012 死の商人国家・アンゲルス
「見ていたのは事実だけど、10代前半の子がタバコ吸っていたら普通見るでしょ」
銀髪の少女は、ニヤッと口角を上げる。
「知らないのか。今はエイジレスという言葉があるんだ。私の自認は20歳なのさ」
「実際の年齢は?」
「12歳だよ」
「なら、駄目じゃん」
「説教ならお断りだぞ。誰かのお説教を聞く耳は持っていないので」
「そう。ところでさ、タバコ一本くれない?」淡白な態度だ。
「良いぞ」銀髪少女はルイにタバコを差し出す。「それと、これは友だちに」しかも3本も渡してきた。
「ありがとう。ついでにライターも貸してほしいな」
「あぁ」
銀髪の少女は、手をパッチンと鳴らして火を起こした。ルイと彼女の間が近づく。
(すげェ香水の匂いがするな。タバコの匂い消しか)
獣娘になったからか、香水がより強く感じるようになってしまった。大して香水をつけていないはずだが、思わず鼻をつまみたくなるような匂いだ。
「どうした? 顰め面して」
「いや、香水の匂いが強くてさ」
「恋人がタバコの匂いを嫌うからな。香水は必須品だ」
そうしてタバコにありつけると、
「なぁ。オマエどう見ても獣人だよな」
「そうだけど」
「香水云々言っていたが、タバコの匂いのほうがキツイんじゃないか?」
「ずっと喫煙者だからね。多少臭くても、ニコチンの快感には敵わない」
「へェ。ミンティみてェだな」
「ミンティなら、知っているよ。茶髪の猫との獣人でしょ」
「おぉ、やはり世界は狭いんだな」銀髪少女は苦笑いを浮かべる。「アイツとは父と母が違う兄妹でさ。父は現大統領で、母は着払いで大統領閣下にミンティを送ったらしい」
「父母が違うのなら、それはもう兄妹とは言えないんじゃない?」
「同じ父を持つんだから、兄妹だろ。アイツ、元気だったか?」
「出会ってから1日も経っていないから、平時のミンティは分からない」
銀髪少女は目を細める。「オマエ、転生者?」
「そうだけど」
「お付きの天使様は?」
「今爆睡している」
「なるほど。私と同じく、ポンコツらしい」
「え、君も転生者なの?」
「あぁ。25歳のとき、くだらねェ仕事で死んじまった。ここへ来て、もう2年くらい経つのかね」
「へェ。ちなみに、名前は?」
「ルーシ。ルーシ・〝コバ〟・レイノルズだ」
ルーシはタバコを携帯灰皿に捨て、ルイが吸い終えるのを待っているようだった。
「どうせお付きの天使様はろくな説明もせず、アンゲルスへオマエを投げたんだろ? だから私が説明してやるよ。暇だしな」
吸い終えるのを待っていたわけではなかったらしい。ルーシは、2本目のタバコに火をつけた。先ほどのマジックみたいな発火で。
「アンゲルス連邦共和国。GDPが世界第7位の、イギリスとフランス、スペインの間に浮かぶ島国だ。領土は……リッスンブールって知っているか?」
「インターネット・ミームで生まれた、アメリカ人を小馬鹿にするための架空国家でしょ?」
「博識だな。んで、アンゲルス本島はリッスンブールとほぼ同じ領土を持っている。それに加え、ピースランドという、前世でいうところのグリーンランド的な島も保有している。グリーンランドと違って、自然豊かで大量の鉱物資源が取れるがな」
「アメリカが欲しがりそうだね」
「アンゲルスはNATOにこそ加入していないが、イギリス・アメリカと同盟関係だ。それに、アメリカが手出しできないほどの軍事力を持っている。宇宙空間からピンポイントで、ホワイトハウスを爆撃できるからな」
手を開く。「怖いね」
「そして主要産業は、半導体製造とIT、銃火器製造とかだな。巷じゃ、死の商人なんて言われていたりする。世界中の戦争には必ず、アンゲルスの武器が絡んでくるからな」




