依頼達成報告
俺達は依頼達成の報告のため冒険者ギルドに入っていった。
まだ午前中だが、朝一番の張り出された依頼の取り合いの時間も過ぎて、割と閑散としている。今日一つだけ空いた受付窓口にはサラとは別のソフィアという子が居た。確かこの子は俺が転移する少し前に入ったばかりの新人だったが、数ヶ月で落ち着いた様子になったようだ。
「おはようございます。ご依頼ですか」
「いや、依頼達成の報告だ。これとこれ」
俺は二枚の依頼書を出した。
「はい、了解しました。こちらはOKですね。謝礼を用意します」
「ああ、魔石の買取もしてくれるか」
「はい、承知しました」
俺は初日と2日目の魔石を全部カウンターに出した。最後のは面倒になったので採取しなかったが、それでも140個はあるだろう。
ソフィアは少し驚いた様子だったが、奥の職員に声をかけ、魔石の数や大きさのチェックに持って行ってもらった。
「魔石の鑑定は少々お待ちください。それともう一つの依頼ですが、こちらは別の者が聞き取りしますので、奥にお入りください」
俺達は横のスイングドアを押してカウンターの中に入り、奥の個室に案内された。個室に呼ばれるのは久しぶりだな。
対応した男の職員は30歳くらいでジェームスと名乗った。見覚えはあるが、名前は初めて知った。
「では、ハーラ草原のゴブリンの調査報告をお願いします。イハーラ村への出没頻度などから考えて、かなり群れが大きくなっている可能性を心配しているんですが」
「ああ、俺達は以前の状況は知らないが、今回確認できた集落の数は6ヶ所、これがそうだ」
俺は印をした地図を出した。
「こことここを探索したが、どちらも150匹ほどのゴブリンを確認した。ハーラ草原全体の数が増加していることが想像される。それでこっちは120匹ほど退治してきた。ほぼ殲滅だな。進化種は発見できなかった。で、こっちだが、ホブゴブリン3匹とゴブリンメイジも数体居た。そいつらも含め、20匹あまりを退治してきた。こっちは洞窟なので深入りはしていない。外に逃げた奴も居るので、少しすれば戻ってくるだろうが、進化種とメイジを退治してあるから、暫くは大人しいだろう。ほかの4ヶ所は詳細は不明だが似たようなもんだと思う。心配なら依頼を出して少し間引けばいいくらいだろう」
「・・・そうですか」
俺が話し終わるまでジェームスは黙って聞いていたが、引きつったような笑顔をしている。一つ目の集落を殲滅したことに驚いているみたいだ。
「まあ、依頼自体は調査なので、一つの集落でも潰していただけたのは大変ありがたいです。今後の対応は上と相談しますが。。。ここが殲滅ってのは間違いないですよね」
「ん、俺達が信用できないってことか」
「いえいえ、そうではありませんが、誰でも勘違いは有りますので、念のための確認です。やはり今後の対策には正確な情報が必要ですので」
「そうだな。さっき魔石の買取を頼んだから、その数を聞いてみてくれ。俺の説明と合っているはずだから」
「ああ、そうですね。了解しました。では、謝礼を用意しますので、ロビーでお待ちください」
魔石の鑑定もあるので、暫く待つことにした。ギルドのロビーには簡単な打ち合わせ用にテーブルと椅子が何組か用意されている。また、Bクラス以上のパーティーだと、有料の個室を使うことが多いようだ。
俺達は一つのテーブルに陣取ることにした。まだ、猿人には慣れていない冒険者が多いので、通る奴らは物珍しそうにこっちを見ている。