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ドラゴンと契約した男

作者: 裏伊助


山のふもとに、貧しい男がいた。

畑は枯れ、家族は飢え、明日を生きる望みもなかった。


ある日、男は山奥で傷ついたドラゴンを見つける。

巨体のうろこは焼けただれ、うめく声が山に響いていた。

男は恐れながらも、手持ちの薬草と水を与えた。


ドラゴンは目を細め、こう言った。

「礼をしよう。三つの願いを叶えてやる。ただし、契約が果たされれば、私の”対価”を受け取ってもらう」


男は考える暇もなく、叫んだ。

「金をくれ! 一生、家族を飢えさせたくない!」


その夜、家には金貨が山のように現れた。男は歓喜し、村で英雄となった。

だが、金を狙った盗賊が押し寄せ、家は焼かれ、家族は命からがら逃げる羽目になる。


男は震える手で、二つ目の願いを口にした。

「力をくれ! もう二度と奪われないように!」


翌朝、男は驚くほどの怪力を得た。盗賊たちを叩き伏せ、村を守った。

だが、その力は暴走し、誤って村人をも傷つけてしまう。

恐れた村は、男とその家族を追放した。


追われる身となった男は、最後の願いを叫んだ。

「王になりたい! 誰にも虐げられない、絶対の地位を!」


ドラゴンは静かにうなずいた。

数日後、隣国の王が急死し、男はなぜかその血縁とされ、王座についた。

だが、政治は失敗し、飢饉と反乱が国を包んだ。


燃えさかる城の中、王座に膝をついた男の前に、ドラゴンが現れた。


「契約は、これで完了だ」


男は叫んだ。

「こんなはずじゃなかった!」


ドラゴンは淡々と言った。

「私は、望みを叶えただけだ」


炎が男を包み、肉体は灰になった。

残ったのは、かすかに光るうろこ一枚。


ドラゴンはそれを、自らの胸に貼りつけた。

そこには、いくつものうろこが重なり合っている。かつての契約者たちの名残だ。


そして、ドラゴンはまた山へ戻る。

次なる願いを持つ者を、静かに待ちながら。


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― 新着の感想 ―
何処までも願いを叶えるに当たり器が小さすぎた奴だった 金を運用するのにも器量が必要だし治安の良し悪し次第では逆に命を奪われる要因にもなる 力そのものはもっと繊細な器量が必要でガハハwバンバン!と無思慮…
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