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映画ならハッピーエンドだったのに。〜少女が砕けた理由を俺はまだ認めない〜  作者: oo78


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第3話・いつもの目覚め

《ピピピピピピピピ……》


静寂を突き破り、甲高い電子音が鳴り響く。

規則的に短く繰り返されるその音で、何かに急かされるようにリアムは目を覚ました。


ひどく不安に駆られた目覚めだった。

一瞬、自分が何処に居るのか分からなかった。


天井を見上げると、カーテン越しに差し込む朝の光で、少しずつ脳が覚醒してくる。


徐々にはっきりしてくる意識の中で、リアムの脳裏に昨夜の光景が蘇る。ありえない光景が――。


――夢に決まってる。昨日は疲れていたんだ……。


実際、昨日は疲れていた。

講義を受けた後にアルバイトをこなし、渋滞する道を車で走って、2時間近くかけて家に帰ってきた。


まともに休めているとは言い(がた)い。変な夢を見る理由はいくらでもあった。


ベッドから身体を起こし、カーテンを開ける。

窓の向こうに広がる朝の空は、何事もなかったかのように澄んでいた。


その下には、裏庭にある大きなオークの木が見えている。

家のシンボルであり、リアムが生まれるずっと前からそこにある大樹だ。


その根本に、それはあった。


地面が浅く抉れ、周囲の土が外に向かって大きく跳ねている。

そして近くには、ゴルフボール程の大きさの石が落ちていた。


「夢……じゃ、ないのか」


石を見つめながらリアムは独り呟く。


それは、少し黒っぽいだけの何処にでもあるような、ただの石に見える。……今は。


――昨日のあれは何だったんだ。





昨日の夜はやけに暗く静かだった。

雲が空を覆い、月も星も殆ど見えなかった。

そろそろベッドに入ろうかと、自室に向かおうとした時だった。


《ドシュッ!》


鼓膜を叩くような、重く鈍い衝撃音が響いた。

何かが地面に突き刺さった。そんな音だった。

音は裏庭にあるオークの方向から聞こえた。


気になったリアムは、玄関へと向かい、懐中電灯を手にして扉を開いた。

懐中電灯を点け、その光を頼りに家の裏手へと回る。


あまり手入れがされていない庭には、膝にかかる程の高さまで雑草が茂っていた。

その中を恐る恐る進み、音のしたほうへと向かう。


小さな石だった。ゴルフボール程の大きさ。

しかし、それは異常な光景だった。


見れば瞬時にわかる程、地面から離れてそれは静止していた。

揺れもせず、回転もせず、そこにただ、浮かんでいる。


さらに、その石は、鈍く発光しているように見えた。

まるで懐中電灯の光を吸収しているような、そんな感覚すら覚える、見た事のない光景だった。


リアムは呆然とした。


「……なんだよ、これ」


そう呟いた時、静止していると思った石が、僅かに動いている事に気づく。

徐々に浮かび上がっている。ゆっくりと。


そして、やがて一点で完全に止まった。


一歩、近づく。

手を伸ばせば、触れられる距離。

リアムは無意識に右手を動かした。


心臓が警鐘を鳴らし、伸ばした右手が震えているのが分かった。

それでもリアムは石に手を伸ばす。


指先が石に触れた瞬間――。


《バチッ!》


鋭い衝撃が全身に走った。

痛みではない。未知の感覚。


次の瞬間、頭の中で奇妙な音が響いた。


《ギュィィイーン》


思考そのものが引き延ばされるような感覚。時間が歪み、意識が薄くなる。


気がつくと、リアムは地面に倒れていた。

近くには、何の変哲もない黒っぽい石が転がっていた。


リアムは咄嗟に自分の右手を見た。

火傷も、傷も、何も無い。





「何だったんだ、あれは」


ふと意識を現実に戻し、リアムは呟いた。

改めて右手を確認して見るが、やはり異常は無い。


しかし、裏庭で倒れたのは事実だ。その痕跡が目の前に広がっている。


昨日のあれが本当だったとして、何か変わるだろうか。

リアムはすぐに否定した。


――誰も信じてはくれないだろう。


話しても、どうせ馬鹿にされるに決まっている。

身体に異常は見られないのだ。これ以上考えても仕方がない。


リアムは不安を頭の片隅に追いやり、大学に行く支度を始めた。


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