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お読みいただきありがとうございます。

評価やブックマークもとても嬉しいです☆




目の前には袖を捲り上げた自身の左腕が見える。

慌てて袖を元に戻し腕を下げ、カナリアに目を向けた。


「そちらは我々竜族には真贋が感じ取れますが、それ以外の種族には見た目の情報しか与えないものです。万が一にも偽造品を作らせるわけには参りません。どうぞ人目に晒すことの無きようご留意くださいませ」


先程とはうって変わって厳しい表情をしたカナリアが幼子に言い聞かせるようにディアの目を見て念を押す。


「わかったわ。ごめんなさい、カナリア」


その様子に引きずられて幼子が謝るときのように謝るディア。

知らなかったとはいえ、これを他人に見られることは慎まなければいけなかったようだ。

そもそも気になったからと言って淑女が袖を捲り上げるのは如何なものか。

それに思い至ったディアは、はたから見ても分かるほどしゅんとして視線を落としてしまった。


「…声を荒げまして申し訳ございません。いくら知らないことでもそれはお嬢様の身の安全に関わることにございます。ですので…」


不意に言葉を切ったカナリアはディアが視線をあげるのを待って、自信を持ってそれを告げる。


「よろしければ、掻い摘んでですがこの国での基礎教育を致しましょう。もちろんお嬢様は人間としての常識も教育も備え終わっていることでしょうし基礎からとなると退屈なこともあるでしょう」


カナリアの言葉にディアの顔色がバラ色に変わっていく。


「けれども今のように外で起きては繕い様のないことも、意図しない形に解釈されてしまうこともございます」


「是非!こんなに嬉しい申し出を受けられるとは思いませんでした!こちらからもお願い申し上げますわ、先生!!」


色々かなぐり捨てたり元に戻ったりしているディアが喰い気味に返答し、カナリアにぐいぐい迫る。

当のカナリアはその様子に面喰いながらも「わたくしが教えると決まったわけではありませんが」と綺麗に流し、先程からドアの外に待機していたデイジーたちを招き入れるために扉へ向かう。

暫く前にノックの音が聞こえていたのだ。


「それから。選定者様が竜族の従者に対して主であることを否定するということは、次の王の治世からの追放を意味します。ゆめゆめお忘れなきよう」


そう言い終わると待機していたデイジーたちを招き入れた。

ここへきて初めて、ディアは自分の問いにデイジーがあれだけ青い顔をして震えていた理由を知った。

そしてバラ色だった顔色がさっと白くなる。

知らないことがこんなに怖い事だと感じたのは本当にいつ以来だろうか。

ディアはもう知らないことで誰も傷つけぬよう真面目に学ぼうと心に決めた。


姿勢を正して顎を引き、両手を腹の前で軽く重ねる。

入ってきた人物を真正面から微笑んで迎えるとディアは素早く上体を倒した。


「デイジー先ほどはごめんなさい!何の言い訳にもならないことは判っているのだけれど、謝らせてちょうだい。私が不用意に発した言葉が追放を意味するなんて思いもしなかったの。あなたに不満があって辞めさせたいとか待遇に不満があるとかでは決してないの。怖い思いをさせてしまって本当にごめんなさい。以後こんなことが無いようにしっかり学びます」


そこまでを一息に言い切ってそろりと反応を窺うものの、物音どころか息遣いさえ聞こえない。

不思議に思ったディアは、謝罪している側が失礼かな、と思いつつも顔だけをあげてデイジーを見つめる。


「許してもらえる?」


その時一番早くフリーズ状態から復帰したのはデイジーの後ろの紳士だった。


「選定者様もこう仰せだ。それから君の返答を待っているようだよ」


その言葉にカナリアとデイジーが弾かれたように、ディアよりさらに深い礼を向ける。


「とんでもないことにございます。わたくしのような使用人に選定者様が頭を下げることなどございません。選定者様がこちらとは違う文化圏からいらしたことは判っておりましたのに、つい取り乱してしまい申し訳ございませんでした。わたくしは気にしておりませんのでどうかお顔をお上げくださいませ」


「この度の件はそういったご事情を言い含めておかなかったわたくしの責任にございます。選定者様が使用人に頭を下げるような事態となりましてお詫びのしようもございません。如何様なる処分でもお受けいたします」


その場にわずかな沈黙が落ちる。

そして三人が頭を下げあうというおかしな状況に、遂に紳士が噴出した。


「あっはははははは、何というかこれは…おおよそ貴族の屋敷でのやり取りとは思えない光景だな!」


目じりに溜まった涙をぬぐいながら紳士がディアに近づいてきた。




面白いと感じていただけましたら下のお星さまをポッチっとおくっていただけると嬉しいです。


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