迷宮
全員で廊下に出た状態で、シロウは魔剣を頭上に掲げた。
そのまま何か呪文を唱えると、両方の魔剣が少しだが光りだした。
しかし、光ったと思えば消え、少しすると再び光を帯びる。
暫くはその繰り返しだ。シロウを見ると、額に汗が滲んでいた。
この男がこの世界に転移してきてから、初めて真剣な表情を見た気がする。
青と赤の魔剣は何度も明滅を繰り返していたが、やがて光らなくなった。
シロウが魔剣を鞘に戻した。
大きく息を吸った。
「この場所には相当な力が込められていますね」
「シロウでも魔法を使えないか」
「そうですね」
シロウは額の汗を拭いながら俺の方を向いた。
「リードは身体強化の魔法が使えましたよね。ちょっとやってみてもらえますか」
「ああ、わかった」
体に魔力を流すようにして身体強化を行うと、少し違和感はあるが、問題なくできた。
念のため眼にも魔力を流し込んだ。
「いつもよりやりにくさはあるが、身体強化は可能だな」
視力は魔法のお陰で強くなり、100メートル先の壁が良く見える。
「なるほど。どうも魔力を自分の内に封じ込められているような感じですね」
「大気中に存在する魔力を魔素って呼ぶんだけど、この場所に魔素は感じられないわね。前にリードから体内で魔力を練ることを教わったけど、それは大体できる感じね」
魔法学校に行っていただけあって、理解が早いな。
「体の外に出せないと、かなりの制限があるな。攻撃魔法とかはできないわけだな」
不安はあるが、ジミーの言うことが事実なら、この先モンスターは居ないのかもしれない。
仮に居たとしても、ウーコンの手に負えないような怪物が居ることはないだろう。
「じゃあ、慎重に進むとするか。ただし、なにかあった時には自分の足で逃げることを忘れるなよ。飛行術はできないし、シロウの転移術もできないからな。
そうだ、ウーコン。キントウンはどうだ」
ウーコンが少し掌を回すようにした。
「駄目だな。来ない」
俺達はウーコンを先頭に進むこととした。殿は俺が務めるが、索敵ができないのでやりにくい。一応視力は高めてあるが、ずっとぐるぐる周りを見ているわけにもいかない。
「ウーコン、すまないが位置を変えてくれないか。索敵の魔法ができないので、ちょっと殿は難しそうだ」
「ああ、いいぜ。俺なら気配は感じるかもしれないからな」
俺とシロウが並んで先頭を行き、ウーコンが殿、中はジミーの両脇にイザベラとノラが並んだ。
少し行くと十字路に差し掛かった。見た感じでは、この中央の廊下は20メートルごとに十字路がある様だ。右も左も20メートルほど行って曲がり角のようだ。
「取り合えず、右に行ってみようぜ」
迷路を進むのはいろんな方法が有るだろうが、一つの方法として右の壁に沿って行くってのがあるから、その手法を選ぶこととする。
20メートル先で左に折れているようだが、途中に左右とも扉が二か所ある。
「とりあえず、この扉を開けるぞ」
俺は、最初の右の扉に手を掛けた。丁度その向かいにも扉がある。
取手を引くと扉は音もなく開いた。
俺が中を伺ってから全員で入る。念のため、扉が閉まらないようにノラに押さえておいてもらう。
「ここは居室の様ね」
部屋の中は一つのテーブルとそれを囲む椅子が4脚。右の壁には二人掛けくらいのソファが置いてあった。
突き当りにも扉が一つあった。
「開けるわよ」
イザベラが開けると、そこは寝室のようで、ベッドが二つ並んでいた。それほど広くはない。
「古代人がここに暮らしていたってことのようだな」
「そうね。この部屋には見るようなものはないと思うけど」
「そうだな」
部屋の中でも魔法を試してみたが、やはり効かない。
テレフォンを取り出して操作してみたが、これも全く反応しない。まあ、魔力で動くので当たり前だが。
テレフォンが使えれば、手分けしたいとも思ったが、なにもわからない状態で分かれるのはリスクが高い。
俺達はその部屋を出て、片っ端から扉を開き、廊下を進んでいった。
それなりの数の居室と思われる部屋があり、倉庫と思える部屋も有ったが、中は空だった。
「ところでジミー、転移したこの場所はどこなんだ」
「はっきりとはわからないけど、僕は地下だと思う」
「なにか根拠はあるのか」
「はっきりとした物はないけど、文献の一つに『地龍に宮殿を守らせる』っていう意味の部分があるんだよね。それが宮殿が地下にあるってことかと思うんだけど」
なるほど。しかし、魔法を止められていると、調べる方法はないな。
最初の部屋から言うと右の奥に広間が有り、左の奥には下に向かう階段があった。広間は壁にはそれなりの装飾が施され、何か儀式でも行う場所かもしれないが、部屋は空で、具体的に何が行われる場所かは不明だ。
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