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リードVSシロウ

家に戻ると、丁度夕飯を食べ始めたところのようだ。

「お帰りなさい。遅かったわね」

「ただいま、防具と剣と両方頼んできたんで時間もかかっちまった。酷い目にあったよ」

「どうしたの、まあ、座りなさいよ」

テーブルはかなり大きいので全員が一度に囲んで食べることができる。

端の方では、スーザンも居て、給仕をしてくれた。

今回も昼食と同じでうまい。

「ああ、うまいな。ふさいでいた気持ちが楽になるよ」

「リードがふさぐなんて珍しいです。どうしたですか」

「ああ、防具屋と武器屋と二人のドワーフと合ってきたんだが、ドワーフってのはあんなに偏屈なのか」

「それはひょっとしたらアウルヴァングルとグレンディルのことですか」

「ああ、そうだ。

スーザンさんは知っているんですか。そう言えば、エリザベスさんのことも知っているようでしたが」

「あの二人は昔から知っていますよ。叔父と甥なんですけどね。ドワーフの中でも頑固者・・・と言うか変わり者ではありますね。随分からかわれたんでしょう」

「そうですね。俺は元々ソロが長くて、そのころは人と話すのは苦手だったんです。

この仲間たちが出来て、やっと人並みに話せるようになったかと思ってたんですが、あの二人と話をすると、何を言っても怒られるみたいで」

「それは、きっと気に入られたんですよ。いい道具を心から求める人は、あの二人には好かれますから。それでからかわれたんでしょう」

俺はからかわれていたのか。安心していいのか、腹を立てればいいのか。

「でも、二人とも腕は確かですから、きっと満足する物ができるでしょう」

それだけが楽しみだ。

スーザンは食事の片づけをすると帰っていった。

食器洗いも、水魔法系の生活魔法であっという間に全員の食器を綺麗にしていった。


翌日、シロウが家に居たので、話しかけた。

「シロウ、もしよければ稽古をつけてもらえないか」

「稽古をするのはいいですが。私が稽古をつけるんですか。剣はリードの方が上でしょうし、なんの稽古をするんです」

「うーん。実は俺にもわからない。兎に角俺は強くなりたいんだが、多分運動能力でウーコンに追いつくのは無理だと思う。剣の技術だけならそれなりに自信はあるが、何かそれ以外のものでも力をつけたいんだ。シロウはなんと言うか、何か持っていると思うんだ」

「わかりました。私でお役に立てれば協力しましょう」

シロウは強く頷いた。掴みどころのない男だが、話は真剣に聞いてくれる。

俺達は外に出た。庭でもいいんだが、築山とかそれなりに整っているので、何かあって壊したくはない。それより、近くには空き地も多いので、それなりに広い所に移動した。

「私にも見せて頂戴」

見物客はイザベラだ。ウーコンとノラはデートに出かけている。

「さて、どうするか」

一応、互いに剣は持ってきている。

「まずは、素手でやりましょう。剣の技術を上げるわけではないですから」

「そうだな、それじゃあいくぞ」

声をかけてから、一気に間合いを詰めようとして、俺はギョッとした。

目が見えない。いや、真っ暗な闇の中に居るようだ。

これがシロウの幻術と言うやつか。

俺は動きを止め、両手で頭部を守るように構えながら、身体強化の魔法で全身を硬化した。これなら、剣で斬りつけられたとしても一撃は防げるだろう。

俺は意識を集中させ周りの気配を探った。周りが見えないだけなのか、それともどこか違う場所に移されたのか。しかし、あまりにも早い術だ。確か、魔道具のペンダントを下げていたから、強い魔力を発揮できるのだろうが、どこかに跳ばされたとは考えにくい。おそらく元の空き地で、周りが見えないだけなのだろう。

集中すると僅かに気配を感じた。正面、シロウが居たと思われる方向から、殺気のようなものを感じた。

俺は上に上げていた両手を前に揃えて頭部を守った。その直後、ガツンと強い衝撃を受けた。身体強化の術を掛けてあるから、その一撃では揺るがない。一撃を受けるのと同時に、右の蹴りを正面に放った。何かにかすったような感覚があった。右に躱されたと感じたので、右手をそちらに振る。またもや何かにかすったようだ。

俺は一連の動作の間に、魔力を体内で練りこみ、それを外に放った。ファイアーやウォーターの魔法ではなく、ただ、魔力を爆発させるように外に放った。

バンッと言う音が聞こえたと思った時には周りが明るかった。

正面より右手にシロウが居た。

両手を前に出すように構えている。

「このくらいでどうでしょう」

二人で同時に構えを解く。

「ああ、ありがとう。いい経験をしたよ」

「しかし、流石ですね。初見で幻術を破られるとは思いませんでした。魔力をぶつけたんですね」

「ああ、そうだ。しかし、肝を冷やしたよ。あれは、どうやったんだ。いや、説明はできないか」

「いえ、お二人になら話してもいいでしょう。実は初める前にこのペンダントに魔力を集めていたんです。それをリードの周りに纏わりつかせて光を奪いました。イザベラは見えたでしょう」

「ええ、見えたわ。あっという間に紫の霧みたいなものが、リードを包んだのよね」

「すると前にジャックやオークを止めた時とは違うんだな」

「違いますね。あの時は相手の体というか脳に働きかけて、動きを止めましたから。リードにあの手は効かないでしょう」

効かないといいな。

「しかし、リードがあれほど落ち着いた対処ができたことに感服しました。普通、人は視力を奪われると動揺するものです。その動揺に付け込むのが幻術なわけですが、あれほど落ち着かれては効果が無いのも同じです」

いやいや、シロウの褒め殺しには乗らないぞ。しかし、この恐ろしい術に対抗できたのは、いい経験だった。たしかにシロウが言うように動揺しないのも技術だな。


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