返ってくるとも思えない。
ずっしりと重たい黒い拳銃をパーカーのポケットにしまい、スマホはデニムの尻ポケットへ入れる。これで、準備万端だ。
「んじゃ、行って来い。位置情報はスマホに載せてあるからさ」
ルイはスマホを見る。距離は500メートルくらい先の、スラム街のようだった。
「行ってくるよ」
ルイは、現場へと向かい始めた。
その姿を見たルーシは、
「並みの無法者より、よほど肝が座っているようだな」
と太鼓判を押すのだった。
夜のスラム街は、いかにもなアウトローで溢れている。見られても面倒なので、ルイは物陰に隠れつつ目的地に一歩ずつ近づいていく。
(ここか)
小汚いサーカス場みたいな場所で、足にオモリをつけられた子どもたちがオークションのごとく売られている。ルイは拳銃を取り出し、ハンドガンに書いてある操作方法通りに空へ向かって発砲した。
乾いた破裂音に、アウトローたちと子どもたちは一瞬目をこちらへ取られる。オークションに参加していた客は、一目散にその場から逃げていった。
その隙を見計らって、ルイはサーカス場まで一瞬で駆けていく。猫との獣娘らしく、俊敏な動きで。
「な、なにが……ッ」
ルイは、自身の魔術〝ヒト・モノを問わず操作できる〟力で、まず悪党たちを地面に押し付ける。もしかしたら有効射程範囲があるかもしれないので、わざわざ近づいたわけだ。
「ぐぉ!!」
そして、同時に押さえつけられるのは3人までのようで、残った敵5人が一斉にルイへ拳銃やらライフルを向けてきた。
「……あァ?」
しかし、ルイは全く動じない。その銀髪獣娘は、5歳児でも扱える拳銃で一番近くにいた敵の足を撃ち抜く。そのままルイは、遮蔽物に身を隠した。それと同時に、直ぐ側にアサルトライフルが落ちているのを視認する。ルイはそれを拾い、遮蔽から身を出すと、乱射し始めた。
「このガキャ──ぐはァ!!」
「ぐぉお!?」
「ぎゃぁあ!?」
銃の解説動画を見ておいて正解だった。ルイは、まるでこれを使い慣れているかのように、ライフルで銃弾をお見舞いする。
あらかた片付け終えた後、ルイは重力をかけられて動けない敵の足を撃ち抜く。安全が確保された後、ルイは痩せっぽちで肌色の悪い子どもたちのオモリを外すべく、鍵を探す。
「あ、あの……お姉さんは、一体なにを」
「暇潰しだよ」
ルイは、しらみつぶしに死体から鍵を探す。
「お、あった」
そして鍵を見つけ、それで子どもにつけられた枷を外した。




