保管
俺達一行は錬金術の店に入った。
「ただいまあ。無事に戻ってきたぜえ」
ジミーが元気に飛び込んだ。
「ああ、おかえり。早かったね、一週間くらいかかるかと思ったよ」
エリザベスが優しく言った。ジミーのお母さんみたいだな。
「おかえり・・・」
アイシャも店に居た。口数は少ないが、ジミーのことを心配していたのはその表情からわかる。
「エリザベスさん。ジミーにも怪我をさせずに帰って来れましたが、少しご相談があります」
「ああ、いいよ。じゃあ今日は早仕舞いとするかね」
表に本日休業の札を出し、入口にはクマゴロウが門番のように陣取った。
「マカセロマカセロ」と言っている。これで安心だな。
「で、相談ってのはなんなの」
「はい、まずは帰還の報告を。
ジミーお前が報告するのがいいだろう」
「お、俺か。あ、無事に帰ってまいりました」
緊張したようで深々と頭を下げる。戦地帰りの兵隊のようだ。
「ジミーが言ったように全員無事で帰ってきました。それで成果なんですが、お宝もゲットしてきました」
「すごい」
アイシャが目を見開いた。信用していなかったのかな。
「お宝は一部だけをマジックバッグに入れて持ち帰りました。量もそれなりだし、価値も高いものが多いと思うので、保管をご相談したいんです」
「なるほどね。わかったよ、じゃあ、裏に来て」
俺達はぞろぞろと奥に進んだ。作業場の奥に厳重なドアが有り、エリザベスが取手に手を触れると光った。魔力を通したようだな。
「この鍵は私とアイシャの魔力じゃないと開かない。後で、シロウの魔力も登録するよ」
ガシャンという音をさせて扉が開いた。俺達はぞろぞろとついて行く。
中は5メートル四方くらい。家具もなく、だだっ広いだけの部屋の中央の床に扉のような物があった。
「ここが保管庫でね、この中なら大丈夫だよ」
エリザベスが手を翳すと扉の端が光り、横にスライドするように1メートル四方くらいの穴が口を開けた。
「これは・・・」
俺達は息を呑んだ。
俺は背筋が凍るように感じた。
俺がウーコンと出会うきっかけの転移陣。ダンジョンの地下深くに現れた転移陣のように、その穴は妖しく渾沌と光っていた。
「仕掛けはマジックバッグと同じだよ。よく異次元なんて言い方をする人もいるけど、中は広いよ」
「どこかに転移されてしまうようなことは」
「ないね。何か私の知らない魔術で、違う場所でも取り出せることがないとは言い切れないけど、今まで盗まれたことはないね」
「中にも入れるので、私が中で受け取りましょうか」
アイシャが申し出てくれた。
「その前に物を教えておくれ。できればここに出してみてもらいたいね」
俺達は嵩張らないものを部屋に出した。
書籍、図面、延べ棒、魔道具。
「これで全部かい」
「あとはゴーレムが大きいですね」
「じゃあ、アイシャ中に入っておくれ。適当に並べてくれればいいから」
「はい」
アイシャはなんの躊躇いも見せずに、足から渾沌の光に入っていった。
「延べ棒も全部いれていいの」
「あ、一本だけ残してください。換金したいと思うので」
「じゃあ、アイシャそっちに入れるよ」
「はあい」
エリザベスが投げ込む勢いで、どんどんお宝を入れていった。
「ゴーレムは見てみたいけど、まあ、後でいいや。シロウのバッグに入っているんでしょ、倉庫に入れて頂戴」
「はい」
シロウはマジックバッグを逆さにして、倉庫の上に翳した。
押すようにするとヌルリと言った感じで、ゴーレムがバッグから倉庫に移動した。
移動するときに黒光りする体がちらっと見えたが、この大きさで移動できるのが、今更ながら不思議だ。
キャッと言う声が地階から聞こえたような気がする。アイシャはゴーレムを持てたのかな。
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