015 初シャワー
原始的な力? 一体どんな力だろうか。更に検索してみる。
『ビースト・マギア 発動すると』
『獣人がビースト・マギアを発現すると、猫との獣人であればライオンのような姿に、犬であればオオカミ、キツネであれば九尾の狐へと変化します』
「へェ。つまりおれは、ライオンになると」
なかなか格好良い姿になれそうだ。ただ、発現するには才能か努力が必要。それに、今すぐ発現しなくてはならないわけではない。
「まぁ良いや。寝るには早すぎるけど、きょうは色々ありすぎた」
時刻は21時10分。普段なら眠らない時間だが、この世界に来てから様々な問題に直面し、それを解決してきたので、もうおネムだった。ルイはあられもない姿で眠り、大きないびきを出すリリスに邪魔されないように、上の階のベッドに身体を入れるのだった。
*
「……早寝早起きは良いことなのか?」
ルイは開口一番、そう言った。まだ4時ぴったりだ。太陽光も出ておらず、空は真っ暗。
眠剤無しで7時間眠れたので、まぁ良しとしよう。そのままルイは、洗面所に向かって歯磨きする。きのうするのを忘れていたからだ。シャコシャコ、と葉を磨き、非常に美しい女子の獣娘の顔をうんざりするくらい見る。
「髪の毛、切りたいな」
女性としてはそこまで長いわけではないが、男性だった頃を思えば長髪も良いところだ。しかし一文無しなので、ひとまず散髪は保留しておこう。
そして、きのう入っていなかったバスルームへと向かう。ここで始めて、ルイはTSした自身の裸体と対面する。なんとも不思議な気分になるが、もう〝勃つ〟ものもないため、気にせずパーカーとデニム、女性用の下着を脱ぐ。
「うーむ。きれいなピンク色だ」
なにがとは言わないが、色素の抜けたきれいなピンク色だった。彼女やセフレ、風俗嬢がこれだったら、大当たりと言って良いだろう。小ぶりではあるが、あまり大きいと動きづらそうなので、これくらいで良いように思える。
「さて……」
ルイはシャワーを浴びる。身体を洗う要領は男性だったときと変わりないが、問題は髪の毛である。なまじ長いので、しっかり洗うのに苦労する。しかもこれから乾かさなくてはならない……と思えば、女って面倒臭いと感じてしまう。ただ、シャンプーとトリートメント、ボディーソープはとても良い匂いだと感じた。備え付けのそれらが良いものなのか、獣人になったから嗅覚が良くなったのか。
シャワーを終え、ルイは髪の毛をドライヤーで乾かす。どうせならサラサラにしたいので、丁寧に乾かしていく。
「というか、ネコ耳だけじゃなくて尻尾もあるんだよな。ここも乾かさなきゃ」
尻尾にも毛は生えているので、ルイはドライヤーを臀部に向けるという奇妙な経験をした。
「さて、朝飯が出てくる時間でもないな。リリスは寝ているし。うーむ」
社畜から解放されて獣娘になったのだから、それらしいことをしてみたいものだ。ルイはソファーにもたれ、これからやりたいことを考える。
「そうだ、ルーシに電話してみよう」
あの少女は、直感だがこの時間でも起きている気がする。
ホテル備え付けの電話機で、ルイはルーシに電話をかける。
『どうした? 早起きして』
やはり起きていたらしい。
「いや、暇なんだよ。お金はないし、空は真っ暗。やることがなにひとつない」
『なら、仕事を紹介してやろうか?』
「なんの仕事?」
『今から1時間後に、児童売買が行われる。それを襲って、子どもたちを解放してほしい。ただ、子どもたちを連れて来る必要はない』
「いや、お、私はカタギなんだけど」
『ヒトを殺して平然としているオマエに、カタギは似合わねェよ。襲うヤツらは、どうせ死んだところで誰も悲しまねェヤツらだ。それに、なにも殺せなんて一言も言っていないからな』
「あぁ、そう。でも、私はスマホを持っていないよ?」
『しゃーない。今からホテル前へ向かう。位置情報の入ったスマホ、渡すよ』




